□二宮の顔を観察する修。後で出水が謝りました。
@wtkotaji
例えば凍えるような日の、一面の雪化粧をされた街が朝の光を浴びる光景。
雨上がりの見上げた空に、かかっていた七色の虹の橋を見つけた日。
初夏の海岸沿いを歩いている時に、暮れ始めた海面に溶けてしまいそうな鮮やかな赤橙色の夕日を見た時。
ふとした瞬間に、思わず綺麗だなと眺めてしまうような。
二宮匡貴は、そんな賞賛に値する顔立ちをしていた。
最も、修はそんなことを気にしたことはない。
人の美醜は個性のようなものであると認識している上に、修自身が幼少期から母を見て育って来たので迫力のある美人に気付かぬ内に耐性が出来ていたのだ。
何より修には優先事項がある。
遠征や玉狛第二に関わらないことに割く時間はない。つまりは修の意識にも入っていなかった。
数分前のことだ。
C級隊員が二宮に声をかけられ、気圧されながらもどこか嬉しそうにしている姿を見かけた。
珍しいこともあるものだ。
どうやら何か落とした物を、すれ違った二宮が拾って声をかけたらしい。
慌てお礼を言う相手に軽く頷いて直ぐに踵を返す二宮を、名残惜しそうにC級隊員が見つめている。離れた後は他の隊員に揉みくちゃにされているようだった。明らかに人気なようだ。
「あの、二宮さんて、」
「人気者、いや、憧れの対象?にされてるよなー」
修の疑問を察したのか、一緒に歩いていた出水が羨ましいねぇと然程気持ちが籠った様子もなく言う。意識は自販機の飲み物にいっているようだ。
出水にとっては常識のような、当たり前の認識を話しているのだとわかり、修は軽く驚いた。
どちらかといえば、影浦のように恐れられ、遠目で見られているような人物だと思っていた。優秀なのは間違いないが、東や来馬のように人望があって話しかけやすいタイプではないだろう。
「それはさー、ほら。トリオン能力高いし顔立ち整ってるし、何も知らないC級隊員だったらそうなるんじゃね?」
「なるほど。里見先輩も二宮さんをとても尊敬されてました」
「うん、まぁ、そう。か?」
里見はちょっと違うような気がするが(何しろ本人が信者を自称している)、面倒になった出水は否定はしなかった。
「二宮さんて顔立ちが整っていたんですね」
「え、なにその初耳みたいな顔。どう考えてもイケメンでしょあの人は」
「言われてみたらそんな気はするんですが、意図的に二宮さんの顔を観察したことはなくて」
「いやいやそんな研究対象の着眼点ではなくて、もっとちゃんと見てみろって」
「はぁ、」
言われた修は遠目ではあるが、改めて二宮の顔を観察してみた。
(確かに、綺麗な顔立ちしてるなこの人)
整い過ぎて、よく出来た彫刻のようである。ダビデ像みたいな無機質さがあるとさり気な微妙なことを考えている修の視線に耐えられなくなったのか。つかつかと二宮が近寄ってきた。
「何か言いたいことがあるなら言え」
「あ、不躾にすいません。二宮さんて無機質だなって考えてたらつい観察してしまって」
「……」
二宮は少し傷付いた。