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雪と赤

全体公開 TF 16 2223文字
2026-01-13 20:19:53

雪が嫌いなスタと雪が好きなメガ様。
スタメガに見えない?
書いてる奴がスタメガと言えばスタメガなんだよ。

雪と赤


──冬が嫌いだ。


エンジンまで凍り付きそうな、機熱を奪う寒さ。
視界を覆う一面の白。
流れたオイルに色を変えていく銀世界。

50サイクルの逃亡生活の中でも、この時期に死んだ同胞の数は桁が違う。
雨風を凌げる隠れ家も、寒さまでは凌げなかった。
当然寒冷地用の装備への換装もできず、装備の不調から撃ち落とされた仲間も多い。

吹雪の中で視界を奪われ、味方の悲鳴だけが木霊する。
色彩を失くした世界の中、雪に埋もれた残骸が脳裏にこびりついて離れない。

…………

冷え込んだ空気に余計なことを思い出してしまって目が覚める。
どうにも今夜は寝付けそうにないと諦めて身体を起こし、床に足をつけた途端に感じる冷たさに翼を震わせた。

気晴らしに部屋を出てあてもなく歩き回るが、基地の中がやけに静かだ。
この寒さに誰も彼もさっさと部屋に引きこもっているのだろう。
ふと窓の外へ視線をやって、合点する。
道理で寒いと思った。

一体いつから降っていたのか。
音もなく降りしきる雪は地表を覆い隠し、サイバトロンの色を奪っていた。

嫌な景色だと視線を逸らそうとした間際、白に紛れて見えた銀色に、まさかと思い目を凝らす。
白に埋もれた世界の中でも、見間違えるはずがない。

慌てて外に繋がる出口を目指して駆け出すが、途中で基地の設計を思い出し、外から回るより速いと窓を開け放つと外に飛び出した。

沈み込む足先と、途端に機熱を奪う雪の冷たさ。
吐いた息が白い。
吸い込む冷気にギアが軋む。
音も色も奪われた世界の中で、自身の排気音と雪を踏み固める音がやけに大きく聞こえてくる。
吹き荒ぶ風に身を竦めて、せめて防寒着を持ってくればよかったと後悔した。

すぐそこにいるはずなのに、やけに遠く感じる。
足元に纏わりつく雪を蹴り上げながら漸く彼の元に辿り着き、気付いているだろうに空を見上げたまま動かない彼に声を掛けた。

……何やってんですか、メガトロン様」
「雪が降っていた」
「あー……それで?」

まさか、それだけの理由なのだろうか。
それだけの理由で、こんな寒さの中、一人で外に出てきたのか。
彼はそれを肯定するように、降り積もる雪に手を伸ばす。

「初めて見た」
「えーと……?」
「雪も、雨も。俺は地上に出て初めて知った。季節という物の存在は知っていたが、こうまで変わることを知らなかった」
……まあ、地下で暮らしてりゃそうなるでしょうね」

そう言えば、彼に雪を見せたことはあったが、こうして降り積もったのは初めてだったか。
彼にはこの煩わしい雪も物珍しく見えるのだろう。

「お前達は雪が嫌いか?」
「そりゃあ……飛びにくいんでね。好きな奴はいないでしょうよ」
「そうか」

下手な言い訳に彼は小さく笑う。
気付いていたとは驚かされる。てっきり、彼はディセプティコンを数として認識しているものかと思っていたのだが。それで構わなかったのだし、そう在るべきとも思っていた。マトリクスを継承したプライムを敵とするならば、兵になど気を回す余裕など無いだろうに。

この季節を好きなシーカーズはいない。理由は皆似たようなものだろう。
50サイクルの逃亡生活は、彼らの誇りを踏みにじるのに充分すぎた。

「俺が地下でエネルゴンを掘っている間にも、お前達は地上にいたのだったな」
…………

スタースクリームの顔を見てメガトロンは可笑しそうに笑う。
そんなに変な顔をしていたのか、赤いオプティックが眇められ苦笑とも言えない笑みを浮かべていた。

「安心しろよ。お前達の50サイクルを、無駄にはしない。翼を捧げた者は皆俺のディセプティコンだ」

一際強く吹き抜けた風が雪を舞い上げる。
白に染まる視界の中、真っ直ぐにこちらを見据える赤は色褪せることなくスタースクリームを射抜いていた。

スパークが熱い。
歪む口元が抑えきれない。
見つめてくる赤を見返すことができずに視線が泳ぐ。
上がる機熱が雪で冷やされるが、今だけはそれがありがたい。

「──アンタは、何処で覚えてくるんです? そういうの」

漸く絞り出した声は柄にもなく震えていて、誤魔化せている気はまるでしない。

「お前が教えてくるのだろう」
「そうでしたっけ?」

雨も雪も教えた覚えはあるが。
50サイクルで失った仲間の数も、泥に塗れてしまった親衛隊の誇りも、教えた覚えは一度も無い。
それを指して彼はそれら全てを拾い上げてくれると言う。
彼の為にスパークを散らしたディセプティコンと同様に、彼らの主として背負ってくれると言う。
最早何の為に墜とされたかも分からぬ同胞の翼も、彼が『メガトロン』になるための物だったと肯定してくれる。

嬉しくないわけがないだろう。
漸く見つけた新たな主が、仇敵を討ち取ってくれたばかりか、屈辱ばかりであった50サイクルの歳月に意味を与えてくれた。
生意気なクソガキが、よくもここまで成長してくれたものだ。
かつてプライムに忠を捧げた親衛隊を、こうも魅了し虜にするのか。
全く、創造主だかなんだか知らないが、プライマスも見る目がないにも程がある。

吹雪の中でも一等目立つ銀色。
色彩を失くした世界の中でも、変わらず嚇怒と憎悪を燃やし続ける赤色。

冬は、彼の色を際立たせる。


──どうやら冬を好きになれそうだ。


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