@tirichann
「銀時、正装がこれで合っているか見てくれないか」
そう言ってやってきたのは幼馴染のヅラだった。普段はろくに見た目など気にかけないくせに、今回は何のつもりなのかタキシードまで着ている。この男がパーティーなど洒落た天人文化に親しむのだろうか。「どうしたんだよ」と言うと、ヅラは真面目腐った視線を寄越した。
「名前殿が婚活をするらしい」
そういえば、名前は結婚したいと言っていた。そして、その後別れたいとも。
「あー、その後すぐ死に別れるって言ってたな」
銀時がその通りに告げれば、「なぜだ!?」とヅラは激しく動揺した。まあ、確かにこの反応になるだろう。ヅラもヅラで変わり者だが、婚活した後相手に死んでほしいという名前はある意味それ以上だ。
「未亡人になりたいんだとよ」
未亡人になる夢を語っていた名前の姿を思い出す。何もかも、ヅラが未亡人好きだと教えたせいだ。ヅラの視界に入るために婚活をしてその相手に死んでもらうまでのことはするくせに、ヅラの視界に既に自分が入っていることには気付かないらしい。ヅラもヅラで、名前が未亡人になりたいのは自分のためだと気付かない。
「そうしたら俺は志し半ばに死ぬしかないのか……」
万事屋で項垂れるヅラを見て、銀時は自分がこの男のメンタルケアをしなければならないのだろうかと思う。ヅラは名前の婚活相手として選ばれる気満々で、その末の死すら受け入れそうだ。二人共好き合っているのに遠回りなのだ。どちらかだけでも素直に告白すれば上手く行くだろう。ここでヅラに名前が未亡人になりたいのはお前のためだと言ってやったら早いのだろうが、なんとなく腹が立つので言わないでおく。せいぜい悩むがいい、と銀時は床に這いつくばう幼馴染を見下ろした。