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会えなかった分だけ、もっと好き

全体公開 #girls_lily_project 2 26 4093文字
2026-05-13 18:08:26

アンモラル💜💛

過去最高湿度です

『みこ~?この日、みこの家に行ってもいい?お休みの前の日だしさ~』

 とある日の夜、夕凪機は美古途にそんなメッセージを送った後に、ベッドへと身を投げた。それからは寝るわけでもなく暗くなったケータイの画面をトントン叩きながら、ぼーっと壁を見つめている。会いたいな。そう思って送ったメッセージだったが、少しだけ後ろめたさも感じていた。

『イチャイチャし過ぎ』

 先日、御莉姫からそんなことを言われた。実際、思い当たる節があったのでお互いに距離を置こうと決めたものの。そのままレッスンに収録にと忙しい日々に突入してしまったことで、お互いに会えない日が続くことになってしまった。全く会えなかったわけでは無いのだが、あっても一言二言交わす程度。そんなこんなで、募りに募った寂しさは限界を迎え、今に至る。

「ん〜!」

 今か今かと返信を待っているが、やっぱり来てほしくない気もする。画面をたたく音が早く、強くなって、それでも治まらず足も一緒にバタバタとさせ始めた。

 しばらくして、ピロンと通知音が鳴る。同時にピタッと夕凪機の動きが止まった。しかし、夕凪機はそのメッセージを見る勇気が出ず、ベッドに顔を埋める。

 明るくなったケータイの画面には美古途からの短いメッセージが一言。

『いいよ。』


 そして、約束をした日。

 美古途の家の前に夕凪機は立っていたのだが、未だにチャイムを押せずにいた。ひっきりなしに髪をイジったり、服装を確認したり、ケータイの画面を使って自分の顔を確認したりと最終確認を何度も、何度もしていた。
 大丈夫。笑顔、笑顔。と心の中で夕凪機は繰り返した。そして、ようやく意を決し夕凪機はチャイムを押す。押し慣れているはずのボタンが異様に硬く感じた。

 すぐにドアの向こうから足音が近づき、ガチャッと開く。

「みこと─」

 名前を呼ぼうとした瞬間、強く抱き寄せられた。待ち焦がれたスキンシップではあるが、唐突な出来事に嬉しさよりもまずは困惑が勝っている。

「っと、美古途?」


 美古途は何も答えずにただ夕凪機を堪能していた。抱きしめて、匂いを嗅いで、頭を擦り寄せていた。それでも足りないのか、少しでも濃い場所を探そうと美古途はしきりに位置を変えている。そのせいでお互いの耳が、頬が擦れ合う。美古途の柔らかさと体温を感じるたびに夕凪機の心臓は倍々に早くなっている気がした。

えっと、美古途さ~ん?」


 どうにかなってしまいそうな夕凪機だったが、微かな理性で美古途に呼びかけてみる。しかし、美古途は相変わらず答えない。この距離で聞こえていないことはないはずなんだけどそう思いながらも、もう一度呼びかけようとしたところで、美古途が小さな声でなにか言っていることに今更気が付いた。

「うな
「ッ!!!」

 大切なものを確かめるように何度も、何度も呼んでいた。ともすれば泣いてしまうのではないかというほどに切実な声で呼ばれていることに気が付いてしまい、今まで耐えていた欲望が止めどなく溢れ出してくる。

”私のものにしたい”
"美古途は私のものだと誰が見ても分かるほどの消えない証を刻んでやりたい"
"そのまま─"

(いや!それはまずい!)

 湧き出た欲望をどうにか見なかったことにして、夕凪機はぽんぽんと美古途の背中を叩いた。

「美古途!流石に玄関はマズイからさ、お部屋行かない?ね?」


 夕凪機の声が聞こえたのか、美古途の動きが止まる。やっと落ち着いてくれたのかな?そう思ったのも束の間─

「ちょ?!」

「美古途?!それはちょっと痛い!」
!」

 夕凪機の『痛い』を聞いて美古途はバッと身を引いた。そして、ようやく冷静になったのか、美古途は夕凪機の首についた痕を見てポロポロと涙をこぼし始めた。

「え?!ちょ、大丈夫?!」
「ごめん!そんなつもりなくって!」
「いやいや!全然怒ってないよ!ただ、どうしたのかなって
「えっとその

 美古途はしばらく躊躇ったあと、夕凪機とは視線を合わせずに絞り出したような声で言った。

我慢してたから」

 その一言で、夕凪機の体がビクッとなる。雷に打たれたみたいな、そんな衝撃。その後に来る甘い優越感。それら全部を押し殺している夕凪機に気が付くことなく、美古途は言葉を続ける。

「その寂しいのとか我慢してたんだけど、うななの顔見たら爆発しちゃって。ごめん
「あぁいや!全然大丈夫だって!気にしてないよ!それよりさ!ほら、ここ玄関だから!ね!中でお話しよ!」

 どれくらい時間が経ったのだろうか。玄関から美古途の部屋まで距離があるわけでもないのに美古途の部屋に来るまで随分と時間がかかった気がした。確かに今日は思う存分に、そう思って来たのだがまさか最初からこんなことになるとは思ってもみなかった。美古途も美古途でよほど溜まっていたのだろう。その証拠にか、玄関から部屋へ行くまでの短い間も手だけは繋いだままだった。

 部屋に着くと美古途は夕凪機と向かい合ってぺこりと頭を下げた。

「さっきはありがと。でも、やっぱり痛くしちゃったのはごめんね
「だ~いじょうぶだって!全然へっちゃらだから!」
「ううん。私が気にするの。だからなにかしてあげたいんだけどなにがいいかな?」
「え~?じゃぁさっきみこがやったことを私もやりたいかな~?」
「いいよ」
「え?」
「さっきしたこと、していいよ」

 そう言って美古途は服を軽くはだけさせ、夕凪機に首を差し出した。まだ美古途のものでしかない真っ白な肌に、夕凪機は思わず生唾を飲んでしまう。正直、夕凪機は冗談のつもりだった。今だって『冗談だよ』と言いたい気持ちがある。でも、美古途の視線は『して欲しい』と言っている気がする。ズルい。分かっていてやっているのだとしたら美古途は本当にズルい。

 今からここに自分のモノだって証を付けられる。誰もまだつけたことがないそこに。そして、それはきっと私が最初で最後の人になる。そんな考えで夕凪機の頭は埋まっていく。

「いやでも─」

 まだためらおうとしている夕凪機の言葉は美古途の唇に塞がれた。それは同時に、美古途の心を夕凪機へと何よりも雄弁に語った。

『して欲しい。同じことを、私に。』

 それが限界だった。

 今日まで耐えてきたそのすべてが決壊し、夕凪機は美古途の首筋に口づけをした。そしてそのまま今日付けたものが二度と消えないようにしっかりと刻み付けるつもりで、強く、強く吸いつく。美古途は夕凪機を抱きしめながら痛みも含めてそのまま全部受け入れていた。夕凪機と同じように、今日と言う日を忘れないようにするために。

 どれくらいそうしていたのか、しばらくしてようやく夕凪機が口を離すと美古途には真っ赤な痕が残っていた。透き通るような白い首筋の上に突然現れたその赤い点は、首元が隠れる服装でもなければどこから見ても目立つほどだった。間違いなく、夕凪機が刻み込んだ”自分のモノ”という証だった。

 しかし、足りない。全然、全く足りない。

「あはは。ごめん、今日はもう加減できないかも」
「大丈夫。そうして欲しいし、私も我慢しないから」

 今度は再び美古途が夕凪機の首筋へとキスをした。きっとまた夕凪機の首筋には美古途のつけた痕が一つ増えるのだろう。しかし、それが残るのもいつまでだろうか。この痕を付けるときの痛みだってすぐに忘れてしまうかもしれない。

(それは嫌)

 美古途は吸いつくだけでなく、歯を立てた。ずっとずっと、この時のことを覚えていて欲しいから。体からも思い出からも消えないように少し強めに美古途は噛み付く。夕凪機の首筋にピリッとした痛みが走る。そして反射的に美古途の体を抱きしめた。その反応がうれしかったからなのか、美古途は噛む力をさらに強めた。首筋の痛みが増すほどに夕凪機の美古途を抱きしめる力も強くなっていった。そんなことを続けていってお互いが満足する頃には、キスの痕は夕凪機の首筋から少し血が出るような噛み痕になっていた。

「美古途~。今のは結構痛かったんだけど
「えへへ。ごめん
「うん。だからお返しするね」

 その後もキスの痕どころかお互いの体を傷つけあうようなことを二人は続けていった。もう絶対にこの日を忘れないし、二人でいなくても思い出せるようにお互いの体に自分の”好き”を刻み込んだ。そうしてお互いが満足して体を見合った頃には噛んだ痕、爪の痕、キスの痕がいたるところに出来ていたし、ところどころ血が出ているところもあった。流石にやりすぎたかなと夕凪機が美古途の目を見ると美古途もほぼ同時に顔を上げていたようで目が合った。
 多分、同じことを考えていたのだろう。それがおかしくなってお互いに笑い合った。閉めたカーテンの隙間から日の光が差し込んできている。夜通し遊んだ二人の体に疲労感と眠気がやってきていた。

「寝よっか。いっしょに」
「うん。一緒に、ね」

 血が出ているところに絆創膏だけ張り付けて、二人は布団の中に入った。入った瞬間に睡魔がどっと襲ってくる。夕凪機も美古途もなにかするわけでもなく、眠気に体を預けてゆっくりと目を閉じた。そうやって眠りに落ちつつ、二人はぼんやりと同じことを考えていた。

(これだけしても、きっとまた、足りなくなるんだろうな

 その時はまたすればいいか、そう思いながら美古途は夕凪機の手を握った。既に眠っているのか、夕凪機から反応はない。それでも十分だった。手から伝わってくる体温を感じながら美古途も夕凪機の後を追った。

 外で鳥が鳴き始める中、もう少しだけ二人ぼっちの世界は続く。それを証明するように、部屋の中を二人の寝息だけが満たしていた。


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