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佐久早にふられたい

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2026-04-29 20:29:54
Posted by @tirichann

 教室でぶつかりそうになって、大げさに仰け反って避けられた時彼はきっと女子が苦手なのだろうと思った。だが彼――佐久早くんは女子に人気だ。本人はあまり嬉しそうではないけれど、学年で一番レベルの高身長、それに全国優勝したバレー部のエースとなれば仕方ない話だ。彼女ができたという話は聞かないから、きっと毎回断っているのだろう。
 その時、私は興味が湧いた。女子が苦手な佐久早くんは、どうやって告白を断るのだろうか。普段の佐久早くんから想像すると、「無理」の一言で終わらせてしまいそうなものである。だが、仮にも自分を好いてくれた相手には「ありがとう。でも悪いけど……」と言うのだろうか。それとも「今は部活に集中したいから」とそれらしい言い訳をするのだろうか。
 気になって仕方ない私は、直接佐久早くんに聞いてみることにした。どうやってふっているのか、と尋ねたらきっと変人だと思われるに違いない。だから私は佐久早くんに告白してみることにした。私と佐久早くんの接点は同じクラスにいるくらいで、話したことも数度なのだからふられるのは確実だろう。
 適当に佐久早くんを呼び出して、誰もいない部屋で向かい合う。佐久早くんはどうしてか落ち着かずにいた。私が発情して押し倒すとでも思っているのだろうか。流石にその時には佐久早くんの方が力で勝てるはずだ。
「今日呼び出した理由なんだけど」
「うん」
 意外と佐久早くんの相槌は優しい。佐久早くんとは、これほどに柔らかい物言いをする人だっただろうか。そんなことを考えている間にも告白の時は近付いており、嘘とはいえ私の緊張が高まる。
「好きです。付き合ってください」
「いいよ」
 私は目を瞬く。佐久早くんはそう言って告白を断っているのだろうか。
「それが断り文句?」
「いや、付き合うってこと」
 佐久早くんは困惑気味に告げた。私がおかしな人間であるのは間違いない。佐久早くんがどう女子をふるのか見たくて告白までするのだから。私は今、ふられなければいけないはずなのだ。
「いや、付き合っちゃダメなんだよ」
「は?」
「だから佐久早くんがどうやって女子をふるのか見たかったの!」
 そのために告白したのか、と軽蔑した顔をするかもしれない。一応貴重な時間を割いてもらっているわけだし、嘘告白に付き合わされた馬鹿馬鹿しさのようなものがあるだろう。佐久早くんは怒るかと思われたが、意外に冷静だった。
「何で俺がどういう風にふるか知りたかったの」
「佐久早くんに興味があったから……?」
 自分で言って、自分で首を傾げる。「ならよくない?」という佐久早くんの言葉によって、私達は何故か付き合うことになった。もし付き合っている最中に誰かに告白されたら、佐久早くんは毎回報告してくれるらしい。私は誰に告白したかよりどうやってふったかを知りたいのだけど、佐久早くんなりの誠意らしいので言うのはやめておいた。


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