@tirichann
風邪をこじらせてしまった。生憎私は一人暮らしで、頼れそうなのは恋人の神威くらいしかいない。今は地球にいるようだし、暴力と暴食しか頭になくてもデリバリーを頼むくらいはできるだろう。私を構い倒す神威のことだから、心配でずっとベッドのそばにいるなんてこともあるかもしれない。
「今、風邪こじらせてて」
「悪いけど何か買ってきてくれないかな」
私は続けてメッセージを送った。既読はすぐについたので、神威はすぐに持ってきてくれるだろう。安心したのか、眠気がやってきて私は目を閉じた。次に目が覚めた時、私の体に影を落とす存在が目の前にあった。それが神威だと気付いたのは服装を見たからだ。今の神威は、怒っているような不安がっているような表情をしている。どちらなのかはわからないが、今まで私に向けてきたような表情ではないのは確かだ。神威はどうして、急に変になってしまったのだろう。
怒りを通り越して凪いでいるような表情の神威は、机の上を指差した。
「そこ、ゼリーと薬あるから。買ってきた」
「あ、うん。ありがとう」
なんというか、想像と違う。もっと大袈裟に心配したり、風邪だというのにしつこく構いまくるものだと思っていた。神威は苦い表情をして部屋を出ていく。実はそこまで好かれていなかったのだろうか、と思っていた私は神威のトラウマを知らない。大切な人がベッドで弱っていく姿を見ていられないことも知らない。本当は思っていたよりずっと愛されていたなんて、私は知らない。