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南雲に生活を圧迫される

全体公開 サカモト 1 953文字
2026-05-26 22:26:24
Posted by @tirichann

 南雲のことをふった。理由は仕事が充実しているからだ。南雲と付き合えば恋愛に時間を割かれるのは確実だし、結婚なんてすれば仕事をやめてほしいとも言われかねない。南雲の家が名家であることを考えたら、古の女らしい振る舞いを求められることもあるだろう。
 南雲は「ふーん」と言った後、「今の生活には困ってないんだ?」と尋ねた。遠回しに性欲は自分で解消しているのかと問われた気になるが、多分気のせいだろう。
「お金もあるし。仕事のおかげでね」
 殺し屋のバリキャリなどおかしな話だが、実際私はそうである。南雲は諦めたように「そう」と言ってその場を去った。南雲の割にはなんだか綺麗な幕引きだ。元々私をそこまで好きではなかったのかもしれない。
 私の仕事先で標的が殺されるようになったのは、それからだった。あらかじめ決められた標的を殺しに乗り込むと、必ず標的は既に死んでいるのだ。いや、殺されていると言った方が正しい。死因となる傷は外傷だが、武器は様々だった。目的地に着いた瞬間に標的の死を確認して任務失敗の電話をかける日々が続いた。もちろん私が殺したわけではないので報酬はゼロだ。殺し屋のバリキャリはどこへ、今ではランチに外食をするのも躊躇う生活である。私が惨めに持参したおにぎりを食べていると、その人は現れた。
「やっほ~、元気?」
 この間私にふられた人とは思えないくらい陽気である。それもそうだろう。彼――南雲こそ、私に先回りして標的を殺していた人間なのだから。
「何で私の標的を殺すの?」
「あ、僕だって気付いてくれたんだ。嬉しいな」
 南雲の笑みが深くなった。南雲は、自分がやったと認めたのだ。何がおかしいのか南雲はけたけたと笑う。
「だってそうしたら名前ちゃんの生活が上手くいかなくなるでしょ?」
 その声に、南雲が自分に頼るよう仕向けるために一連の出来事をやっていたのだと知った。確かに、報酬金がなくては私の生活は成り立たない。南雲は今も野菜がふんだんに使われたサンドイッチを食べている。
「今、生活に困ってるなら養ってあげようか?」
 笑顔で言う南雲はとんだピエロだと思った。自分で私の仕事を妨害しておいて、自分で助けようというのだ。それに頷きかけている私は、全部南雲の手のひらの上である。


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