無双軸(赤焔)で、EP.7が終わった直後ぐらいの話。『星海をたどって』の続きです。
EP.14まで見た結果、ゆるされそうだと思ったのでアップします。
@Bombwooo
戦火の只中とはいえ、水上の都デアドラの夜は静謐なうつくしさを湛えている。
運河の水面が月明かりを淡く反射し、潮風がかすかな波音だけを運んでくる。若き盟主はひとり水上へ張り出した外廊下の手すりに身を預け、張り詰めた思考を夜風に溶かすように、暗い海を眺めていた。
ふと、背後でかすかな衣擦れの音が止まる。
振り返るまでもなく、気配だけで誰かは分かった。数時間前、廊下ですれ違った折に「今日の政務はもう切り上げるよ」と告げておいたはずの、灰色の悪魔だ。
あの敗戦の夜、律儀に頭を下げにきた雇われ傭兵は、それ以来、夜の城館を見回るたびにこうしてたびたび姿を現す。
「ベレトか。遅くまで見回りご苦労さん」
夜空を見上げたまま、不意に口を開いた。
「なあ、前から思ってたんだが……あんたって、ほんとうに読めないよな。戦場じゃあんなに容赦なく敵を薙ぎ払うくせに、昼間は中庭でのんきに焼き菓子なんかかじってたりする。腹の底が見えないというか、案外かわいいところもあるというか」
「……君のほうこそ、よく分からない人間だと思うが」
低く落ち着いた声が落ちた。振り返れば、歩みを止めたベレトがただ真っ直ぐにこちらを見つめ返している。月明かりに照らされた貌を値踏みするようにうかがうも、瞳の奥に剣呑な光はない。
「俺が?」
「そうだ。いつもは飄々としているくせに、戦場に出れば、平然と自らの命を投げ出すようなとんでもない無茶をしでかす」
「おいおい、あの日の無茶はもう手打ちになったはずだろ?」
「……それに、今もそうだ」
言葉を口にするうち、彼のなかでくすぶっていた不満が再燃してきたらしい。みるみるうちにベレトの唇の端が下がり、明らかな不機嫌の相を呈し始めた。
「数時間前、今日の政務は切り上げて休むと言っていたはずだ。なぜこんな夜更けにひとりで風に当たっている」
「いや、これはちょっとした息抜きでだな」
「昨日も遅くまで起きていただろう。部屋に灯りがついているのが見えた」
淡々と逃げ道を塞ぐように事実を突きつけられ、思わず言葉に詰まる。
相手を観察しようとした浅ましさが見事に裏目に出た。ベレトのほうは口を噤んだまま、危なっかしい雇い主のわずかな疲労の兆候や日々の生活態度を、仔細に観察していたのだ。
「そもそも、息抜きが必要なほど疲労が溜まっているということ自体が問題だ。……君は、」
じわじわと語気を強め、気迫を帯びてくる姿に、咄嗟に身構えた。
――いけない。このまま言わせておけば、あっという間に反論の余地もない道理で詰め寄られる。まだ短い付き合いだが、それくらいは容易に想像がついた。
「わかった。寝る。寝るから」
これ以上の追及を避けるべく、クロードは勢いよく両手を上げて降参の意を示す。
その必死な様相に、ベレトは一瞬だけ目を瞬かせ、かすかに言い淀む。
「……一傭兵が、雇い主に口を出すことではないかもしれないが」
自覚があるらしい生真面目な前置きに、計算ずくの余裕を崩し、間抜けな表情を晒した。
いや、まったくもってその通りだ。一介の傭兵が、雇い主の睡眠時間にまで目くじらを立てて詰め寄ってくるなど、前代未聞もいいところである。
そう内心で同意しかけたが、ここで下手に口を挟めば、再び火に油を注いで説教が白熱しそうで恐ろしい。本音をぐっと腹の奥に呑み込んだ。
呆れ交じりのため息が、冷たい夜風に溶けてゆく。
いったい、この男の頭の中はどうなっているのだろう。王国を追われた行き場のない傭兵たちを拾い上げ、うまく手綱を握って面倒を見てやっているつもりだった。だが、蓋を開けてみればどうだ。今の自分は、まるで聞き分けのない若造のようにすっかり見透かされ、理詰めで寝かしつけられようとしている。
駒を動かしているつもりが、年相応の青さをあっさりと看破されている事実。
のんきに菓子を頬張るような人間らしさにすっかり油断していると、時折こうして、率直な言葉で痛いところを突いてくるのだから。
「……はあ、分かったよ。あんたのそういう不機嫌な顔、俺には堪えるから勘弁してくれ」
苦笑しつつも、素直に踵を返す若き雇い主を見て、不服そうに下がっていた唇の端が、ようやく、わずかにほどけた。
幾重にも連なる天幕の奥、ひっそりと焚き火が爆ぜる音が夜の静寂に吸い込まれてゆく。同盟軍の陣営が深い眠りにつく中、クロードはひとり、揺らめく炎の傍らで愛用の弓を手入れしていた。
弓を引き絞る負荷は、決して軽くはない。厚手の革手袋越しであっても、戦場で幾度となく弦を引いた指先は赤く腫れ上がり、ところどころ無惨に皮が剥けている。
痛みを誤魔化すように布で弓幹を拭っていると、ふと視界の端に人影が立った。足音すら立てずに歩み寄ってきたのは、剣の手入れを終えたらしいベレトだった。
「……相変わらず、足音を立てない男だな」
痛む指先を隠すようにさりげなく弓を下ろし、クロードは小さくため息をつく。
「なんだ。また俺の夜更かしに、小言でも言いに来たのか?」
ここ最近、この雇われ傭兵はやたらと生活態度に口を出してくる。どうせまた理詰めの説教が始まるのだろうと半ば開き直って受け止める構えを見せるも、彼の鋭い眼差しはすでに、手袋を外した剥き出しの指先を的確に捉えていた。
「指を痛めているな」
「いや、大したことはないさ。少しばかり皮が擦れただけで……」
言い訳を遮るように、ベレトは懐から無骨な小瓶を取り出す。蓋を開けると、薬草と獣の脂を煮詰めたような、青臭い泥のような匂いが漂ってくる。
「傭兵団で使っている傷薬だ。……塗っておけ」
「おいおい、俺はこれでも同盟の盟主なんだぞ。出どころの怪しい薬は受け取れない」
冗談めかして断ろうとしたが、ベレトは反論する代わりに無言で一歩踏み込み、クロードの腕を掴もうとした。どうやら、彼自身の手で強引にすり込もうという魂胆らしい。
「待て、それぐらい自分でやる。いや、そもそも塗らないからな」
慌てて身を躱して拒絶すると、ベレトはわずかに動きを止め、自分の手袋を音もなく外した。
月明かりの下に現れたベレトの手は、驚くほど真っ白だった。しかし、その掌や指の節々には、長年の鍛錬によって形成された厚い剣胼胝がいくつも刻まれている。
ベレトは小瓶から泥のような軟膏をすくい取ると、表情ひとつ変えないまま、怪我を負っていない自らの前腕へと塗りたくった。その腕もまた、手と同じように透き通るような白さであったが、うっすらと数多の古傷が走っているのが見て取れる。
「な、あんた、何をして……」
「これで、毒ではないと証明できただろう」
「いや、そうじゃなくてだな」
噛み合わないやり取りに頭を抱えかけるが、ベレトの表情は真剣そのものだ。それどころか、小瓶を持ったままさらに距離を詰め、形のよい唇をかすかに開く。
「……まだ疑うなら、口にも入れるが」
「わかった。わかったから、絶対に食うな」
冗談でも何でもなく、本気で軟膏を口に放り込みかねない奇行に、クロードは思わず両手を突き出して制止した。理屈など通じる相手ではない。たかが指の皮が剥けた程度で身体を張り、挙句強引な手段を用いてねじ伏せようとする。どれだけ考えを巡らせ、駒を置いてみても、この男にはいつも盤面ごとひっくり返される。
「……はあ。貸せよ、もう。大人しく塗るから」
諦めたように息を吐き出し、クロードはついに観念して小瓶を受け取る。
実際のところ、クロード自身も毒や薬の調合には長けている。わざわざ出処の知れない獣の脂など使わずとも、もっと効き目が良く、匂いがまともなものを自分で作り出せる。
けれど、この程度であれば自作できるなどと強がろうものなら、目の前の妙に真面目な男はすかさず「ならばなぜ作らない」「そんなものを調合する暇があるならこれを塗ったほうが早い」などと、正論で畳み掛けてくるに決まっている。
だから、その反論はぐっと腹の奥に押し込んだ。
軟膏を指先に擦り込むクロードを見下ろしながら、ベレトはぽつりとこぼした。
「自分は君を勝たせるために剣を振るうし、君の背中も守るつもりでいる。だが、」
「……」
「最後の最後で君の命を救うのは、君自身の放つ矢だ。……その指を潰してどうする」
それは、ただの傭兵らしからぬ、どこまでも本質を突いた飾り気のない言葉だった。
指先のひりつくような痛みを、自ら招いた失態の代償として抱え込もうとしていた感傷など、戦場では何の意味も持たないのだと、淡々と諭しているようだった。
「……ああ。違いない」
小言ばかりで厄介な男だと思っていたのに、その不器用な気遣いにはもう口答えする気すら起きず、クロードは薬の染み込む指先を見つめたまま、苦笑まじりに首を振る。
目的を果たしたベレトは小さくうなずき、それ以上は何も言わなかった。彼は薄暗い天幕の奥へと去ってゆく。
残されたクロードは、再び手元の愛弓に布を当てようとして――ふと、動きを止めた。
当然のことだが、指先にたっぷりと擦り込まれた獣脂のせいでずるずると滑り、まともに弓幹を握ることすらできない。薬草の強烈な泥臭さも相まって、夜半の冷気に浸って物思いに耽るような感傷は、完全に吹き飛んでしまった。
これではもう、手入れを切り上げて寝台に潜り込むほかない。
あの男がそこまで計算して泥を擦り込んだのか、あるいはただの偶然か。どちらにせよ、自分がひとり抱え込もうとしていた自責の念など、あのひと瓶の軟膏であっさりと塗り潰されてしまったのだ。
クロードはままならぬ己の指先を、夜の静寂にそっと掲げる。弓を握ることもできず、薬まみれになった不格好な手を、いつまでも瞬きすら忘れたように見つめていた。
同盟軍が駐留する城館の一角。うららかな陽光が差し込む執務室で、クロードが山積みの報告書と睨み合っている。大きなあくびをひとつしたところで気分が紛れるはずもなく、かすんだ視界でぼんやりと天井を見上げる。
本来ならばヒルダが座っているはずの向かいの席には、ここ数日、当たり前のようにベレトが腰掛けている。
彼女は自領でどうしても手が離せない用があるとのことで、なぜか彼に白羽の矢が立ったらしい。他にも人員はいるだろうと思ったが、彼女の人選はよく分からない。
ふと視線を向けると、男は真剣な顔つきで羊皮紙に向かっている。
剣を握り慣れた指先が、今は不器用に細い羽根筆を握りしめていた。戦場ではあれほど迷いなく剣を振るうのに、その手元はわずかにこわばっている。
彼は地図や簡素な手配書を「読む」ことはできても、自ら文章を「書く」ことはできなかった。
長年戦場ばかりを渡り歩き、捕虜の査問や状況の把握はこなせても、それを報告書として正確に書き起こす術を持たない。聞けば、学校という場所へ通った経験がないのだという。
書類仕事を手伝わせようとしてその事実を知った時、クロードは己の視野の狭さをわずかに恥じた。読み書きができるという恵まれた層の“当たり前”を、無意識のうちに当てはめていたからだ。
気まぐれを装って文字を教え始めたのが数日前のことである。
ベレトに自身の名前の書き方を教え、時折短い言葉を交わす。奇妙な光景が日常になりつつあることが、クロードにはどうしようもない恐れを抱かせる。
相手はただの行きずりの傭兵だ。金と契約で繋がった、いつか必ず切れる縁でしかない。それなのに、なぜこれほどまでに、この男の時間を自分の色で塗り潰したくなるのか、理由が分からない。
誰かとほんとうの意味で心を通わせる術を知らない。近付きたいと願いながらも、いざ距離が縮まると、どう振る舞えばいいか分からなくなる。警戒心が勝り、わざと皮肉めいた物言いをして、自分から相手を遠ざけてしまう。
とめどない思考を断ち切るように、クロードはふたたび手元の報告書へと視線を戻した。しかし、並んだ文字をいくら目で追っても、内容は少しも頭に入ってこない。
不意に、向かいの席から注がれる気配に気づき、顔を上げる。
そこには、いつの間にか文字の練習の手を止め、無言でこちらを見つめているベレトの姿があった。今日に限ったことではない。最近この男は事あるごとに筆を置き、クロードの様子を観察しているのだ。
「……なあ、ベレト」
手元の報告書を脇へ押しやると、クロードは見透かされまいと、かすかに緊張した拳を机の下へと隠す。
「最近、やたらと俺のことを見てるよな。雇い主の働きぶりを査定でもしているつもりか?」
つい、突き放すような言い回しになってしまう。しかし、ベレトは顔色ひとつ変えず、首を振った。
「いや。……君のことが、分からないと考えていた」
「そりゃあ、同盟の長としての俺はそう簡単には分からないだろうさ。腹の内を隠すのも仕事のうちだからな」
「……いや、君そのものが、だ」
淡々とした声が、陽だまりの落ちる執務室に響く。
感情の読めない双眸が、射抜くようにクロードを捉えていた。
「警戒心が強いはずなのに、全軍の命綱である殿を新参の自分たちにあっさりと任せる。不利な状況でもただ退くことはせず、自ら前に出て無茶な真似をする」
ベレトがゆっくりと立ち上がる。
「……どうしてそこまで無茶をするのか。呆れると同時に、その理由を知りたいと思っているんだ」
ただ相手を出し抜くための策ではない。もっと根本的な、クロードという人間の根底にある原動力。それを知ろうとする、ひたむきな問いかけだった。
クロードは小さく息を呑む。
かつて感情を持たぬ傭兵として畏怖され、孤立していたこの男に、どこか近しいものを感じていた。素性を隠し、誰にも心を許さずに生きてきた自分と、形は違えど同じように世界から浮き上がっている存在。
だからこそ、惹かれた。
心の奥底でずっと求め続けていた、偏見も隔たりもない広い世界。何のしがらみもなく、背中を無防備に見せられる存在。目の前にいるこの男になら、自分の途方もない夢を打ち明け、もう一歩だけ深く踏み込めるのではないか。名状しがたい衝動が、幾度も喉元までせり上がってきている。
だが、その先への進み方が分からない。
打算も駆け引きも抜きにして、ただひとりの人間としてどう歩み寄ればいいのか、その正解を知らない。誰かを策なしに信じる術を持たない己には、この踏み出しかけた足の置き場がなかった。
もしも不用意に距離を詰め、真の望みまで打ち明けて一歩を踏み出してしまえば最後、きっともう後戻りはできない。この純粋でまっすぐな男に、どうしようもなく肩入れしてしまう。いつか切れるはずの縁を、自分の手で永遠に縛り付けてしまう。
いざという時、誰も背負わずひとりで飛び立つための身軽さを、自ら捨て去るのが怖かった。
かといって、この男を手放すことなど、今となっては微塵も考えられない。
同盟軍の貴重な戦力として何が何でも手元に置いておきたいと執着しながら、これ以上個人的に踏み込むこともできず、ただ薄氷の上で足踏みをしている。どう転んでも息の詰まるような、完全な八方塞がりだった。
「……俺が無茶をする理由、ね。案外、ただの負けず嫌いなだけかもしれないぜ」
行き場のない感情を無理やりねじ伏せ、クロードはいつものように、飄々とした笑みの裏に本心を隠した。歩み寄り方が分からないからこそ、わざと相手を遠ざけるための、見え透いた嘘だ。
しかし、ベレトはぐっと押し黙ったまま、逃げることを許さないようにクロードを見つめ続けている。
「君の根底にあるものを知れば、その予測のつかない行動も少しは理解できる気がするんだが……教えてはくれないだろうか」
「そいつは無理な相談だ。俺にもいろいろと秘密があってね」
拒絶の意を込めて肩をすくめてみせたクロードに対し、ベレトはあからさまに不満そうな顔つきになる。あらためて、自分の不器用さが嫌になった。またこうして、せっかく歩み寄ろうとしてくれた相手を突き放してしまった。
普通なら、ここで愛想を尽かされて終わるだろう。だが、目の前の男はクロードがどれほど見え透いた嘘や皮肉で壁を作ろうと、傷付いたそぶりすら見せない。不服そうに押し黙ったかと思えば、堪える様子もなく平然と、次の小言や疑問をぶつけてくるのだ。
突き放しても、決して離れてはいかない。彼が無遠慮に踏み込んでくるたび、腹が立つどころか、どこかで深く息を吐き出している自分がいる。
クロードの葛藤など露知らず、ベレトは短い逡巡ののち、口を開いた。
「……君がそうやって教えてくれないから、自分でどうにか答えを探そうとして、つい目で追ってしまう」
「……」
「自分はどうも、君から目が離せないでいるらしい」
しんと、部屋の空気が止まった。
張り付いていた笑みが剥がれ落ち、クロードは言葉を失う。
相手を知ろうとする純粋な探求心が行き着いた先が、「目が離せない」というあまりにも無防備で、誤解を招きかねない言葉だ。そこには駆け引きも、飾ったところも何ひとつない。ただ己の内側に芽生えた関心を、文字を書くよりよほど淀みなく、ありのままにぶつけてきただけである。
「よくそんなこと、真顔で言えるよな」
ようやく絞り出した声は、かすかに震えを帯びている。
皮肉で躱そうとする思考より先に、頑丈に築き上げたはずの壁が足元から崩れ落ちてゆくのを感じる。傷付かないよう歩み寄ることを諦め、八方塞がりのまま固く閉ざしたはずの扉を、この男は理屈の通らないひと言で、外側からあっさりと打ち壊してくる。
クロードは堪えきれずに片手で額を覆い、大きく天を仰ぐ。そうでもしなければ、自分でも制御しきれない動揺を曝け出してしまうからだ。
「……何か、おかしなことを言ったか?」
心底不思議そうに首を傾げるベレトに、クロードは深く、大きなため息を吐き出す。
歩み寄り方が分からないと足踏みし、そばから遠ざけようとした自分がばかみたいだ。こちらがどれだけ境界線を引いて逃げ回ろうと、この男はこうして、理解できないと言いながら真正面から踏み込んでくるに決まっている。
「……いや。俺もあんたのことがちっとも分からなくて、頭が痛くなってきたところだ」
額を押さえたまま、恨みがましく睥睨する。しかし、その声にいつものような飄々とした余裕はなく、ただ年相応の青い狼狽だけが、どうしようもなく滲み出していた。