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幸郎とお互いに独身だったら結婚する約束をする話

全体公開 HQ 3 884文字
2026-03-28 09:17:56

何でも許せる方向け

Posted by @tirichann

「三十歳でお互い独身だったら結婚しよう」
 その約束をしたのは小学生の頃だっただろうか。とにかく私と幸郎は、それほどに仲が良かったということだ。当時は三十歳を迎える時のことなんて想像できないし、男女交際のリアルも知らない。メッセージの頻度や些細な言い方で別れてしまうことも、信じていた人に裏切られる悲しみも、何も知らなかった。
 三十になった私は、独身でいた。正確には婚約破棄をされた。相手がそんなことをする人だと知った今では別れて清々しいような、でも寂しいような気持ちだ。恋愛に懲りた気もするし、やはり独身というのは肩身が狭いような気もする。そこで思い出したのが、小学生の時の約束だった。三十でお互い独身だったら結婚しよう。幸郎がそんな話を信じていたのかと笑うならそれで終わりでいいし、何かが芽生えるなら期待してみたかった。私は懐かしい連絡先をタップする。
「どうしたの? 久しぶりだね」
 幸郎は数分後に返信をくれた。どうやら今は休みのようだ。今は何をしているのかとか、そういう前置きはなしに私は本題に入った。
「三十までに独身だったら結婚する約束覚えてる?」
 送ってから、心臓の鼓動がうるさく鳴った。幼馴染だった幸郎に、初めてどきどきしたかもしれない。
「ちょっと待ってて」
 そのメッセージを、私は不可解に思った。通話ではなくチャットなのに、どうしてわざわざ送るのだろう。一応その通りに待つこと一日、幸郎からチャットが来た。
「大丈夫。俺も独身だから、結婚しよ」
 私は今まで襲われていた緊張感から一気に解放され、妙に間延びした気持ちになった。こんな簡単に、結婚が決まってしまった。しかも相手は幸郎だ。もっと早くに連絡していたら、幸郎とスムーズに結婚できていたのかもしれない。でもまあ、今がいいタイミングだったのだろう。
 早速今度会う約束をして浮かれていた私は、幸郎が実は結婚していて、私の約束のために離婚したことなど知らなかったのだ。幸郎は独身ではなくバツイチだった。それを悟らせないまま、幸郎は私と結婚する。私のためなら離婚すら厭わない愛で、私を包む。


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