@tirichann
「まさか爆豪が陰キャ営業するとは思ってなかったよ」
とある番組を見て、私は幼馴染の爆豪にメッセージを送った。今や人気プロヒーローである爆豪は、救助だけでなくインタビューやバラエティ番組にも引っ張りだこだ。その中で、「一般人の友達はいますか?」という質問があった。爆豪は雄英へ行ってからヒーローとばかりつるんでいる。それでも私や出久を含む幼馴染とは定期的に飲んでいる。出久こそヒーロー活動をしているが、私はもっぱら会社の犬だ。 この質問は私を友達と認識しているか、と聞いているのに等しいだろう。マイクを向けられた爆豪は、「一般人の友達はいねェ」と言った。友達がいないアピールは最近流行っているし、庶民の共感を受けやすいのもわかる。だけど同時に失うものも大きいのだと、私は爆豪に教えるべきだろう。少なくとも私は傷付いたし、「お前が陰キャ営業をするキャラか」と今度の飲みでいじってやろうと思っている。今度の飲みに誘われたらの話だが。急に不安になっていると爆豪から返信が来る。
「何のことだ」
「テレビで一般人の友達いるか聞かれていないって答えてたじゃん。友達いない営業はよくないよ」
怒るようなスタンプを送ると、着信が来てメッセージが通話に切り替わった。
「もしもし」
「俺は、お前を友達だと思ってねぇ」
私は驚いた。テレビで否定するだけではなく、本人を前にここまで断言するのだ。余程煩わしいと思われていたか、嫌われていたか、両方だろう。冗談では済まされなくなった気配を感じて黙り込んでいると、爆豪は相変わらずの声量で続けた。
「好きな奴だ。それ以外で見たことはねぇ」
これは、実は嫌われていた展開より大変なことになってしまったかもしれない。嫌われていたよりは何倍もいいのだけど。と思っている時点で私は爆豪が好きなのだろうか。友達としての意味合いなのか、男としてなのかわからない。
「とりあえず返事は今度でいい?」
私が言うと、爆豪は彼らしく宣言した。
「俺も告白をこんなんで済ます気ねぇから首洗って待ってろ」
通話が切れ、僅か一分程度の通話時間が表示される。無機質な数字を見ながら、今度は出久と三人ではなく二人きりで飲むかもしれないな、と思った。