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緊急MISSION 猫保護大作戦!!

全体公開 4 9954文字
2026-03-04 20:15:53

この話はギャグです。しかも、途中で力尽きてます。それでもよければ、お楽しみください。

 それが起こったのは、三年に上がった春の事。のどかな午後に、雄英高校創設以来初めての、にゃんとも面倒な出来事だった。

 後に、かの大戦で大きな功績を上げたA組メンバーは、この事件をこう語る。
『百一匹猫ちゃん大事件』と。
 しかし、現在ヒーローチャートNo.5である大爆殺神ダイナマイトは
『フザケンなそんな可愛いもんじゃねぇ、ありゃ人類最大の敵だワ』
 と、眉間に皺を寄せて言う。
『アレが、敵側についたら大半の人間が敗北すんぞ』
 リポーターが冗談だと鼻で笑えば、隣に立つデクが苦笑いを零す。
『いや、本当に、猫は人類の友達で一番厄介かもしれないです』




「オイッ、そっち行ったぞ!!クソ猫!」
「ヤオモモ捕まえてっ!!」
「おまかせくださいっ!」
 爆豪の声に芦戸が視線を走らせる。一匹の黒猫がその黄緑色の目を輝かせて、雄英高校の廊下を疾走する。三年A組生徒達の足元を掻い潜り、軽やかな足捌きで逃げていく。
 流石の人間でも、若い雄猫の動きにはついていけず、身を屈めて捕まえようとすればその背を踏み台にされ宙を介して逃げていく。
 空を舞う猫の腹を人はただ呆然と立ち尽くして眺める、その身軽さは蛙吹を超え、優雅さはねじれさえ敵わない。
「これ以上、我が母校をその愛らしい肉球で、踏みつけることはーー」
 八百万の腹部が発光する。鋭い眼光で、見事に着地した黒猫と目が合う。八百万はニヤリと笑い、腹部を猫に見せつけ生成する。
「許しませんわぁぁぁっーーー!!」
 八百万は勢いよく、腹部から生成された物を取り出していく。黒猫はその姿を見つめ家を逆立てる、耳が広がり瞳孔が開く。その黒く細い尻尾は、毛が開き逆立ち先程よりも一回り大きくなっていた。
 八百万は更に笑みを深めた。
「上鳴さんっ!お力をお貸しください!」
「おうよっ!見てろ、猫!観念しろぉぉぉっ!」
 ダァッン!!
『『炬燵っ!!』』
 二人の声が揃った。三年のクラスが並ぶ廊下に響き渡るその声に、黒猫は更に身を大きくして警戒態勢に入る。
 黒猫の目の前に置かれたのは、一般的な家庭で使われている電気炬燵である。コンセント式で「弱」「中」「高」に設定することができ、四方向から足を入れて過ごすことが出来る。この国ならではの、暖房器具だ。
 炬燵布団は何のためなのか、オールマイトカラーの少し派手な物だ。
「さぁ!黒猫さんっ!」
「かかってこいっ!」
 上鳴がコンセントを咥えると、電流が流れ始めた。八百万は炬燵毛布を捲り、中に誘導を試みた。机の上にあるミカンと籠が揺れる。
 炬燵からは柔らかく温かな熱が、ゆっくりじんわりと外界へ流れていく。それは黒猫のほうへゆっくりと空気に乗って流れ、僅かに冷えた廊下に暖をもたらす。
 廊下にいた全員が息を飲んだ。

 この場にいる全員の目的は『放たれた猫百一匹を捕まえる』それだけの為に集まった。普通科だろうが、経営科だろうが、ヒーロー科なんて関係ない。自分達の母校を守る為、猫アレルギーの友人と生徒を守る為にこの場にいるのだ。
 此処では、全員が『ヒーロー』なのだ。

……入れ」
 芦戸が呟く。
 静寂に包まれた三年が集う廊下に響く声。そして、誰かが息を飲む音が反響した。
(入れ)
(入れっ)
(入れ!)
((頼むっ、入ってくれ!!))
 全員の心が一つになった瞬間、その瞬間がやってきた。
「んにゃぁぁっ」
 逆立った毛を空調の風に靡かせて、ジリジリと炬燵へと近づいていく。僅かに空いた口から、愛らしい歯を見せながら唸り声を上げている。多分だが、威嚇しているつもりなのだろう。炬燵に。
 黒い毛玉が鳴き声を上げて炬燵へ近づく姿を見つめる。
「うっ」
 その時、後方で経営科の男子が膝をついた。近くにいた普通科の女子が肩を支え、顔色を伺った。経営科の男子は、目を見開き息を荒くして黒猫を見つめる。その表情は、何かを堪えるのに必死だ。
「駄目よ早まっちゃ!」
「少し、少しでいいんだ!頼む、頼むよ!」
 そう小声で話す二人を、誰しもが苦痛に満ちた顔で目を背ける。
「後少し、後少しなのよ!?此処で貴方が手を出したら、またあの黒猫ちゃんは逃げてしまうの!」
……っ、分かってる、分かってるさ!そんな事!けどっーー」
「けどじゃない!これは、私達の学生としての命運が掛かってるのよ!?」
「知ってる、知ってるさ!……けど、いつまで俺は我慢をすればいいんだっ……拷問だこんなの、こんな……こんなーー」
 男子生徒が廊下を優しく拳で叩いた。
……そんなの、貴方だけじゃないわ」
 女子生徒が周りを見渡す。促すように、男子生徒の肩を引き顔を上げされる。男子生徒ば、促されるままに渋々顔を上げた。すると、開けた視界の中に居たのは、幾千もの死地を潜り抜けてきた顔を持つ同志だった。
……っ!」
 男子生徒の目に涙が伝う。
「みんな、同じ気持ちよ。貴方と……ね」
「み、みんなっ」
 女子生徒の目の端に涙が滲んだ。ヒーロー科、経営科、普通科のメンバーが二人に目をやり静かに頷く。全員の心が一つになった瞬間だった。
「みんなあの黒猫ちゃんに触りたくて、触りたくて……仕方ないのよっ!!」
 遠くでピアノが鳴り、三年の廊下に薔薇が咲いた。……気がした。
「だから、祈りましょう……黒猫ちゃんが、あの炬燵に入るのを」
……ずっ、そうだな。ごめんな、こんな弱音を吐いて」
「いいのよ。そんな時もあるわ、さぁ立って!私達の戦いの結末を見届けましょう!」
……あぁっ!!」
 経営科の生徒が立ち上がり、普通科生徒の手を取る。そして、顔を見合わせて視線をあの黒猫へと向ける。その熱く燃えるような気持ちが血を流れ、眼球を通して炬燵へと注がれた。

 一方、上鳴と八百万は、計画通りに事が運ばず焦っていた。当初は良かったのだ、黒猫は炬燵の方へ近づき鼻を鳴らしてみたり、炬燵布団に触れたりしていたのだが。どうやら警戒心が八百万のパフォーマンスで芽生えたらしく、近づいたは良いものの炬燵の入り口一歩手前で止まってしまったのだ。
(誤算でしたわっ、先程上げたチュールで私の分は在庫切れ。誰かに譲ってもらうにしても、今動いてしまえばこの黒猫さんは逃げてしまう)
 八百万のこめかみに汗が伝った。
(こうなったら上鳴さんにっーー)
 視線を上鳴に向けるが、上鳴は小さく首を振る。そして制服のポケットを外に出した。その中には何も入っておらず、ポケットの裏地が表にでただけだった。
 八百万は、眉間に皺を寄せて唇を噛み締めた。
 止まってしまった猫を中に引き込むには、何かで釣るしかない。しかし、猫に一番近い位置にいる自分達には、猫を釣る道具がない。他のメンバーへ目配せをすれば、一番奥にいる女子生徒がチュールを二本持っていた。
 しかし、遠すぎる。この場から動けば確実に猫は逃げる。誰かに持ってきてもらうこともできない。
「八百万は作れねぇのか」
 上鳴の声が小さく聞こえる。その問いに、小さく首を振る。
「無理です。先程、私が生成したものを他の猫に与えたのですが、食いつきませんでした。どうやら市販品の味を一度覚えた猫には効果が無いようなのです」
「ちっ……既に味覚を押さえられてるってことかよ」
「とりあえず、今は待ちましょう。あの猫が逃げないように、私達は見守るしか無いと思います」
 八百万は視線を上げる。
 目の前には、此処まで共に戦ってきた仲間がいる。ある者は傷を負い、ある者は髪を乱され、ある者は服を破かれてしまった。
 皆それぞれに被害を受けている。そんな中で、自分一人が諦めて下を向くわけにはいかないのだ。仲間の為に、そして自身の母校の為に、考えるしかないのだ。この場を切り抜ける、勝つための方法を。
(考えろ、考えるのよ百!何を今まで学んできたの!此処でその知識を活かせないで、どこで活かすというの!)
 八百万が唇を噛んで顔を顰め、周囲を見渡した。その瞬間。
「はっ!」
 廊下の窓から漏れる光が曲がった。キラキラと光る太陽光が、一瞬、少女の形を映し出した。
 八百万はその正体に気づき、少女の方へ視線を走らせる。
 すると一瞬だけ、虹色に光る大きな瞳と視線が合い、分かったとでも言うように瞬きをする。ふわふわと、空気が揺らいで、女子生徒が持っていたチュールが浮かぶ。
「大丈夫、私がキターッてね」
 何処からか聞こえた声、その声に全員が視線をそちらへ向けた。しかし、そこに人姿はなく、ふわふわと浮かぶチュールが人の間を縫って動いてるだけだった。
 チュールは宙を舞い、空中で封が切られた。
「ほら黒猫ちゃん、こっちだよ〜」
 封が切られたチュールは、黒猫の目と鼻の先に伸びてきた。しかし、そこに人の姿はなく、僅かな光の揺らめきだけが不規則に動いていただけだった。大半の生徒達は何が起こってるのか分からず、その不思議な光景に息を飲むしか無かった。
「ほらほら〜」
 黒猫は鼻を鳴らしてチュールへと近づいた。最初こそ警戒心していた様だが、何度か舌をペロリと出して知っている味だと気づいた様だった、そこからは早かった。
 黒猫を誘導する様にチュールが動き、猫もそれについて歩く。愛らしい音が聞こえてくるかの様な姿に、廊下で行く末を見守っていた生徒達は思わず頬が緩んだ。
 気づけば黒猫は、炬燵の中に入り込み居心地の良さに気づいたのか、座り込む。そして、目を細めながら必死に宙に浮くチュールを頬張ったのだった。


「わぁ〜、可愛い〜、毛並みツヤツヤねぇ〜」
「次!次俺な!」
「まて!順番だぞ!」
「チュールですよ〜、来る?お膝来る?」
 炬燵に群がる生徒達の脇で、八百万は満足そうに笑っていた。
「ヤオモモ〜、よかったね!黒猫ちゃん捕まって!」
「葉隠さん!本当に助かりましたわ、一時はどうなる事かと……
「マージで焦ったぜ!!ここ迄追い詰めたのによぉ、また一から仕切り直しかと思ったゼ!葉隠ナイス!」
 そう言って拳を作れば、揺らいだ光が笑い声を漏らして、上鳴の拳にコツンとぶつける。
「まぁ、これで半分くらいは集まったろ」
 爆豪が気怠そうに言う。
「そうですわね、流石にこの人数で捕まえてるのですから、終わりも見えてきましたわね」
「ほーんと、とんだ一日だったよな」
「たっく、なんで俺がこんな事しなきゃなんねぇんだ」
「まぁーまぁーかっちゃん!これもヒーロー活動の一環ってことで!」
「ぢぃッ」
 爆豪の肩をポンポンと上鳴が叩けば、最早舌打ちかどうかも怪しい返答を爆豪が返した。その目は何かを睨むように、怒りが見え隠れしている。隣の八百万は、安堵したように二人を見つめて笑う。
 しかし、葉隠だけがその空気を楽しめて居ない様だった。
「ん〜、なんかちょっとややこしい事になっててね〜」
 と、葉隠は光をキラキラと僅かに反射させて、困ったように笑ったのだった。



 時は遡る。


 事の始まりは、一人の経営科一年の生徒だった。
 彼女は、プロヒーロー プレゼント・マイクの大ファンだった。毎週流れてくるラジオ放送は必ず視聴し、彼が出るテレビ番組は録画しリアタイする。グッズが出れば小遣いを貯めて買い、プレゼント・マイクがヒーロー活動で来れば足を運ぶ生粋のファンだった。
 彼女の宝物は、プレゼント・マイクがヒーロー活動を始めた頃に、一度だけ書いてくれたサイン色紙。それは今も彼女の部屋の壁に、額に飾られている。
 そして遂に進学するとなった時、彼女は両親にお願いをして必ず合格をするからと雄英高校を志望したのだ。彼女は、プレゼント・マイクのラジオ放送を糧に、毎日毎日机に向かった。
 それもこれも、大好きなヒーローに会うために。そして、いつかプレゼント・マイクが担当してるラジオ放送の会社に勤めるため。だから、彼女は経営科へと進学を決めたのだ。
 そして、入学式。残念なことに憧れのプレゼント・マイクの姿は見えず、彼の奏でるビートと声だけが聞こえた。しかし、彼女にとっては最早公式のライブ会場状態で、一人涙を溢しながら入学したのだった。
 そんな彼女の個性は『自分の声から猫を出せる』という、少し変わった個性だった。
 正確に言えば、彼女が誰かに対して感情が爆発した瞬間に、彼女の口からでた文字の分だけ猫が出るという不思議な個性だった。小学生低学年時代に、憧れていた先生に対して想いを爆発させたら、七十匹の猫を校内で解き放ったという逸話まである。
 そんな彼女が、憧れのプレゼント・マイクに出会ったらどうなるだろうか。
 そう、ご想像のとおり、雄英高校に猫が溢れた。
『わ、わ、わ、わ、ぷ、ぷ、ぷプレゼント・マイク!あのあのあの、わたしあの!すっごく大ファンで、ずっとお会いしたくて!あの本当に、わ、んんんーかっこいい、渋いいいっ!好きですー!!握手してくださいーー!!いやいやいやでも握手なんておこがましいい……あ、やばい』
 興奮した彼女が言葉を話すたびに、足元には猫が現れ彼女が気づいた時には、百一匹の猫が校内に溢れかえっていたのだった。

 プレゼント・マイク曰く
「すげーの何のって、あの子が喋る度に猫が生まれんのよ。マジでビビった」
 だそうだ。

 そこからはご想像のとおりだ。
 百一匹の猫達は、縦横無尽に雄英高校内を走り出し、授業中の教室に我が物顔で現れ授業を妨害する。職員室に乱入しては机を荒らし、先生方の背に登ったり引っ掻いたり。机の上にあった昼食は狙われ食べ尽くされる。
 遂には校長室にまで侵入した猫たちは、校長を見つけ何かと勘違いしたようで、狂って追い回し始めたそうだ。
 勿論、三年A組も例外ではない。
 担任の相澤が授業を行なっていた時にそれは起こった。

「お前ら、ここ覚えとけよ。例年ヒーロー試験には必ず出てくる個所だからな」
 そう言ってA組生徒へ背を向けて板書を取り始める。
 それに頷き、手を進める三年A組ヒーロー科。紙を滑るシャープペンシルの音が、午後の教室に響く。紙を捲る音、マーカーペンが滑る音、誰かが意味を理解しようと頭を抱えて唸る声と
「んにゃぁん」
 猫の鳴き声。
「は」
 そう、猫の声である。
「ね」
 相澤はすぐさま振り返って、左目を見開いた。
 三毛猫は、相澤の真後ろにある教卓の上にいつの間にか座り、生徒達を見下ろしながら毛繕いを始めたのだ。生徒達は全員が顔をあげ、目の前にいる生き物に集中した。
 そして、誰に言われたわけでも無く、揃って声を上げたのだった。
『『猫ぉぉぉぉっ!?』』
「にゃぁぁん」
 三毛猫が愛らしく返事を返せば、峰田が立ち上がった。
「猫だ!なんでこんな所に猫がいんだよ!」
「口田か?!」
 瀬呂が振り返るも、口田は焦ったように首を振って否定する。どうやら口田の個性で呼び出した訳ではないと知り、クラスの中が更に混乱し始める。
「口田くんじゃないとしたら、また別の個性でってこと?」
「それか、普通に侵入してきたか、だろ」
「いやー、流石の雄英高校のセキュリティも猫には敵わなかったかぁ」
 呑気に語る上鳴の横で緑谷と爆豪が顔を見合わせた。
「まぁ、ええんやない?授業の邪魔する感じじゃないし。ね!相澤先っ……せい?」
 麗日が担任の相澤へ同意を求めようと、視線を投げる。しかし、それは返ってくることは無かった、むしろ生徒全員の視線を奪う事になった。
 三年A組、担任の相澤消太とは一年の頃からお世話になっている。合理的、愛想がない、ぶっきらぼう。他者にも自身にも厳しい、強くてかっこいい、雄英高校ヒーロー科教師。かの大戦で片目片足を失うも、現在進行系で多方面で活躍するプロヒーローでもある。
 ヒーロー科生徒全員の憧れの的である。
 三年という期間の関係であっても、今目の前にいる相澤消太という人間を見るのは、初めてだった。

「んー?何してんだお前、どっから来たんだ?」
 甘く蕩けるような声
「ふっ……この辺じゃ見ない顔だな。一人で来たのか?」
 目元が和らぎ、慈しむ様な瞳
「人懐っこいな、何も持ってないよ。後でな、もう少し待ってろ」
 人目も憚らず、相澤消太は三毛猫の顎を撫で頭を撫で、毛艶の良い身体に触れる。時折猫からのスキンシップを受け入れ、幸せそうに笑っていた。
 三年A組は思った。
(誰だあれ!?)
 少なくとも、数分前に現れたあの三毛猫よりは、相澤先生との関係性は長い。しかしながら、こんな甘い声で動物に接している先生を見るのは初めてだった。
 小さい子や動物に対して優しいのは知っていたが、今まで見てきた光景以上のものだ。エリちゃんやおすしと過ごしている姿からは想像できない姿、授業や日常生活からは絶対に見ることができないこの光景。
((これが……シャッターチャンスかぁぁっ!?))
 一番早かったのは蛙吹だ、一人のシャッター音が聞こえた瞬間、この教室は一気に撮影会場に変わった。四方八方から聞こえるシャッター音、気づけば授業なんてそっちのけである。
 しかし、この教室の空気をきり裂くように、一人静かに立ち上がる男が居た。
「相澤先生、そんなんじゃ猫好きが聞いて呆れます」
……あぁ?」
「猫好きならーー」
 心操人使は静かに立ち上がり、鞄からあるものを取り出した。
「これくらいは常備しておかないと」
ドーーーーン!
 そう言って、心操は鞄の中から『まぐろバラエティ四種セット✕10』と書かれた、チュールの箱を勢いよく机の上に置いた。そのせいで、机の上にあった消しゴムとシャープペンシルが転がった。
((心操っーーー!?なにしに学校来てんのーーー??))
(てゆーか!!相澤先生に喧嘩売っとるーーー???!!!)
 コロコロと転がって、気づけば緑谷の上靴にコツンと当たった。
「心操、お前」
 相澤の眉間にシワが寄る。心操は、片方の口角を上げ、ベリベリッと容赦なくチュールの箱を空け始める。その音に三毛猫は、相澤の掌からスルリと顔を背ける。
 心操はそのまま箱に手を入れ、そっと一本のチュールを取り出した。
「ミケ」
 ミケと勝手に命名された猫は、その目を見開き心操の手に握られたそれを見つめた。
「おいでっ!」
 心操はそのままチュールに手を掛け、勢いよく開封した。
 すると、それを待っていましたとでも言うように、ミケは軽やかに教卓から飛び降りた。ポンポンと机の上、耳郎の背中に飛び乗り心操に期待に満ちた目を向ける。
 次の瞬間、ミケは心操の手からチュールを舐め取る。小さな声で唸りながら、必死にチュールを食べる姿はまさに天使だ。
「ふん、先生もまだまだですね」
「うにゃあぅ、にゃ」
……心操、お前」
「にゃんうにゃうにゃ」
「なんですか、文句があるなら。俺の手から取り戻してみてくださいよ」
「うみゃうみゃんにゃ」
「はっ、随分な口を聞くようになったもんだな、奪い返すさ……
「にゃんうにゃう」
「そのチュールの箱事なっ!」
「にゃいにゃんう」
「望む所ですっ!」
 効果音があったならこの二人の間にはきっと、バーーーンだのドーーーーンだのという効果音がついたのだろうが、生憎そんなものはない。ただただ、一匹の猫を取り合う教師と生徒、その間で三毛猫を背中に乗せた耳郎の唸り声が聞こえるだけだった。
 周りの生徒達は、バチバチに睨み合う二人を無視して、必死に猫の写真を撮りまくる。
 緊張と緩和が入り混じる混沌のA組、それを裂くように突然校内放送を知らせるチャイムが鳴った。


『HEY!!BOYS and GIRLS!!』
 突然鳴り響くプレゼント・マイクの声に、ミケは驚き耳郎の頭を踏みつけて逃げていく。
 全員の残念だという声と共に、相澤と心操がスピーカーを睨んだ。
「あいつ……しめるか」
「手伝いますよ、先生」
 プレゼント・マイク、命の危機である。
『きーーーーん急MISSIONだぜ!現在進行系で校内に百一匹のCAT……つまり、猫が放たれたっ!こせいによるもので害は無いが、猫アレルギー、それらに因んだアレルギー保持者は直ぐに校舎外へ退避っ!三年ヒーロー科を中心に、百一匹のCATSの捕獲、及び対象者の避難に当たられたしっ!!』
 プレゼント・マイクの声が校舎内に響き渡る。それを聞いた三年A組の目が変わる。
『Pーーーエスっ!!相澤ァっ、確保した猫は当該個性保持者へ返還予定だァっ!!連れてかえんじゃねぇぞっ!!弟子っ!!お前もだからナァっ!!』
「ぢぃッ!」
「くっ……
 舌打ちする相澤と苦渋の顔をする心操に、耳郎が溜息をついた。
『当該生徒及び教師、スタッフは緊急避難っ!!ヒーロー科っ、避難誘導頼むぜェッ』
『アハハハッ!!僕はネズミじゃなぁぁぁぁぁいっのさぁ』
 ブチッ
 終わりに聞こえた彼の声は、悲痛な声だった。
「百一匹の……
「猫??」
 障子と佐藤の声が静まり返った教室に響く。
「お前ら」
 相澤の声が響く。全員の視線が心操の机から教卓に向かう。
「放送のとおりだ、お前ら」
 相澤の目に力が入る。全員が息を飲む。
「捕まえるぞ、てん……猫達を」
((天使って言いかけたぞあの人))
「障子、瀬呂、緑谷、常闇は一階だ。緑谷を中心に該当者の判別、避難を優先しろ」
「はっ、はい」
「御意」
 瀬呂、障子、緑谷、常闇が立ち上がる。
「麗日、蛙吹、飯田、耳郎、口田はグラウンドや校舎外の捜索だ。避難誘導が完了し次第、緑谷と常闇は麗日と合流」
「はいっ!」
「了解よ、ケロッ」
 麗日達が立ち上がり、蛙吹がジャージを履いた。
「八百万、葉隠、爆豪、上鳴、芦戸は三階。轟、峰田、砂糖、切島、尾白は二階を中心に捜索開始。心操は俺と来い」
 名前を呼ばれた其々が立ち上がり、教室を出ていく。同じタイミングで出てきたB組と共に走り始めた。
「用意は良いか、心操」
「勿論です。先生」
「決着は放課後だ、先ずは彼奴等の生存確認及び保護が優先だ」
「一次休戦ですね。彼等に危害が及ば無いうちに保護しましょう」
 そう言ってヒーロースーツに着替えた心操が、相澤の隣に並んだ。二人の表情は、固くこれから起こるであろう総力戦に向けて、気持ちが入っていた。足取りは重く、二人が纏う黒のヒーロースーツが、明るい日差しを吸い取り足取りを重くさせていた。

 これを後方から見ていた峰田は思う。
(いや、いつ着替えたんだよ。お前)
 しかし、それを突っ込んでしまえば、あの細くゆらゆらと動く武器の餌食になると思い言葉を呑み込んだのだった。




 これより、始まるは穏やかな学生生活を守る為の戦い。
 人は猫達に勝てるのか、相澤と心操はボス猫を捕らえる事が出来るのか!
 猫のフケに襲われる人類、猫が運ぶ花粉そしてホコリにやられる人類。すべては、穏やかかな日常を取り戻す為。三年A組ヒーロー科が奮闘する、大スケールでお送りするストーリー!!
 いざ、ここに開幕っ!!



という話を書きたかったんですが、力尽きたので供養で上げておきます。中身ごっちゃごっちゃ、キャラ崩壊してます。
本当に申し訳ありません。
予定ではこのあと
・たまたま来ていた公安委員長が、猫をみて猛禽類の血が騒ぎ追いかけ始める。それを見つけた常闇が戦線離脱して、公安委員長を止めに入る。
・B組物間が当該女子生徒に触り、個性を何故かコピー。更に三十匹の猫が放出され、拳藤に気絶させられる。
・二階担当組は猫を捕まえるのに悪戦苦闘
・爆豪、轟まさかの花粉症にて戦線離脱
・口田の個性最強にて、猫なつき放題。それを見た、相澤と心操が餅を焼いてあの手この手で猫を保護する。捕縛布の端を猫にボロボロにされる。操縛布の中で猫が寝てしまい泣く心操。
・何故か、口田(本人は不本意)VS相澤、心操になり、ボス猫(でっかい歴戦の勇士茶トラ)を保護した方が猫に好かれているという、意味のわからない勝負に持ち込まれる。で、負ける猫師弟。
・凹んだ猫師弟による放課後特訓のタイトルは『猫に好かれる方法』になり、特別講師として口田が呼ばれるというオチ
と、なる予定でしたが力尽きました。あとは、読者様のご想像におまかせします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
誤字脱字失礼しました。


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