リクエストありがとうございました!
「IDW(RID)軸のメガさまと音波さんの話(CPというよりはメガ様に盲信的な音波さん)」になります!
音波→メガ感が強くなりました…
@fao_scherzo
※RID3巻のズタボロメガ様がご帰還されてディセップと合流したくらいの時系列。
不忠の音
彼の為に設計したボディは外装が殆ど残っていなかった。フレームが丸見えになった手足に、ひび割れた装甲。動いている方が奇跡であろう損傷でも、彼の足取りに迷いはない。
「御帰還オ待チシテオリマシタ、メガトロン様」
「ああ、ご苦労」
肩にとめたレーザービークを指先で撫で、目の前に跪くサウンドウェーブにメガトロンは軽く頷いてみせる。どれだけ遠く離れていても彼の存在は感知していたが、やはり目前で彼の無事を確認するとスパークに安堵が広がっていく。
最後に見た彼の姿は、セイバートロン星を破壊する脅威を前にただ一人真向から対抗するあの雄姿。彼が負けるなど思っていなかったが、あの脅威を前に生き延びたことは驚嘆に値する。
「マズハリペアヲ。新シイボディモ準備シテオリマス」
「用意がいいな。このボディも名残惜しいが……仕方あるまい」
隠れ家の奥に秘密裡に用意していたオペ室へ案内すれば、彼は迷うことなくリチャージスラブに横になる。その隣には、彼の新しいボディが寝かされていた。
「これの設計は?」
「大枠ハボンブシェルガ。製造ニハ私トショックウェーブガ携ワッテオリマス。無論、妙ナ細工ナドサセテオリマセンノデゴ安心ヲ」
「そうか。お前が言うのならば安心だな」
小さく笑ったメガトロンは、後は任せたと言い残しステイシスロック状態に移行する。機体のフル換装にはブレインモジュールとスパークの移植が必要になる。僅かでも手元が狂えば簡単に死んでしまう手術。換装先の機体も規格が合わなければブレインやスパークに異常を来してもおかしくない。
スタースクリームのように定期的に機体を取り換える馬鹿もいるが、多くは手軽に施術する物でもない大手術。何よりも、元より機体に人為的に組み込まれることを前提に作られたスタースクリームのようなCC型と違い、メガトロンは自然発生のスパークであるフォージド型。その中でも希少なポイントワンパーセンターという強大なスパークを持っている。当然のように、替えが利くものではない。
分かっているだろうに、彼はこうして簡単にサウンドウェーブに命を預ける。信頼されている、と自惚れるにはサウンドウェーブの能力が邪魔をした。
オペ室の出入り口はカセットロンが警備している。この部屋にいるのも、今は意識の無いメガトロンとサウンドウェーブの二人だけ。誰もいない二人切りのオペ室でサウンドウェーブはバイザーとマスクを取り外し、意識の無いメガトロンの傷だらけになってしまった機体へ手を伸ばした。
「──メガトロン様」
当然のように呼びかけても返事はない。それでも、彼のスパークは変わらず輝き脈動している。ブレインの波長も乱れはなく、彼が生きて、ここに居ると伝えてくれる。
傷だらけの、鈍い輝きを見せる胸のインシグニアにそっと額を寄せれば、胸の奥から聞こえてくるスパークの波長が心地好い。400万年前、ケイオンで彼と出会ったあの日から何も変わらない音。サウンドウェーブが焦がれてやまない、あの音だ。
出来ることならずっとこうしていたいのだが、生憎今は時間がない。いつオートボットが襲撃してくるかも分からないのだ。急いで手術を始めようとメガトロンの機体から自らの身体を引き剥がし、作業に取り掛かった。
彼の胸を開いてスパークと脊椎コードで繋がるブレインモジュールを元の機体から取り外す。どれだけ巨大で強大なトランスフォーマーでも、中身を取り出してしまえばスパークとブレインは両手に収まってしまう。このままこれを胸に仕舞い込んでしまいたい誘惑に揺れながら、傍らのボディへ納めコードを繋げていく。あと一本。スパークと動力を繋げるコードを繋げれば、彼は目を覚ますだろう。
「…………」
時間がないと言うのに、サウンドウェーブの手が止まる。古いボディは既に抜け殻で、ただのガラクタに成り下がった。新しいボディはブレインモジュールこそ繋ぎ終わっているが、スパークがまだ途中だ。
果たしてこの状態のこれは、『メガトロン』と言える物なのだろうか。
メガトロンであって、メガトロンではないモノ。
それを前に、サウンドウェーブはゆっくりと顔を近づける。
「臣ノ不忠ヲオ許シクダサイ、メガトロン様──」
未だ目覚める事の無い冷たい唇に、己のそれを重ね合わせた。
■
移植を終え、目覚めたメガトロンは新しいボディの動きを確かめながら、ふと傍らのスクラップに視線を移す。
「このボディは、お前が設計したのだったな」
抜け殻となったボディに触れ、メガトロンはサウンドウェーブを見ることもなく口を開く。地球で致命的な損傷を負い、通常のリペアでは再起不能であったメガトロンをサウンドウェーブとショックウェーブが蘇らせたものだ。
幾度となく機体を損傷しその都度改良と修繕を重ねてきたメガトロンであったが、カノン砲までアップグレードを施したのはこの機体が初めてだった。設計に設計を重ねた強靭なボディはオプティマスとの一騎打ちで圧倒的な力を見せつけた。オートボットと人間の切り札であったはずの兵器ですら寄せ付けない強さを誇ったボディ。
セイバートロン星を襲った脅威に対しても決して引けを取らぬばかりか圧倒してみせたボディは、セイバートロン星の中心部で開かれたマトリクスによるエネルギーの衝撃からもメガトロンのスパークを守り切った。
「このボディでなければ、あの時あのまま命を落としていたやもしれん」
残骸となったボディを撫で、メガトロンはサウンドウェーブを見据えて笑みを浮かべる。弧を描くその口元を直視できず、サウンドウェーブは反射的に目を逸らしてからバイザーとマスクを外したままだったことに気が付いた。
逸らした視線に気付いているだろうに、メガトロンは何も言わない。ためらいがちに顔を上げると、彼の笑みが深まった。
「サウンドウェーブ、良くやった。流石我が右腕よ」
「……光栄デス」
彼の言葉に嘘はない。だが、本心から言っている物でもないとも知っている。分かってしまう。
彼はサウンドウェーブの能力を正しく評価してくれる。彼の為の献身も分かってくれている。それでも……。
──彼が本心からサウンドウェーブを信用することはない。
今だってそうだ。心の奥底では、いつサウンドウェーブに裏切られても良いように周到に準備されている。それは当然、ショックウェーブやスタースクリーム、果ては全ディセプティコンに対しても。
生まれてからずっと機能主義と戦いオートボットと戦い、身を削ってきた彼は裏切られることに慣れ過ぎてしまった。最早誰も信用などできないほどに。
傷付き荒んだスパークに寄り添いたいが、彼がそれを許すことはないのだろう。
「メガトロン様」
「どうした?」
それでも、サウンドウェーブの願いは変わらない。
彼の為に尽くしたい。
彼にセイバートロン星を捧げたい。
見返りなど求めていない。彼こそがサウンドウェーブの、ディセプティコンの希望そのものなのだから。
ただ彼が求める勝利を、ディセプティコンの勝利をサウンドウェーブもまた求めている。
呼びかけに応じたメガトロンの前で、再びサウンドウェーブは膝を付く。意図を察したメガトロンはサウンドウェーブを拒むことはなかった。真新しい彼の右手を引き寄せて、その指先に口付ける。
彼は、知っているのだろうか。
サウンドウェーブがカセットロン以外に素顔を見せる相手はメガトロンだけだと言うことを。
彼のスパークが、彼の想いが、どれだけサウンドウェーブを救ってくれているのかを。
だからこそ、サウンドウェーブはメガトロンを裏切らない。
そう伝えたいのだが、つい先ほど不忠を働いた己が言っても何の説得力も持たないだろう。
ああ、彼の警戒心は正しいと証明された。初めから、彼に間違いなど一つもないのだから当然か。
自身の忠義も不忠も呑み込んで、たった一言に自らの想いの全てを込めて口にする。
「ALL HAIL MEGATRON」
サウンドウェーブの想いの一欠けらすら彼のスパークに届かなくても構わない。
報われないと知っていながら、変わらぬ忠誠を誓う姿は愚かにも映るだろうが構うものか。
メガトロンはサウンドウェーブに生きる目的を与えてくれた、たった一人の主なのだから。