🍥🎃🐸☀️☕️(カルみと前提)
シナリオネタバレ(🎃のみ匂わせあり)
刑事探索者宿舎時空
@popo_trpg_ss
「だらだら先輩とぉ……付き合うことになってぇ……」
顔を赤らめてもじもじと恥ずかしそうに打ち明けた後輩の言葉に、帰代はキッチンで洗っていた皿を割り砕いた。
そんな彼の動揺と怒りの音を誤魔化すように、その場に居た聖心とアキラ・アカツキ、甘美至は拍手を贈る。
「おめでとう三十一ちゃーん!」
「ずっと悩んでたもんなぁ」
「へぇ〜!三十一くん彼氏できたんだぁ」
「えへへ、おかげさまで……」
皿の始末をして席に着く帰代の顔は浮かないが、そんな彼を宥めるようにアキラと聖が背中を叩いた。
一方至は、そんな先輩刑事たちの反応を見ると不思議そうに首を捻る。
「だらだら先輩だっけ?まだその人会ったことないんだけど、どんな人なの?」
入居してまだ日の浅い至は、時折神無と共にこの宿舎へ訪れているだらだら先輩こと縞斑狩魔との面識はない。
あちらは一方的にこちらのことを認識して警戒しているようだが、わざわざ恋人がいる同僚に手を出して修羅場を作るほど馬鹿ではないつもりだ。
とはいえ可愛い最年少の後輩がお熱の相手は一体どんな人なのかと至が尋ねてみると、帰代と神無から同時に声が上がった。
「だらしない人間のクズだ」
「めちゃくちゃ俺に甘い先輩だよ〜」
「……うん?なんか今別の人の紹介した?」
真逆の性格が真っ先に提供されて不思議そうな表情を浮かべる至の向かいで、聖とアキラは苦笑いを浮かべてフォローに入る。
「うーん、主観と客観の違いというか……」
「対三十一と変との違いというか、なぁ?」
「あ、じゃあどっちも正解なんだねー」
現状の縞斑という男の情報は、恋人にゲロ甘のクズということのみだ。
元刑事という立場に対して帰代が不満を抱いているという話は小耳に挟んでいたが、どうやらその立ち振る舞いも由来しているらしい。
そんな風にひとり納得する至のとなりで、神無は能天気に頬を赤らめて惚気話を続けている。
「確かにいじわるなとこもあるけど、なんだかんだ俺に甘いんだよね〜。だって先輩たぶん、俺が思ってる以上に俺のこと好きだもん」
「なになにラブラブじゃんかわい〜!」
他人からの評価に対して臆病なきらいのある神無がここまで断言するほど、縞斑という男は神無のことを大切に思っているらしい。
これに関しては他の刑事たちも否定はないようで、若干一名を除いて微笑ましげな表情で神無を見守っている。
職業柄命が危険にさらされてばかりの自分たちだが、春が来て喜んでいる後輩にそんな忠告をするのも野暮な話だ。
そう考えて例に漏れず微笑ましい笑顔で神無を見守っていた至は、あ、と思いついた様子で声を上げる。
「三十一くんってさ、その人とどこまで進ん、ぶぇッ!」
穏やかで甘い空気だったリビングに、鋭い平手打ちの音が響いて至がテーブルに沈んだ。
身を乗り出して至の頬を引っ叩いた帰代は細く長いため息を吐くと、突っ伏したまま痛みに悶絶している至の頭を鷲掴む。
「お前はまたそういう下世話なことを……」
「痛い痛い痛い!頭取れちゃう!」
「そんな煩悩だらけの頭なんて取れちまえ!」
「ちょ、ちょっと帰代先輩!甘美先輩痛そうだよ!?」
「どうどう落ち着け変、気持ちは分かるがクールになれ」
「そうそう、大丈夫だよ変ちゃん。至ちゃんが聞かなかったらたぶん俺が聞い、でッ!」
「聖先輩ーーー!!」
帰代の風紀の乱れ矯正パンチが腹に命中して撃沈する聖によってますます混沌としたリビングで、至は痛む頭を抱えながら抗議の声を上げた。
「ほらほらぁ!みんなだって気になるんじゃーん!」
「俺は気にならない!そもそもこんなの、プライベートの侵害だろうが!」
「まぁ確かに、気にならないと言ったら俺も嘘になるけど……答える答えないの最終判断は三十一に委ねていいんじゃないか?」
殴られた聖を心配していた神無は、アキラの言葉によって自分へと視線が集まったことに気がついて首を傾げる。
「進む?」
「そうそう!その人とどこまでシたのぉ?AやBはともかく、もうCまでヤった?!」
「え……えっと、そのえーびーしーってのはよく分かんないけど……先輩とどれくらいいちゃいちゃしたかってこと?」
至がぶんぶんと激しく首を縦に振り、その後ろで帰代が耳を塞ぐ。
可愛い後輩の赤裸々な恋愛事情を聞きたくないというように目を逸らす難儀な帰代の一方、聖とアキラも興味が勝って言葉に悩む神無へ意識を向けた。
しばらく顔を赤らめて恥ずかしそうに視線を泳がせていた神無は、やがてリビングの外に誰も人がいないことを確かめるとおずおずとした様子で口を開く。
「この前ね、俺の家で……」
「三十一の……?」
「家で……?」
「……シたの?」
至の言葉に、神無が照れくさそうに笑ってこくりと頷いた。
その瞬間、聖とアキラの背後で盛大な音を立てて帰代が膝から崩れ落ちる。
さながら娘が悪い男に恋をしてしまったお父さんのように絶望する帰代の元へ聖が介抱に向かえば、その背で神無のきゃっと照れた声が続いた。
「初めてキスした!」
「き、」
「ほ?」
「……キス、と?」
「あっそうそう!あと手も繋いだ!!」
室内に沈黙が訪れる。
言っちゃったー!とでも言うように赤い顔で恥じらっている神無だが、そんな彼を前に四人は目が点になっていた。
「……なんか浄化されて消えそうだなぁ」
「成人男性がキスでここまで照れることある?」
「ジャパンにはそういう隠語がありました〜……とかじゃねぇよな?」
遠い目をする聖と帰代、珍しく大困惑して首を捻る至のそばで、アキラはきょとんとした様子の神無の頭を撫でる。
色々と事情があって恋愛経験がほとんどないと話していた神無にとって、縞斑は初めてできた恋人なのだろう。
伴って壊滅的に乏しい恋愛知識については心配していたのだが、今は不安を通り越して縞斑のことが不憫になる始末だ。
「で、でもさぁ〜先輩も大人なんだし、もっと先に進みたいんじゃないかなぁ〜?」
もう少し掘れば面白い話が聞けるかもしれないと食い下がった至がそう促すと、アキラに大人しく頭を撫でられていた神無は再び恥じらうように顔を赤らめる。
「……べろちゅーとか?」
「うそぉ……天然記念物?」
「箱入り娘だったんだろうねぇ。そりゃ変ママも気が気じゃないわけだ」
「…………うるせぇ」
その男はやめなさいと喚きたい気持ちでいっぱいの帰代は、かと言って自分の言葉を大人しく神無が聞き入れるとも思えず口を噤んだ。
複雑な親心を抱える帰代の肩を聖が叩いて宥め、至が純真無垢な後輩を撫で回しながら頬擦りする。
「なんか変くんの気持ち分かるかも〜。この純情は守りたくなっちゃうな〜」
「わ、なになに先輩?」
代わる代わる先輩たちに頭を撫でられて、まんざらでもない様子の神無はくすぐったそうに笑った。
守りたいこの笑顔と純潔。そんな言葉が目配せをした三人の胸中に浮かぶ一方、神無のすべすべとした頬に擦り寄っていた至の手がそろりと彼の尻に伸びる。
「よしよし三十一くん、俺ちゃんが手取り足取り腰取りでABCがなんたるかを教えてあげようねぇ」
「へ?」
そこからの三人の動きは迅速であった。
流れるように帰代が至の腕を捻り上げ、聖が至と神無を引き離して、アキラが神無を保護する。
いつの間にかアキラの腕の中に収まった神無は、自身の貞操が狙われていたことも知らずに無垢な笑顔を浮かべていた。
「アキラ先輩、ABCってなに?」
「んー?脳のリソースがもったいないから三十一は覚えなくていいよ」
「なにそれ気になる!だらだら先輩に聞いたら分かるかな」
「狩魔の世代は……死語だから分かんねぇと思うぞ」
「めちゃくちゃ古い言葉ってこと?」
「頷くのに抵抗はあるけどそうかにゃ〜」
上手く誤魔化してこの場を切り抜けようとするアキラだが、未知への興味が拭えない神無はこのまま放っておくと他の刑事に尋ねてしまいそうな勢いである。
至を拘束している帰代と聖には助け舟を求められない。そう頭を回したアキラは、慌てて神無の背中をキッチンの方へと軽く押した。
「それより三十一、そろそろゼリーが完成する頃なんじゃないか?夕方に作ってたろ?」
「あ!そうだった!ちょっと見てくる!」
冷蔵庫で冷えているデザートに興味が移った神無は、先輩たちへのカミングアウトも終えてすっきりした様子で歩いていく。
その背を見送った帰代は目の前で悪びれなく笑う至の首根っこを掴むと、廊下へ繋がる扉の前へ彼を引きずって行った。
「粗大ゴミ回収が明日で良かったな」
「えぇ!?なんで変くん!俺ちゃん全然まだまだ若いし早すぎず遅すぎず粗チンには程遠いイチモツ持ってますけど!」
「うるせぇ!守るって言った舌の根も乾かぬうちに手ぇ出そうとしやがって!!」
「やだなぁ軽い冗談なのにぃ」
遠ざかる怒鳴り声を見送ったアキラと聖は、静かに顔を見合わせる。
可愛い後輩の純潔を、恋人に捧げられるその時までどうにか守り抜かなければならない。そう頷きあった彼らは、ぱたぱたとご機嫌でキッチンから戻って来る神無を迎え入れる姿勢に入るのであった。
終