@tirichann
※シン視点
「俺、実はエスパーなんです」
名前さんにそう伝える時、俺は結構な勇気が必要だった。名前さんは坂本さんと家族ぐるみの付き合いで、坂本さんも名前さんとの仲を大切にしている。俺にとっても、大事な友人だ。エスパーと言われていい気はしないだろうし、仮に「全然気にしないよ」と言われても俺には本音がわかってしまう。でも名前さんを騙すような真似はしたくなかった。たとえ泣かれても、軽蔑されても、俺は名前さんに正直でいたい。
それくらい気負っていたからか、名前さんのあっさりとした対応に俺は随分拍子抜けした。
「あ、そうなんだ。最近多いよね、エスパーの人」
「多い?」
俺がエスパーになったきっかけはラボで薬を飲んだことだ。あの薬が世に出回っているとも考えづらいし、よくあるような発明でもないと思う。俺が怪訝にしていることに気付いたのか、名前さんは言葉を足した。心の声も同じことを言っていて、俺を遠巻きにする風ではない。
「私に起きたことを知ってる人って、他にもいるから。南雲さんとか」
南雲。彼はエスパーなのだろうか。エスパーだとしてもおかしくはないと思ってしまう底の知れなさはあるが、俺が考えていることを毎度ぴたりと当てられるわけではない。何より、同類の匂いはしない。南雲はエスパーではないのだろう。では何故名前さんに起きたことを知っているかと言えば、南雲が個人的に手を回しているからとしか思えない。盗聴器、見張り、考えられる方法は色々ある。一番現実的なのは盗聴器だろうか。名前さんはそれに気付かずに、平和に日々を過ごしているのだ。なんとも同情したくなったが、南雲のおかげで俺が名前さんから警戒されなくて済んでいると思うと悪いことだとも言い切れない。とりあえずこの会話も聞かれているだろうから、曖昧に笑うのみにしておく俺は弱い。