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【よだつか】嘘のままで終わらせなくていいかもね

全体公開 よだつか 5 4744文字
2026-04-17 21:58:12

言い寄られて困ってるところを恋人のふりできり抜ける🦅☀。これは🦅が言い寄られてるパターン。☀が、の方も書きたい欲はある。
※🦅が🐺のコーチに正式復帰済み時空
※名前のない🦅に惚れてるモブが出ます

Posted by @kitunebana






「夜鷹純さん!お会いできて光栄です!!」
……
僕の前に飛び出すように出てきたけど、誰。見たことない……いや、あるかもしれない。僕が現役だったときクラスが違うけど、選手だったような?……仮にそうだとして、ハッキリとは思い出せないってことは、僕の興味を惹く選手じゃなかったことだ。普通なら全く憶えていないような人間。それでも微かに記憶に引っかかっていたのは、僕を見る視線に憶えがあったから。良い意味じゃないよ。粘着質な執着。そういった類の欲が籠ったものだった。身の危険に対しての防衛本能みたいなものかな。
「俺、ずっと夜鷹純あなたのファンで!早すぎる引退が信じられなくて!!」
……うるさいな。僕の前で喚く人間は皆、同じことしか言えないの?僕のファンを自評するくせに、過去の僕だけを見てる。それも僕の中身感情なんてどうでもよくて、自分の中の理想の夜鷹純幻影だけを。現実を見れない人間に興味はない。厭きたよ。
「貴方が選手じゃなくコーチとしてフィギュアスケートの世界に戻ってきたことは驚きましたが、再び貴方をこの目で見られただけで嬉しいです!銀盤のオムファタルと謳われた当時のまま、美しい貴方を!」
……何が言いたいのかな。結局僕の見た目にしか興味無いってこと?彼が首から下げている大会用IDカードにはコーチと書いてある。男子か女子のシングルか、アイスダンスかペアか。教え子のクラスがノービスかジュニアかシニアか。そこまではわからないけど、僕の顔が見れただけで嬉しいっていう言葉の意味が理解できないな。僕は普通というものがよくわからないけど、こういう場合、僕が指導している選手がどういう結果を出すかとか、そういうことを言うものじゃないの。
……
不快だな。早くどこかに行ってくれればいい。……ああ、僕が移動すればいいのか。他人の都合で自分の行動を変えるのは気分のいいものじゃないけど、こういった人間に関わってる方が嫌だ。そう思って足を動かそうとしたんだけど。
……離して」
僕の許可なく僕に触れるのは、どういうつもり。服の上からだけど掴まれた腕が気持ち悪い。嫌悪感を隠さずに睨みつけたのに、嬉しそうなところが余計に気持ち悪いな。
「すみません!でもこんな機会二度と無いかもしれなくて!!俺、貴方のことが」
かも、じゃなくて本当に無いよ。二度もあってたまるか。後に続く言葉はどうせ「夜鷹純あなたのことが好きです!」とか、そういうのでしょ。同性とかそういうのは別にどうでもいい。だけど感情の押しつけは嫌い。こうやって動けないようにして聞かせるのに相応しい言葉じゃないよね。
振り解こうと腕に力を入れたけど、案外力が強いな。怪我をさせてもなら無理やり振り解けるとは思うけど、今の僕には光のコーチという立場がある。いくら相手に非があるとしても暴力沙汰は避けたい。どうしようか。そんなことを考えたときだ。背中に熱を感じたのは。
「あのっ!!」
この声は知ってる。僕に無謀な挑戦を告げた声。僕が足を止めるような、記憶に残る演技をした子。明浦路司くん。
「こっ、この人俺の恋人なんですけど!これ以上どういう用があるのか、お聞きしてもいいですかっ!!」
僕の肩をグッと抱き寄せた司くんが、もう片方の手で僕の腕を掴んだままの男の腕を掴んだ。背中から抱え込まれた形になって、僕の身体は司くんの腕の中にすっぽりと収まってしまってる。……でも不思議と嫌悪感はないな。司くんの体温は嫌じゃない。それにしても意外と度胸がある。僕と司くんの間に特別な関係は存在しないのに。つまり僕たちは恋人じゃない。
後ろ斜め上にある司くんの顔は緊張が見える。でもそれは噓がばれないか、という感じじゃなくて。多分男には恋人に手を出されそうになったことに焦り、必死に牽制しているように見えてるんだろう。表情は上手く作れてる。選手期間は短かったとはいえ司くんはアイスダンス選手だった。それもオリンピアンである高峰先生の教え子だ。表情管理も叩き込まれているんだろうな。……でも悪くない。
「君は確か……あき」
「明浦路司です!」
……まあ憶え難い苗字だよね。訂正して名乗るのが癖になってるみたいなこと言ってたっけ。結束いのりあの子どもが表彰台の常連になって、そのコーチである司くんも有名になりつつある。だから余程じゃなければ司くんを知らないってことはないと思うし、間違えてたけど名前を知ってたみたいだから全く知らないわけじゃないんだろう。でも疑ってるみたいだ。それは、そうだろうな。僕と司くんの間に何か繋がりがあるって思う方が変だってことくらい、僕もわかる。だって僕の選手期間と司くんの選手期間は全然被ってないし、僕は男子シングルで司くんはアイスダンス。どうにか接点を見つけようとしてもコーチが高峰先生だったことくらいだろう。僕は光のコーチに、今回正式に就任するまで一切表舞台に立たなかった。SNSもやってない。だから知るはずがない。だからこそ、そこを逆手に取ることもできる。
……秘密にしたいんじゃなかったの」
小さいけど、確実に聞こえる声で僕は司くんを上目遣いに見ながら言った。驚いた顔は素だろうな。でも駄目だよ。僕を恋人と言った嘘を最初に言ったのは司くんの方なんだから。ほら、乗っておいで。
……そう、ですけど……でも、貴方が言い寄られてるのを見たら我慢できなかったんです。……すみません」
うん。いい子。ちゃんと演技できてる。約束を破って、でも恋人を奪われたくない。そんな感情がちゃんと表情に乗ってる。シュンとしてるのがちょっと可愛いかも。頭に耳が見えそう。ゴールデンレトリバーとか、そういうの。……撫でたいな。撫でようか。今の僕たちは恋人らしいから、いいよね。
「いいよ。別に僕は隠さなくてもいいって思ってたから。司くんは僕の恋人っていう立場が、自分の身に余るって思ってたんだよね。司くんを困らせたいわけじゃなかったから、それでもいいって思ってたけど……こうやって言ってくれたのは嬉しいよ」
スリッと後ろ手に頭を撫でてから頬も撫でる。……思ったより手触りがいいね。でも磨けばもっとよくなるかもしれない。そう思わせる感触だ。
「っ」
あ、真っ赤になった。これは演技?それとも……どっちでもいいか。効果に違いはないだろうし。それに……
「可愛いね」
「~~~っ!?」
人間ってこんなに赤くなるんだ?本当に可愛い子だね。僕、それなりに司くんのこと気に入ってるんだよ。僕に咬みついてくる度胸は面白い。騒々しさはあるけど、僕に真っ向から意見を言う人間は少ないから。自分で滑らないのはどうかと思うけど、司くんのスケートも嫌いじゃない。
……それで?君はいつまで僕の手を掴んでるの」
司くんが掴んだとき、ちょっと力が緩んだけど、男は僕の手を離してない。本当に不快なんだけど。これだけ見せつけたのにまだ足りないのかな。エイヴァは慎一郎くんにいっぱいキスしてたけど、僕もしてみる?司くん相手ならできなくはないと思う。うん、やってみようか。
「へぁっ!?」
頬を撫でていた手で今度は司くんの顎を掴んで角度を調節して、僕は司くんの唇の端ギリギリに唇で触れた。キスはしたけど、唇じゃない。けど司くんは凄い声を出して驚いてる。……そんな反応しちゃ"僕たちは恋人"っていう嘘がバレちゃうよ。演じるやるなら完璧に。そうでしょ?
「見ての通り僕は司くんこの子に夢中なんだけど、まだ何かあるの」
実際には唇にしなかったけど、男には僕が司くんの唇にキスをしたように見えてたはず。僕の可愛い子恋人司くんこの子で、君には全く興味はない。そう示した。ここまで思いっきり眼中にないって態度に表せばどれだけ鈍い人間でも気づくよね。
「っ」
うん、効果はあったみたい。男は顔を真っ赤にして、ブルブルと身体を震わせながら拳を握ってる。これは怒ってる?屈辱的だった?両方かな。でも僕の腕をまだ掴んだままなのは、どうかと思う。諦めが悪い人間ってこと?……本当に面倒だな。
「その男は夜鷹純あなたに相応しくない!!」
「僕に相応しいかどうかは僕が決める。君にその権利は何一つとして無いよ」
どの立場でものを言ってるのかな。
「僕が君を選ぶことはない。消えて」
こういう手合いに言葉を選んでも無駄。遠まわしに伝えたら自分にとって都合の良いように解釈するから、誤解のしようがないくらい徹底的に。そうしないといつまでも付きまとわれる。
……先ほども言いましたが、この人は俺の恋人です。諦めてください」
キスの衝撃から立ち直ったんだ?僕の耳に司くんの頬があたるくらいくっついて、男に宣言するのは悪くないよ。フィギュアスケーターとしては高い身長もこういうときは見栄えが良い。姿勢良く背筋がピンと伸びて、鍛えられた身体の厚みが目立つと気圧される人間は多いだろう。顔立ち自体はどちらかといえば可愛いタイプだと思うけどね。
……失礼しますっ!!」
去り際まで喧しいな。……ちょっと、耳元で盛大に溜め息吐かないで。ああ、でもまだ僕から離れてないのはちょうどいいか。
「夜鷹さ……!?」
「シィ。大きな声出さないで」
身体を反転させて司くんの首に頭を埋める。背中に感じてた時もそうだったけど、この子本当に体温高いな。
……さっきの男、まだ僕たちを見てるから」
「!?」
「このまま僕に腕を回して」
これは本当。少し離れた位置からあの粘ついた視線がまだ僕を見てる。ここで下手な態度を見せたら嘘だってバレちゃうかもしれない。
「しっ、失礼、します」
「うん」
司くんは恐々といった体で僕の背中に腕を回した。凄く遠慮してるのがわかる。
「緊張しすぎ。もっとギュッとしなよ。僕、そんなにやわじゃないけど」
細いって言われることはあるけど、ちゃんと男だよ。むしろ一般的な人間より頑丈だと思う。
「貴方の身体がアスリートとして素晴らし過ぎるバッキバキな筋肉に覆われてることは知ってますけど、それとこれは別というか」
……そういえば服を着てない状態を一度見られてるな。でもスマホの画面越しで、しかも短い時間だったのに憶えてるんだ?へぇ……
「別じゃないよ。君、僕の恋人なんでしょ」
「それが嘘だって貴方が一番知ってるでしょ!」
「うるさいよ。聞こえたらどうするの」
「あ、すみません」
まだ僕から視線を離さないあの男に聞かれたら駄目でしょ。でもここで素直に謝るあたり、素直だよね。それに腕にも力が入ってちゃんとギュッと抱きしめてきた。こういうところが、周りから可愛いがられるポイントなんだろうな。
「一度口に出したことは貫き通せ」
「お、横暴だ……でも夜鷹純っぽいな?」
「そうだよ。僕が夜鷹純だからね」
よく理解わかってるじゃないか。どうもさっきの男、本当にしつこそうだから暫く恋人っていうこの嘘に付き合ってもらわないといけないみたいだからね。アイスダンスで培った演技力、発揮してもらうよ。
……でも解決したからって手放すのはちょっと惜しいかも。そう思うくらい司くんの体温が嫌いじゃないな。そのときは嘘を嘘で終わらせなけれな良いだけだよね。
「頑張ってね司くん」
「え、何を!?」
「いろいろ」
「いろいろぉっ!?」
そう、いろいろだよ。あの男に絡まれて下がっていた気分が上がってきた。こういう風に僕のこと、いろいろと・・・・・楽しませてね司くん。




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