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服に罪はない

全体公開 へびかえるひつじ 1 2297文字
2026-01-13 10:49:05

バレンタイン投票用ssです。投票先は1~3位まで帰代変さんで! こちら3本目です。
貰ったふわもこパジャマで温まる🐸さんなssです。ドロマイNPCの匂わせあり。

服に罪はない

 自宅に届いた段ボール箱を前に、帰代は緊張の面持ちで佇んでいた。
 荷物自体は正規の手順で送られてきた物だ。じっくり調べたが、途中で開封された痕跡も無い。受け取り時の重さからも、危険物である可能性は低いだろう。しかも、送り主から事前にメッセージアプリで贈り物を手配したという内容も届いている。
 そこまでしてなお帰代が荷物を警戒する理由――それは、送り主が某国際指名手配犯だからだ。
 武器商人である送り主からの荷物が何か、内容まではメッセージに書かれていなかった。それもあって、帰代は警戒を解けずにいるのだ。
 とはいえ、このまま玄関で荷物と睨み合っているわけにもいかない。
……開けてみるしかないか」
 意を決してカッターを手に取り、段ボールの繋ぎ目を刃で慎重になぞる。
 そして、手袋をした手でそっと段ボールの蓋を開いた。中に見えるのは、ギフト用のパステルピンクのラッピング――色が付いていて中が透けないタイプのため、光沢のある赤いリボンを解いて取り出す必要がある。
 成人男性に贈るにしては可愛らしすぎるカラーリングに、悪趣味だと眉間に皺が寄った。とにかく中身を確認するべく、リボンを解いて慎重な手つきでビニールに包まれているそれを取り出す。

………………は?」

 現れた贈り物の正体に、帰代は思わず素っ頓狂な声を零した。
 見た目は危険物ではない。何か仕込まれているのかと、綺麗に畳まれたそれを透明なビニールから取り出して広げてみる。しかし、やはり何もない。出てきたのはタグだけだ。
 しばし矯めつ眇めつした帰代だったが、手にしたそれが見た目通りの代物だとわかると、腹の底から沸々と何かが込み上げてきた。
 その衝動に突き動かされ、手にした端末で送り主をコールする。そして、いつも通りの声音を聞いた瞬間、帰代は近所迷惑にならないギリギリの声量で怒鳴っていた。

「何考えてるんだ!?」

 上はモスグリーンと白のボーダー柄にブランドロゴがワンポイント、下はモスグリーン一色でこちらもブランドロコがささやかに刺繍されている。拳を握り震える手袋越しでもわかるふわふわもこもことした柔らかな布地のそれは、部屋着やパジャマと呼ばれる類の衣服でしかなかった。
 怒鳴り散らしながら送り主から聞き出した内容をまとめれば、今年の冬は冷え込むから、寒さが苦手な帰代のために温かい部屋着を贈った、ということらしい。
 余計なお世話な上に、成人男性向けのデザインとは思えない代物だ。抗議したのだが、正真正銘メンズ商品だし、部屋着なのだから誰かに見られるわけでもなしどんなデザインでも問題ないだろうと返された。
 その後も何かと文句を言ったのだが、結局のところ嫌なら着なければ良いだけの話ではと言われてしまい、通話は終わった。確かに、贈り物なので帰代の懐は全く痛んでいないし、不利益があるとすれば段ボールを解体して捨てる手間くらいのものだ。
 釈然としない思いを抱えつつも、帰代はその服を畳み直して箪笥に仕舞った。
 そして、夜。窓の外は深々と冷え込み、暖房の利いた室内との気温差で結露が硝子を曇らせる。
 カーテンを閉めてガラス越しに伝わる寒さを遮断した帰代は、ちらりと視線を衣装箪笥へ向けた。
 冬はトレーナーにスウェットといった格好で寝ている。ある程度厚手なので問題は無い。無いのだが、仕舞う前に触れた生地の触感が脳裏を掠める。
…………
 気に食わない相手からの贈り物だ。このまま箪笥の肥やしにしてしまえばいい――そう思いつつも、そわそわと落ち着かない気分になる。
 調べてみたが、ブランド品ではあるものの決して高級ではなく、かといって安物でもない。一度も袖を通さずゴミにしてしまうのは、流石に勿体ないだろう。
…………一度くらい、は」
 呟きながら箪笥から取り出した服から、タグを取り除く。そして、ふわふわもこもことしたその服を抱えて脱衣所へと向かった。


 湯上りに袖を通してみると、予想通りとても柔らかな肌触りに包まれた。生地は温かな空気をたっぷりと含んで保持し、締め付けないデザインは身体から無駄な力を抜いてくれる。
…………
 温かく肌触りも抜群の服は非常に着心地が良く、間違いなく当たりの部類だ。送り主の顔さえ思い出さなければ、だが。
 微妙な顔になりつつも寝室へ向かい、ベッドに潜り込む。手や足先が生地に触れると、その肌触りについ弄ってしまいはっと我に返った。
 しかし、この肌触りと温かさは一晩で終わらせるには惜しい。
……冬の間だけだ」
 誰かに見られなければ問題ないのだからと、帰代は自分に言い訳をする。その内容が気に食わない送り主に言われたことと被っているのには目を瞑っておいた。
 たとえ酷く気に食わない送り主であろうとも、それはブランドや製品を作る工場とは無関係である。当然、服自体に罪は無い。罪は無いのだから、生み出された目的を全うさせてやるべきだ。
 そんなことをつらつら考えながら、ふわふわもこもこのパジャマを着た帰代は夢の中へと誘われていくのであった。

(あとがき)
 バレンタイン投票用ssで、ぬくぬく🐸さん第3弾! ふわふわもこもこのパジャマを着て欲しいという願望を形にしました☺ 送り主が某NPCなのは趣味です!
 ブランドのイメージはジェラ○ケですが、デザインやカラーリングは妄想です。でも既存のデザインでも🐸さんならきっと似合うと思います💕 こっそり家で着てて、うっかり誰かに見られて欲しいw


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