□陰陽師な修と九尾な二宮。続きます。
@wtkotaji
「おい、何をしに来た」
「はい?」
思わず声をかけていた。
二宮の元へ現れたそれからは、全く霊力を感じなかった。
(いや、多少はあるが、)
微弱過ぎて、視界に入るまで気付かない程だった。いつもの自分を使役しに来た陰陽師かと思い観察していた二宮は、目を眇めた。
子供だ。歳は15、6だろうか。
これといって特徴はない。
今までやって来た中でも最弱とも言える霊力に、馬鹿にされている気さえした。
二宮はここでは知らぬ者はいない九尾の狐、霊獣である。この一帯のあやかしを治め、従えてきた。
幾人もの愚かな人間が、二宮を従えようとやって来たが、そもそもの霊力も実力も足りずに這う這うの体で逃げ帰っていった。唯一の例外といえば東家の者だが、彼は笑って「俺はお前を従える器じゃないよ」と辞退していた。
今のところ二宮は、東以外に仕える気はない。
それともまさか、此処が二宮が封じられている祠と知らずに来たのだろうか。
「まさかとは思うが、俺を使役しに来たのか」
「えぇと、まぁ一応そういった依頼を受けまして、」
「帰れ」
言外にお前には無理だと言い放ち、二宮は隠形した。
暫し眼を瞬いた子供は「また来ます」とだけ言って去っていった。
何度来ても変わらないだろうに。
翌日。子供はまたやってきた。
何やら色々やっている。文献まで持ち込みあぁてもないこうでもないと唸っている。
先ずは祠の封を解くつもりのようだが、そもそも二宮に仕える気はないのだから無意味な行為である。この子供にこれが解けるとも思っていなかったので二宮は興味薄げに眺めていた。
「ではまた来ます」
「…もう来るな」
呆れながら言っても子供はぺこりと頭を下げて帰り、また翌日懲りずにやって来るのだった。
ある日、子供が従えて来たものに二宮は眉間に皺を寄せた。
「なんだソイツは」
「あ、こいつは」
「くがゆうまだよ。おれは境界から来たんだ」
「境界?」
聞き慣れない単語に二宮は訝しげにした。慌てたように「コイツはぼくが拾ったんです」と子供がいう。
白髪の小柄な体躯に紅玉のような瞳。
人間ではない、が。あやかしでもなかった。
「式神か」
「うんまぁそんなとこ。この間オサムに拾ってもらったんだ」
式神を拾うなど聞いたことがない。
従えたのではなく、付いて来たようだった。
「このひとがオサムが言ってたひとか」
「あぁ」
二人の会話から、二宮は子供の名を初めて知った。
あやかしに名を零すとは愚かなと思いながらも、それよりも二宮は別のことに気を取られていた。子供──修が式神を従えていること自体が気に食わなかった。