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森を覆うもやが晴れてから二週間後、異時空界、森の広場でミュージックフェスタが開催されていた。
イベントステージの前には聴衆が溢れかえり、出演者達のパフォーマンスを今か今かと待っているようだった。
ー舞台裏ー

余音「改めまして、遠路はるばるご協力ありがとうございます」
拓谷「そんなだっせぇ礼なんていらねぇよ、そーゆーのなら他の出演者に言ってやって」
彼は音隠 拓谷。夢遊町在住、音楽家志望の青年である。余音は彼への活動支援として、有志応募枠での公演と、フィナーレの舞台でのベースギター担当という大役を任せていた。
余音「そうですか、ならば改めまして……」
余音「ここに集う同志の皆様、私の呼びかけに快く応えて下さり、本当にありがとうございます」
余音「本日は皆様の力で、最高のステージに致しましょう!!!」
全員「「「おー!」」」
開場から10分ほど経ち、ステージの中央には主催者・響余音の姿が。
待ちに待った音楽祭、しかしそれを一番心待ちにしていたのは主催者当人なのである。
余音「さて、みなさん準備はいいですか!」
主催者の掛け声に、出演者一同は舞台袖から、やる気に満ち溢れた声で応じた。
余音「それでは、これより異時空ミュージックフェスタ、開幕です!」
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《ステージスケジュール》
10:20〜 正直者楽団
11:10〜 平曲ー琵琶法師による出張公演ー
13:00〜 雨宮奏楽団
13:50〜 有志応募枠1:音楽家志望の学生バンド
14:30〜 有志応募枠2:学舎のピアニスト
15:10〜 フィナーレ:演奏者全員による楽曲披露
《露店・施設情報》
○食事処:出張屋台
オーソドックスなメニューから伝統的な東部の味まで幅広く提供している食事処。今回は雨宮奏楽団とコラボしたメニューも提供。収益の一部は東部での戦争における復興費用として寄附されるようだ。
○キジマルフードワゴン
新鮮な白身魚の揚げ物や採れたての木の実を使用したスイーツを取り扱っているようだ。今回は正直者楽団とのコラボスイーツも提供している。
○呉服屋迦楼・発田商社合同販売所
フェス限定Tシャツを始めとした会場限定グッズを取り扱っている。なぜか芳形法師のヘッドホンも取り扱っているらしい。需要あるのか?
○救護センター(シエラ界回復隊出張拠点)
怪我をしたり体調が悪くなったらここに行こう!
《諸注意》
・こちらは異・視菱光の後日談ですが、EXtraStageと時系列が同じです。(EXは14:00〜15:00辺り。)
・後日談は5曲ほどのミニアルバム+ちょっとしたお話といった形式となっております。出演者達の奏でる音楽と共に、異時空ミュージックフェスタの様子をお楽しみいただければ幸いです。
・楽曲動画はYoutubeの埋め込みなので、通信環境の良い場所で再生することをお勧めいたします。
次ページ:ステージの様子を覗く!
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1. あの空に駆け出して〜Start!
イベントステージのトップバッターを任されたのは、鏡世界の楽団だった。今や異時空界でも彼らの知名度はやや高いようで、音楽祭への参加を持ちかけた際もノリノリでOKしたようだ。
主催者が挨拶をしている間、舞台裏では彼らの話し声が響いていた。
「さーて、いよいよ本番だよ!わくわくしちゃう!」
自身の演奏の腕に絶対の自信を持つ鍵盤奏者が言えば、
「緊張しちゃうよ、心臓バクバクだよー!」
と、半ば興奮気味の管楽器奏者がかぶせる。
「大丈夫、いつも通り演奏するだけよ。」
弦楽器奏者がそう言うと、自らの持つ弦をアコースティックギターに変形させた。
「それ、いつ見ても慣れないよー」
「あらそう、あなたのラッパと同じよー?」
「二人とも、もうすぐ本番だってのに、呑気に話してるヒマあるのかなー?」
三人が話している所に足音が響き、彼らの団長が戻って来る。
「そろそろ舞台袖に行こうか、挨拶が終わればすぐ出番だぞ!」
「はーい」
そうして、四人は来るべき時を待つ。
主催者の簡単な挨拶が終わり、自分たちの音楽を広めるためなら手段を選ばぬ正直な四人が、大勢の聴衆の前に姿を現した。
メヘル「やっほー!鏡の世界からこんにちはー!」
デルセ「我々
正直者楽団、異時空界に堂々降臨だよっ!」
リンネ「こんなに大きなステージのトップバッターだなんて、感慨深いわぁ」
カシヨ「いちばん最初は、もちろんあの曲!
メヘル、デルセ、準備はいいか!?」
メヘル「勿論だよっ!コンディションは最高さ!」
デルセ「任せといてよリーダー、私が失敗するわけないじゃない!」
リンネ「こっちも、チューニングはバッチリよ」
カシヨ「それじゃあ元気にいくぞーっ!
『あの空に駆け出して〜Start!』!」
楽団のコンサートは、大盛況に終わった。
観客席を見れば、輪っか乗りの弟や鏡の世界の長が。見知った顔も沢山いるようだった。
彼らの活動の成果はここに実を結んだ。
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2.平曲ー琵琶法師の語り歌~festival edition
鏡世界の楽団がパフォーマンスを終え、少し休憩を挟み、次の出演者が舞台に上がる。
彼は芳形法師、異時空界の人里で有名な琵琶奏者である。生まれつき盲目の彼は、同じ寺に住む揄也に支えられながら階段を上り、舞台の上に座った。
聴衆の歓声を聞きながら、彼は琵琶の音を響かせ、語り始めた。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり
……
誰もが知る冒頭を語り終え、彼は自らの言葉で話し始めた。
芳形「今日は、私の演奏の席に寄り来てくださり、誠にありがとうございます」
芳形「生憎の知らせですがー、本来私と共に演奏をして頂く予定でありました横笛の奏者殿がー、先の戦争で重症を負い
……」
芳形「
……私としては、一刻も早くのご回復を願うばかりにございます」
芳形「さて横笛と言えばー、平家の物語にも横笛の登場する場面が存在致します。」
芳形「
……ご存知の方はもうお分かりですね?」
芳形「さて本日皆様にお届け致しますのは
……平敦盛、彼の最期にございます」
……彼が最後の一音を鳴らした時、どこからか笛の音が聴こえたような気がした。
それは平家の亡霊か、それとも来るはずだった横笛の奏者か。そんな事は誰も知らない。知る由もないのである。
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3. 雨降る宮殿の絢爛奏曲
太陽が丁度真上に登ったころ、会場付近の空にはうっすらと雲がかかり、太陽を隠してしまった。
しかし、舞台に上がる次の奏者達は、少しばかり楽しげであった。
二人は東部荒廃地域に鎮座する雨宮に属す琴師と簫吹き。かつては異時空界を巡る流浪の楽師であったためか、久々に彼らの演奏を聴ける、と聴衆から歓喜の声が上がっていた。
二人は今回のステージのために、各地で出会った演奏者達を連れてきていた。南部部族のパーカッショニストや、東部辺境の弦楽奏者、北部の鍵盤奏者など、各地の音楽を各地の人々と共に演奏し、会場を盛り上げることにしたのだという。本来ならば雨宮に属す横笛吹き・畢境も参加する予定だったが、東部での戦争により修復が必要となったため、参加できなかったのだという。
彼の分まで全力で演奏をしよう、楽師の二人はそう心に誓っていた。
撥那「こんな大勢の前で演奏するのは久々だな」
乾奈「あらあら、どこかで見たような顔が大勢いるわぁ!久しぶりね!」
撥那「空には雲がかかっているが、我々にとっては好都合だ!」
乾奈「長雨の中でも、きちんと練習を積み重ねてきたものね!」
撥那「さぁ、聴衆の皆々を我々の旅路にお連れしようじゃないか!」
乾奈「スタート地点は
……私達の拠点、雨宮にしましょう!」
撥那・乾奈「「薄雲にも勝る至極の奏楽を、とくとご覧あれ!」」
演奏の最中、ぽつぽつと雨が降りた。
上を見上げれば、雨を呼ぶ黒き龍が、たいそう喜んでいるように見えた。
それは雨雲の形がそう見せたのか、本物の黒き龍だったのか。
聴衆達は傘もささずに、彼らの演奏に聴き入っていた。
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4.月下に刻む独奏曲
楽師達の演奏が半ばに達する頃には、空を覆う雲はすっかりなくなっていた。
そんな中、舞台袖で一つあとの出番を待つ演奏者、ヴェルエン・シーダは緊張に震えていた。
自分は彼らほどの知名度はない上に、今の自分に全盛期ほどの演奏はできない。
「心配すんな、お前の好きなようにやりゃーいいんじゃねーの?」
次の演奏者、拓谷が彼の肩を叩く。
「んじゃ、俺も好きなようにやってくるから。
俺のだせぇ背中見て自信つけろよな」
拓谷はそう言って、学生バンドのメンバーと共に舞台へと上がって行った。
そうだ、学び舎の妖怪達が「自信を持って」と、音楽祭への参加を後押ししてくれた以上、好きにやる他ない。
未だ完全には動かぬ指を懸命に動かし、運指を確認する。
呼吸を整え、やりきった表情の拓谷達と入れ替わるように、愛用のピアノが待つ舞台へと上がった。
ヴェルエン「私がここに立てたのは、背中を押してくれた仲間たちのおかげです」
ヴェルエン「皆様の心許す限り、私の毀れた手から紡ぎ出される独奏をお聴かせ致しましょう」
ヴェルエン「一度でも四度でも何度でも何曲でも、皆様の
心が許す限り。」
彼は演奏を始めた。そして三曲目を弾き終え、彼はおもむろに口を開いた。
ヴェルエン「
……ところで、学び舎の子供達は噂をするんですよ、私の曲を四度聴くと死に至るのだそうです」
ヴェルエン「しかし、それはただの噂話だと分かるはずです。皆さんはきっと、知らない間に私の曲を四度聴いているはずですから
……」
彼が鍵盤を叩くと、舞台裏の機材や人のいないベンチが浮かび始めた。聴衆の一部は青ざめ、戸惑い、それでも彼の演奏に耳を傾けていた。
彼の妖気は、高揚する気分と共に増幅していたのだ。
その後、偶然会場にいた忠平によって事態は収束した。ちなみにこの時、主催者は異変解決者達の対応をしていたため不在である。
忠平「白昼堂々と噂の真偽を確かめる馬鹿幽霊がいるか、このやろう」
ヴェルエン「申し訳ありませんね、でも皆さん死ななかったじゃないですか。噂は噂にすぎないんですよ」
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5. 音伝う風のリサイタル~festival edition
主催者が戻るやいなや、東部北方領主の忠平が走って来た。
忠平「主催者どのー、遅いですよ」
余音「ごめんなさいね、異変解決者たちの対応をしていまして」
忠平「その間、こっちは大変だったんですよ」
余音「え?何が起こっていたんですか
…?」
忠平「それがー
……(詳しく話す)」
ヴェルエン「申し訳ないです」
余音「いえいえ、本気で演奏ができていたのなら、それ以上に嬉しい事はございません」
余音「
……ところで、そろそろエンディングパフォーマンスでしたよね?」
メヘル「そうだよ!忘れたとは言わせないぞ!」
乾奈「たっぷり練習したでしょ、私たち全員で!」
芳形「ほら、舞台に上がって。
聴衆達が待っているよ」
余音「
……そうだね、最後に我々全員で、最高のパフォーマンスをしてみせようじゃないか!」
全員「おーっ!!!」
彼らは舞台に立った。
この日の、この時のために書き下ろした合奏曲を引っ提げて。
余音「これがファイナルステージだ、最後まで盛り上がっていきましょう!!!」
三時「なんか、もう最後の方だったみたいやな」
限「仕方ねーだろー、俺たちが家を出たの、真っ昼間だったんだからよ」
三時「まぁでもしかし、最後の一曲だけでも聞けてよかったわ」
限「お前こういうのあんまり興味ないんじゃなかったのかよ」
三時「別に興味ないわけじゃないんよ、あんたと行くのが興味ないだけ」
限「おいおい
……外界に行った時は散々異変解決者二人で行動してたってのに、みずくさいじゃねぇか」
三時「ああいう時は仕方ないやろ、自分から望んで二人ではいかねぇやろ普通」
限「そうかよ、お前は何年経ってもいつも通りだな」
三時「そうやろー?へへっ」
三時「
……にしても、見た事ある奴ばっかやな。楽団の四人に琵琶法師、雨宮の楽師が二人」
三時「とー、あのピアニストとベーシストは知らんけど」
限「俺たちってさ、異変解決の道中で結構いろんなヤツと出会ってるよな」
限「人間も妖怪も、神も天使も作品も、死後の世界の人々も喋る機械も
……」
三時「異変解決をしていなかったら、出会うはずもなかった人だって沢山いるよなぁ」
三時「その反面、私らはいろんなことに首を突っ込みすぎてそうな気ぃするけど」
限「それが、異変解決者の宿命なんだぜ」
三時「何が宿命だーい!」
限「さーて、これからはどんな奴に出会うんだろうな」
三時「さぁね、見当もつかんわ」
限「だよなー」
陽が落ちる頃、ミュージックフェスタは観客達の歓声に包まれ、幕を閉じた。
音楽を通じて繋がる縁も、異変解決を通じて繋がる縁も。レンズを覗いてはっきり見える物ではないが、そこに確かに、それも無数に存在しているのだ。
後日談・完
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