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赤を混ぜる

全体公開 TF 20 2083文字
2026-01-08 21:30:14

おめめ交換スタメガ

赤を混ぜる

戦場から離れた基地の中。白い壁に囲まれたリペア室はやけに静かだ。ボトルを締め直す音すら響く中で、スタースクリームは淡々とメガトロンの負傷を見て直せる箇所を直していく。
中でも重傷なのは右腕。オプティマスとの戦闘で大破したその右腕は、パーツの換装を余儀なくされた。
割れた装甲の下、配線が溶けてひとつになってしまった右腕を切り離しながらスタースクリームはメガトロンの機体を見渡した。
真新しい装甲の中に混ざる、すっかり傷だらけになってしまった古びた装甲。取り替えていないパーツと新しいパーツの割合は既に後者の方が大きい。
換装の度にパーツを調整しアップグレードを重ね、彼の機体はより強くなる。

先日は右脚を入れ替えた。その前は左手。この右腕も何本目の交換になるだろうか。
次はどのパーツが必要になるか分からず、メガトロンのスペアパーツは常に全身の用意がされている。

わかっている。
所詮は外装。
彼のスパークは何も変わっていない。
しかしそれでも、あの日スタースクリームを、親衛隊を救ってくれた彼が居なくなってしまうようで......

「どうした」
「いいえ、何でも」

思考の海に沈むスタースクリームを赤いオプティックが引き戻す。
その赤を見て、そういえば彼の目はあの日の物と変わっていないことを思い出した。
いつか、それも取り換えられてしまうのだろうか。
壊れたそれは、無残にも棄てられてしまうのだろうか。
それは、何だかとても勿体ないように感じてしまったから。

「ねえメガトロン様。アンタのその目が壊れたら、俺にくださいませんか」

不意に口をついて出た嘆願は、どうせ断られるものかと思っていた。何を言っているのかと呆れられて終わるのだと。
それなのに──

「ああ、いいぞ」

そんな簡単に了承するなんて。

「────」

二の句が継げないスタースクリームに対して、彼はなんて事のないようにそのオプティックで見上げてくる。

「それで? 今度は何を作るつもりなんだ?」
「......へ?」

ああ、なんだ。どこか好奇心を覗かせたその目と問に、どうやら勘違いしているらしいと察して肩の力が抜けていく。

「あ〜......もう、ほんとアンタは......」
「なんだ?」

確かに、時折スタースクリームも趣味の研究の延長で兵器開発に関わることもあったが。まるで分かっていないメガトロンに久々に彼がまだ子供であったと思い出す。

「単純に、俺が欲しいと思ったんですよ。捨てるなんて勿体ない」

彼の頬に手を添えて。目元を指の先で撫でればパチリと瞬いたオプティックがスタースクリームを見つめてくる。
音を立てて回転したオプティック。深い赤に染まったそれが、可笑しそうに細められた。

「そうか。ならくれてやるから、その時はお前の目を寄越せよ」

スタースクリームの手に自らの手を重ね、甘えるように擦り寄る仕草は一体どこで覚えてきたのやら。微笑を浮かべる口元に艶が乗る。

「もちろん、喜んで」

誓いの証のように、その口元に自らのそれを寄せて口付けた。



伽藍堂の眼窩に指をかけられ、スタースクリームはその指先が奥まで入り込まないように手で塞ぐ。

「ちょっと。壊れたらどーすんですか」
「安心しろ。元から壊れてる」

パーツの嵌っていない目元がそんなに珍しいのか、スタースクリームの膝上に乗り上げ覗き込んでくるメガトロンに苦笑しかない。

オプティックを負傷したメガトロンの治療のため、いつかの約束通り、スタースクリームは自らの目を差し出した。摘出されたメガトロンの壊れた目はスタースクリームが手に入れた。

「仕方ないでしょ。アンタと違ってこっちはスペアパーツなんざ取り揃えて無いんですから」

一般兵用の量産型であればあるにはあるが。スタースクリームのアイセンサーは自らの最高速度でも視界を確保できるよう機体に合わせた特注品だ。一朝一夕で用意できるものじゃない。
とはいえそれでも間に合わせで埋めることもできたのだが......スタースクリームはそれを嫌がった。自らに空いた穴を見て、失くしたパーツが彼の穴を埋めているのだと認識したかったのだ。

が、それをするまでもなかったのかもしれない。
元々メガトロンのオプティックは特徴的な形をしている。スタースクリームのパーツでは再現できないものだ。
左右で形の違うオプティック。それに加え、何よりも──

赤みを増した、丸いオプティック。まるで二人の赤を混ぜたような深い赤。
スタースクリームの眼窩を埋めていた頃は勿論、メガトロンの残った元のオプティックよりもなお赤い。規格の違うパーツを嵌めたからだろうか。それともやはり、その目に宿ったスタースクリームの憎悪と嚇怒が、彼のそれと混ざり溶け合い一つになった証なのだろうか。

遠目からでは分からない。こうして近付き覗き込まなければ分からないが、そうすればはっきりと見て取れるほどの色の差。

──ああ、悪くない。


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