カルみと+刑事探索者宿舎時空
#tko宅ワンドロワンライ お題:うさぎ
シナリオネタバレなし
@popo_trpg_ss
神無三十一がうさぎになった。
寂しくて死に掛けている比喩ではない。
そんな通信を深夜に受けた時は、あちらの世界はエイプリルフールなのだろうと眠り直すところだった。
半信半疑で宿舎に辿り着いた縞斑だったが、中から聞こえる大騒ぎに、どうやら嘘ではないらしいと察したのである。
「はいはーい、神無ちゃん回収に参りました〜」
言いながら扉を開けて中に声を掛けると、廊下から玄関に向かって頭に耳を生やした神無が転がってきた。
おぉと動揺する縞斑に向けて、リビングから顔を出したアキラと帰代が声を上げる。
「三十一!ストップ!!」
「縞斑すぐに扉閉めろ!神無が逃げるぞ!!」
慌てた二人にそう言われた縞斑は、咄嗟に玄関扉を後ろ手に閉めて腰を落とした。
まもなく玄関扉へ激突しようとしていた彼は、縞斑が広げた両腕の中にすぽりと収まる。
「捕まえた、と」
「ナイスだ狩魔!悪いけどそっちは頼む!」
サムズアップして縞斑を労ったアキラは、すぐにリビングへ引き返すと尚も騒がしい応酬に飛び込んでいく。
その間も腕の中でぷるぷると震えている彼をまじまじと見下ろした縞斑は、それが垂れ耳を生やした神無三十一であることに気がついた。
「神無ちゃん……だよね?」
「……あぁ。意味は分からんと思うがその通りだ」
痛む頭を押さえた帰代は、過去の世界に彼を預かった身としてさすがに罪悪感が凄まじいのか、珍しく毛嫌いしている縞斑に対して丁寧に事情を説明する。
「先日知り合いの頭がおかしい理科教師に会ったときに、学校で焼いたものだと言ってクッキーを持たされたんだ」
「もうなんか見えたな」
「そんな得体の知れないものは要らないと俺は断ったが、どうやらアイツは懲りずに付き添いで来てた他の刑事たちにも勧めたらしい」
「…………それで食べちゃったお人よしの子供たちが……」
察した様子の縞斑がちらりとリビングに視線を向ければ、中から慌てた刑事たちの声が再び届いた。
「鈴風ぇ!跳ねるな!蹴るなって!」
「うさぎの発情期って年中らしいよねぇ〜」
「はいタルタル、マキマキのこと連れてかなーい」
「よーしよしよし巻ちゃん、もう怖くないよー」
「むぎゅ」
「わー!!矢先さんだめです!優しくしないと糸冬さん潰れちゃいますよ!!」
大騒ぎから察するに、渡されたクッキーを疑いなく食べてしまった刑事は神無だけではないのだろう。
見ずとも分かる大惨事を察した縞斑は、不安げに自分を見上げる神無の頭を撫でながら乾いた笑いをこぼした。
「監督不行届だと責めたいところだけど、知らない人から貰ったものを食べちゃいけませんという教育を怠った俺の落ち度でもあるなぁ……」
「いや…………アイツが他の純粋な奴らに手を出すことまで予想できなかった俺のミスだ」
「はやくそいつと縁切りなよ」
「切っても何処かしらで顔合わせるんだよ……!」
すでに反省しているらしい帰代をこれ以上突くつもりはない縞斑は、大人しく目を閉じて耳を撫でられている神無を見下ろす。
「治るんだよね?これ」
「24時間経てば治るらしいが、あまりにも場の収集が付かなすぎて相棒や知り合いを呼び集めてるところなんだ」
「なるほどなぁ…………」
てっきり怪異由来の騒動だと考えていたが、まさか人由来だったとは。本当に恐ろしいのは生きた人間なのかも知れないと笑った縞斑は、神無を抱き上げると靴を脱いで宿舎に上がった。
「神無ちゃんの部屋にいるから、何か分かったら呼んで」
「あぁ。……意識は八割がうさぎ寄りだから、それだけ念頭に入れておいてやってくれ」
「はいはい。引き渡し頑張ってね」
臆病な性格が全面的に出ているらしい神無は、おそらくリビングでは落ち着かずパニックに陥ってしまうことだろう。
そう考えた縞斑は、彼が元に戻るまで自室に隔離してゆっくり過ごさせることにしたのだ。
帰代もそれが一番神無のためだと分かっているのか、縞斑と神無を二人きりにすることに対する不満を飲み込んで送り出す。
「さてと……ずいぶん可愛い姿にされちゃったねぇ」
階段を上って神無にあてがわれた私室を目指す縞斑は、腕の中できょときょとと辺りを見回している神無に話しかけてみた。
言葉を聞いて顔を上げた神無は安心したように笑うと、目を細めて愛おしげにすりすりと頬擦りをする。
「なぁに?いつもより甘えんぼじゃない」
鼻先を触れ合わせる可愛らしいキスをする神無を宥めた縞斑はふと、部屋の扉を開ける直前に手を止めた。
頭の中にリフレインするのは、リビングから聞こえたとある淫乱刑事の言葉だ。
「……発情期は年中か」
魔が差す、を絵に描いたようなぼやきだが、意識の八割がうさぎになっている神無は分からない様子できょとんと首を傾げる。
そんな無垢な瞳に気がついた縞斑は、ふと我に返って軽く頭を振ると神無のスキンシップに応じて軽いキスを返した。
「ごめんごめん、さすがに大人気ないね」
「?」
「そもそもそれって今に限らないし」
縞斑からのキスが嬉しかったらしい神無は目を細めて笑うと、彼の不穏な呟きも理解せずに胸に擦り寄る。
「ほら、部屋の中で俺とお昼寝でもしよっか」
「きゅ!」
そんな彼の可愛らしい姿を自分以外が見ることのないように、縞斑はせめてと部屋の扉に鍵をかけることにしたのだった。
終
寝たら(大義)直った