🐸さんの家で珈琲を飲む☕さんなss。CP未満な☕→🐸←🐑要素有。
ネタバレは特にありません。
@rikka_trpg801
貰い物
掃除の行き届いたリビングに芳しい珈琲の香りが漂う。茶渋の汚れなど微塵もないマグカップを手に取って顔に近づけた聖は、そこで一瞬手を止めた。
「変ちゃん、これ俺がこの前あげたのと違うやつだよね? もうなくなっちゃった?」
自分のカップを手に向かいのソファに腰掛けた帰代は、その問いに「いや」と軽く返す。
それなりに長い付き合いであり、自身が珈琲好きということもあって、聖は時折帰代に粉を差し入れている。名目上は聖が飲む分と場所代を兼ねているため、帰代も聖が来たときはその粉で珈琲を入れることが多い。
だが、今日の珈琲は香りからして聖が愛飲しているブレンドではなかった。一口啜ってみたが、やはり違う。
「口に合わなかったか?」
「ううん、これも美味しいよ。もしかして変ちゃんが買ってくれたの?」
冗談めかした言い方だが、味に対する感想に嘘はない。普段聖が飲んでいる物とは味も香りも異なるが、別ベクトルで美味しい珈琲だと感じた。
帰代はといえば、同じくカップに口を付けた後で一つ息を吐いて答える。
「これも貰い物だ。お前が持ってきたのより消費期限が早いから、こっちを先に飲み切りたい」
「そういうことね。上司さんから?」
公安として用心深い帰代が貰い物を口にし、来客である聖にも供しているのだ。余程信用のおける相手から貰ったのだろうとあたりをつければ、帰代の眉がぴくりと跳ねた。
「別に、誰からでも良いだろう」
その言い方に、聖は何か面白そうな気配を感じて口元に笑みを刷く。
「ってことは、上司さんからじゃないわけだ。なに? 変ちゃん好い人でもできた?」
恋愛方面の気配が壊滅的にない帰代の珍しい隙を見つけた気分で突くと、返って来たのは不機嫌そうな声だった。
「は? 違うが? ただの仕事相手だ」
「え~? でも変ちゃん、ただの仕事相手から貰った珈琲なんて飲まないでしょ?」
そうやって帰代の警戒心の強さを指摘してみれば、今度は苦虫を噛み潰したような顔をされる。
「俺に毒やら薬やら盛る必要性なんて無い奴だからだ。未開封の市販品だしな」
「まあ、変ちゃんが俺にも出すくらいだからそうなんだろうけどさ。どんな人なの?」
「仕事相手だと言っただろう? 守秘義務だ」
仕事上の守秘義務を持ち出されると、配属先の違う聖がそれ以上踏み込むことはできない。「残念」と言いながらカップを傾ける。
「ちなみに変ちゃん的には、俺が持って来たのとどっちが好み?」
苦みと酸味のバランスの違いを舌で楽しみつつ、守秘義務の及ばない方向に会話の舵を切る。
帰代の表情や口調から、珈琲の贈り主はおそらく男だ。聖と贈り主、どちらの珈琲が帰代の舌に合うのか興味がある。
問われた帰代は確かめるように珈琲をもう一口飲んでから、僅かに首を傾げながら答えた。
「別に好みとかは無いな。その日の気分と茶請け次第だ」
新しい物好きの帰代は嗜好品の類も様々な種類を試すことを好む。煙草の銘柄が良い例で、聖の知る限り毎度違うフレーバーを吸っていた。どうやら珈琲もその部類の様だ。
聖は答えを聞いて、愉しげに頬杖をつく。
「俺のかお相手のかその日の気分次第だなんて、変ちゃんってば魔性~。俺や至ちゃんのこと言えなくない?」
「何の話だ!? たかが珈琲の話を曲解するにもほどがあるだろう!?」
目を吊り上げてがなる帰代に「どうどう」と片手の掌を向けつつ、温くなってきた珈琲を飲み干す。そして、次回は帰代がより好みそうなブレンドをチョイスしてみようかと考えた。
帰代は色々新しい物を試すのが好きだし、気分を変えるのも好きだ。しかし、好みの傾向が無いわけではない。試してみて外れだと思っても勿体ない精神で使い切りはするが二度と買わないし、当たりだと感じればしばらく時間を置いてからリピートすることもあるのだ。
「……別に張り合う気はないんだけど、ね」
小さな呟きを聞き取れなかった帰代が「何か言ったか?」と怒りの余韻が残る声を投げてきたので、「何でもないよ。このブレンドならクリーム系よりは焼き菓子系が合うかもね」と話題を逸らす。
帰代は「そうかもな」と立ち上がりキッチンスペースに向かった。お替りの珈琲と一緒にクッキーか何かを出してくれるのだろうと予想しながら、てきぱき動く帰代を目で追う。
居心地の良い関係を手離したくは無いし、真面目で可愛い後輩を変な男に掻っ攫われるのも困るのだ。相手が帰代の私的スペースで珈琲を飲めるような関係になったとしたら、同様に聖の気配に気づくだろう。
「幸せになって欲しいしね」
恋をする相手ではないが、聖にとって帰代は得難い知己だ。因果な仕事をしていることもあって難しいが、人並みの幸せを手にして欲しいと願っている。
結局選ぶのも決めるのも帰代だが、多少の駆け引きをするくらいは見逃して欲しいものだ。
新しく淹れられた珈琲の香りに鼻を擽られながら、聖はまだ見ぬ相手のことは一旦忘れ、気の置けない時間を楽しむのだった。
(あとがき)
珈琲飲んでて思いついた☕→🐸←🐑未満なssです。別に☕さんにも🐑さんにも恋愛感情は無いし、🐸さんにも勿論無い。友達に別の親しそうな友達の気配があったら、何となく取られた気分になってちょっとマウント取ってみたくなるような、そんなレベルです。小学生?
たぶん🐸さん、年単位で自分で珈琲を買うことがなくなりそうw 日持ちするしあって困るものでもないから別に良いんでしょうけど、毎度少しずつ種類を変えてくることに「色んな種類を試せるから良いな」と思いつつ首を傾げているかも?