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影山にコミュニケーション能力をつける

全体公開 HQ 697文字
2026-04-01 17:33:44
Posted by @tirichann

「俺と会話してくれませんか」
 高校卒業以来数度しか会っていない相手にそう言われたら誰だって警戒するだろう。しかし目の前の影山くんは至って真面目な調子で、ふざけているようには見えない。彼の性格からしても、下手なナンパではないだろう。そもそも会話とは、許可を得て始めるものだろうか。言葉の理由を聞き出すのにすらコミュニケーション能力が問われる。
「何で、そう思ったの?」
「今度新しいイタリア語を勉強することになって、それで言語以前にコミュニケーション能力が足りないって言われて」
 影山くんの話をまとめるとこうだ。影山くんは単語や文法、もっと言えば外国語を学ぶ以前にコミュニケーション能力がないらしい。まずは母国語で、という話なのだろう。それにしても会話の練習をするならチームメイトや付き合いの長い友達など、他に相手がいたはずだ。
「何で私?」
「苗字さんを相手にきちんと話せたら、誰とでも話せる気がするので」
 私は呆然とした。影山くんにとって、私はラスボスということなのだろう。私はそれほど話しづらいのだろうか。混乱する頭の奥で、高校時代の噂を思い出した。影山くんが中学時代、人間関係でかなりきつく揉めていたという噂だ。彼には人間関係が下手な自覚があり、私は張り詰めた雰囲気だったという当時のチームメイト並みに悪く思われているのだろう。私の方は影山くんを上京仲間と思っていたから少し悲しい。でも、これで仲良くなれたらいいことなのだろう。
「いいよ」
 てっきり影山くんに嫌われていると思っていた私は、影山くんが私を好いているからラスボス扱いしているなどとは想像もしていなかった。


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