仲良し🐍🐸が梅雨について話すssです。付き合ってないただの仲良しです。
ネタバレは特にありません。
@rikka_trpg801
梅雨入り前
じわりと肌に貼りつくような汗が滲み、帰代は不快感に眉を顰める。まだ五月だというのに日中の気温は三十度に届く日もあり、すでに夏物が必要になっていた。
「まだ梅雨も来てないってのに」
庁舎からすぐ近くの目的地を目指して歩きながらぼやく。
湿度は高いが、気象庁から梅雨入り宣言は出されていない。これから更に気温と湿度が上がる未来を想像して溜息を吐く帰代の隣で、ジャノメが手に持った傘を揺らした。天気は薄曇りだが、トレードマークの傘は今日も頭上を覆っている。
「でも、そろそろ梅雨入りかもって、テレビで言ってたね」
「そうだな。雨は面倒だが、降ってもらわないと困るし仕方ない」
仕事で屋外に出ることも多いため、雨が降ると雨具が必要になり単純に手間と荷物が増える。その面倒の一方で、まとまった降水量が確保されなければ今度は渇水が待っているのだ。何ともままならないことである。
「帰代くんは、梅雨が嫌いなの?」
憂鬱そうな顔を覗き込み、ジャノメが首を傾げた。
「嫌いなわけじゃないが、好きでもない。というか、好きな奴の方が少ないんじゃないか?」
一般論だろうと述べる帰代の意見を聞いて、「そうかなぁ」と呟いたジャノメが手袋をした指で傘の柄を撫でた。
「僕は結構好きだよ」
「なんでだ?」
物好きな人間を見る目を向ければ、ジャノメは薄く笑みを浮かべる。
「傘を持ってても、不思議そうな目で見てくる人が少ないから」
「……そうか」
体質の関係で傘を持ち歩いているジャノメだが、当然その事情を他人が知るはずもない。奇異の目で見られることも多いだろう。その視線が和らぐ季節をジャノメが好きだというのも、理解できる気がした。
帰代が静かに目を伏せて相槌を打てば、ジャノメは「あっ、あとね」とパッと明るい笑顔を向けてくる。
「帰代くんの誕生日があるから。毎年丁度梅雨の始まりくらいだよね?」
急に自分の誕生日を持ち出され、帰代は「ああ、まあな」と少々面喰いながら頷いた。
帰代の年齢になると一緒に誕生日を祝うような親しい人間もいないため、身分証や書類の年齢が変わる日という認識になっていた。確かにジャノメからは毎年祝いのメールが届いていたが、実際その手のメッセージを受け取るくらいのものだ。
「帰代くんが生まれた季節だから、梅雨って良いよね」
当の本人が意識していないような理由で憂鬱な季節を好きだと言い切るジャノメに、呆れと同時に妙に落ち着かない気分が湧き上がってくる。
歩いていた所為か更に熱くなった頬を手のひらで仰ぎながら、帰代は話題を自身の誕生日から切り替えようとジャノメを流し見た。
「俺のじゃなくて、お前の誕生日の方が梅雨の期間に合ってるでしょーが」
帰代の誕生日は梅雨入り前の年も多いが、五日遅れのジャノメの誕生日は大抵の年で梅雨に入っている。イメージとしてはジャノメの誕生日の方が当てはまるだろう。
ジャノメは今思い出したとばかりに目を丸くして帰代を見つめた。長い横髪がはらりと揺れる。
「そういえば、そうだね。誕生日のお祝いとかあんまりしないから、忘れてた」
「……」
何でもないことのように返しにくい内容を口にされると、帰代も咄嗟に口を噤んでしまう。ジャノメがあまり恵まれた生育環境にないことは知っていたので猶更だ。
奇妙な罪悪感と纏わりつくような気候の不快感をまとめて振り払おうと、帰代は盛大な溜息の後でジャノメの胸元を指さした。
「自分の誕生日くらい覚えてなさい。仕方ないから、今年はケーキと料理くらい用意して祝ってやる」
「えっ!? 本当に!?」
目をキラキラと輝かせるジャノメに、鼻を鳴らして告げる。
「そうしたら来年から忘れないだろう?」
「うん、絶対に忘れないよ。でも、本当に良いの?」
忙しい帰代の仕事事情を知るジャノメの窺うような視線に、帰代は「俺が良いって言ってるでしょーが」と眉根を寄せる。
「良いから、何が食べたいか考えとけ」
「わかった。わ~、何にしようかなぁ」
ワクワクとした様子で考え出したジャノメが、はっと何かに気付いた様子で顔を上げた。
「じゃあ、帰代くんの誕生日には僕が料理を作るよ。何が良い?」
思いがけない返しに、帰代は咄嗟に「いや、いい」と手のひらを向けて拒否する。しかし、ジャノメは気にする様子もなく非力な拳を握ってやる気を見せた。
「最近は僕も自炊してるから、ちゃんと作れるよ。帰代くんは何が食べたい?」
これはいくら断っても蛇のごとく食い下がってきそうだと悟り、帰代は何とか被害を最小限に留められることを願いながら答える。
「なら、お前の得意料理で。お前が一番美味く作れる料理が良い」
「僕が一番美味しく作れる料理……任せて、帰代くん。僕頑張るよ」
闘志を燃やすジャノメから目を逸らし、帰代は薄曇りの空を見上げて目を細める。雨はまだ降りそうにないが、晴れる様子も見られない。
「忙しい梅雨になりそうだ」
雨垂れの代わりにぽつりと呟きを落とす。
瞬きを一つして帰代は気持ちを仕事へと切り替え、隣のジャノメを急かしながら目的地へと歩を進めるのだった。
(あとがき)
仲良し🐍🐸です。梅雨が近くなるということは、彼らの誕生日が近づくということ。今年も🐍🐸の季節ですね☺
遅ればせながら、バディトーナメント優勝おめでとうございます✨ 色んな意味で運命的(?)な出目で楽しませていただきましたw また継続セッションで🐍🐸に会える日を楽しみにしています!