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宗介を応援したい話

全体公開 Free 1028文字
2026-01-08 07:47:16
Posted by @tirichann

 いつも応援してくれるのを有り難いと思っていた。中学の頃はあからさまな声が少し恥ずかしくもなったが、東京の高校に進学してからも大会のたびに新幹線に乗って応援してくれるのには驚いた。きっとこの少女は、俺が相当好きなのだ。そう思えば練習に力が入ったし、日常でも彼女に恥じないような生活をしようと思った。たとえば黄色信号では渡らないとか、お年寄りに親切にするとか。地元に戻ってきた今も彼女の応援は当然のように続いている。だがまさか、鮫柄の寮にまで来るとは思わないだろう。
「応援してくれるのはありがてえけどさ」
 部屋まで通すわけにはいかない。かといって共有スペースでは見物客の目が気になる。俺は彼女を部室へ通し、向き合っていた。ここまで近くで見るのは初めてのような気がする。彼女が結構可愛かったとか、よく見ると体にほくろがあるとかそういうことは頭の中から除外する。
「ここは男子校で、寮なんだ」
「わかってますよ?」
 当たり前のように返す彼女に、絶対にわかっていないとため息をつきたくなる。男子校の寮に女が一人で来るのは危険だ。俺がいなかったらどうなっていたかわからない。
「とにかく、ここには応援に来ちゃいけない」
 彼女に道理を理解させるのは難しそうだ。鮫柄が危険だと覚えて帰ってくれればそれでいい。俺のせいで彼女がなんらかの被害に遭ったとなれば、少なからず責任を感じる。
「じゃあ、外ならいいんですか?」
「え?」
「寮ならダメなんですよね? 山崎さんが寮から出て、そこで応援するのは?」
 プールではない路上での応援とは何だと思わなくもないが、一応筋は通っている。寮から出れば男達のむさ苦しい場ではないし、彼女も好きに逃げられるだろう。
「まあ、それはありだな……
 鮫柄に来ないのであれば何でもいい。そう考えて軽はずみな返事をした俺がバカだったのだ。
「じゃあ行きましょう」
 彼女に腕を引っ張られる。鮫柄の寮の外を目指しているのだと気付いても、現状についていけなかった。
「おい」
「私は応援しに来たんです。寮がダメなら、外で応援させてください」
 確かにせっかく来たのに悪い。そう思って素直に寮の外に連れ出された俺は、うまいことデートに繋げられていると気付かなかったのだ。
 こうして俺と彼女が出会う場所は広がり、頻度も増え、応援という名のデートをすることになった。気付いたら付き合っていた。一体どこからどこまでが計算だったのか、わからない。


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