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デュースにフラれているはずの話

全体公開 ツイステ 1174文字
2026-04-09 07:47:05
Posted by @tirichann

「別れる前提では付き合いたくない」
 私はひゅっと息を呑んだ。放課後の教室で、デュースとエースは中に残っていた。何を話していたのかはわからない。だけど私の失恋が確定したのは本当だ。私は異世界人であり、いつ元の世界に戻るかわからない。デュースの言う「別れる前提」そのものである。
 私とデュースは、付き合えないのだ。たとえ一時的なものだとしても。仮に両思いだとしても。
 考えていたら涙が出てきて、教室を去りながら一人で泣いた。足音は気にする余裕がなかった。好奇の視線がいくつか刺さって、ここは治安が悪い学校なのだったと実感した。追いかけないでいいのに、むしろ追いかけてほしくないのに、デュースは私の異変に気付く。教室で話を聞かれたことには気付かないのに、どうして私が泣いていることには気付くのだろう。どうして私のピンチにやってくるのだろう。ますます好きになってしまう。
「どうしたんだ、監督生。泣いたりなんかして」
 デュースは私を人気のない廊下に連れて行き、ハンカチを差し出した。どうせデュースの気持ちは貰えないのだ。私は遠慮なくハンカチで涙を拭いた。告白したところで結果は変わらないと思ったら、好きだと言うのも怖くなかった。
「デュースが、別れる前提では付き合いたくないって言ってるの聞いて」
 デュースが僅かにたじろぐ。嘘か聞き間違いであってほしいと思っていたが、そうではないらしい。
「異世界から来た私は、一生付き合えないんだって」
 言っていたらまた涙が出てきた。私は激しくしゃくり上げながらデュースを見た。自分を好きな女の子が、自分のせいで泣いていて、さぞかし困っていることだろう。デュースの慌てた顔が目に浮かぶようだ。
 だが、デュースが浮かべていたのは照れと恍惚の表情だった。私は目を疑った。デュースのせいで、一人の女の子が失恋しているのだ。泣いてもいるのだ。その場面で浮かべるべき表情ではないだろう。
「すまない、嬉しくて。今まで別れる前提で付き合いたくないって言ったら、結婚前提は重いとしか言われたことがなかったんだ。だからそこまで本気で好きになってもらえたのが、初めてだったんだ」
「は……
 私は間抜けな声を漏らす。私の好意の本気度合いは、デュースに伝わったらしい。デュースと付き合えなくてこんなにも悲しく、デュースと同じ世界に生まれたら付き合っていたいという気持ちが。
「ごめん」
 デュースは視線を伏せて手で口元を隠した。私はそれを呆けて見ていた。到底失恋の場面のやりとりではない。私が異世界人であることも、だからデュースと付き合えないことも、まったく変わらない。だけど、私達の気持ちはこんなにも通じ合っている。私達は同じ度合いの「好き」を共有している。ある意味付き合うよりも凄いことを、やっているのかもしれなかった。


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