@iza_yo_i
クレナイ王都 某所
「最近ギルドの方で何かあるなと思ったら、もうあれが出てくる時期だったか」
超大型魔物の壽の襲来の依頼書の話を聞いて、高額の報酬が期待できると思った華彩も行動していた。
前回出現していた時は先代の店主に連れ出されたっけな、と思い出しながら、クレナイ王都方面を通過する壽を狙ってギルドが出した気球で向かう。
壽の近くで漂う魔石の中で巨大なものに向かって気球を着陸させて採掘をしようとする。
しかし、それを妨害する魔物『忌』が襲い掛かる。
「やっぱり出てきやがったか。来いよ、相手になってやるよ」
忌の大群が迫ってくるが、華彩は怯まずに迎え撃つ。
迫ってくる忌を殴り飛ばしていくがやはり数が多い。一人で対峙するには処理が追い付かなくなる。
目的だった採掘すらできず、このままだと依頼の報酬どころではないなと華彩は焦る。
数が多くなってきて対処が追い付かなくなり、倒し漏らした個体が突進して、噛みついてくる。
攻撃を受けそうになるのを覚悟したその時、突然何者かが割って入り噛みつきを代わりに受ける。
誰かが代わりに攻撃を受けたことに驚いて硬直した華彩だが、すぐに巨大な拳が飛び出して攻撃してきた個体を撃破する。
その攻撃をする人物に心当たりがある華彩はかばってくれた人物の方を向いて礼を言う。
「助かった。至撫……き、だよな?」
外見は間違いなく至撫喜のはずだが、クマの仮面を顔に着けて隠している姿に戸惑い、恐る恐る確認する。
「人違いだ」
声も明らかに本人だが、別人だと押し切ろうとするクマの仮面の人物。
「どう見ても 至撫喜だろ。わざわざ攻撃を受けてかばってきたりするなんて他に居ないだろ」
「お前が誰の事を言っているのかわからないな」
「そんなあからさまに他人行儀な態度取らなくてもな……」
ここまで頑なに違うと言っているのを何とかそうだと言わせて本人だと認めさせたくなった華彩は引き下がらなかった。
「じゃあまさかあんた、弟の方の……」
「違う」
即答で否定が入る。弟が誰のことなのかわかってるように即座に否定するならやはり至撫喜だろ、こいつ。と華彩は怪訝な目でクマの仮面男を見る。
熊の仮面の男の方はもう切り上げて終わらせたいように露骨にため息を履く
「しつこいな、喧嘩屋」
「おい、その呼び方やめろ」
「それとも喧嘩の鬼と呼んだ方がいいか」
「わーっ!わかった、わかった!俺からはこれ以上何も聞かないし、お前もそれやめろ!
自分で名乗った覚えないのにそれ呼ばれるの恥ずかしいんだよ!!」
かつて誰彼構わず勝負を持ちかけた時期のせいで知らぬ間に喧嘩を売る事に合わせて呼ばれていた事や、広まったせいで自分からそう名乗っているだの噂になったせいで華彩にとっては黒歴史な呼び名だった。
それを持ち出されたら華彩もそれ以上そのことを触れられたくないので、これ以上追及するのをあきらめるのだった。
「あー……うん。じゃあ、俺はもう少しこの石で採掘してくるから。……かばってくれたのは本当助かった」
「おう」
微妙な空気の中で別れていくのだった。