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さすがにしばらく口を聞いてくれなくなった〜キリシタンすり抜け主と鶴丸国永〜

2026-06-01 19:27:05

鶴丸と主ちゃんの平和なほのぼの話です

例年通り届いた健康診断書らしき通知書を開いた途端、ぴしり、と彼女の笑顔が音を立てて固まったので
こっそりと忍び寄った鶴丸はすかさず手を伸ばして、主人の手からそれをするりと奪い取った。
「あっ!!!」
「どーれどれ」

ぴょんぴょん子兎のように跳ねて手を伸ばす彼女から奪った通知書には、健康面のデータがずらりと並んで、いずれも申し分なく健康体そのものであることを示している。
「か、かえしてっ、鶴るん! つーるーるん!!」
彼女の手の届かない高さに掲げ、素早く目を通せば、なんのことはない、至って健康的な数字が並ぶだけだった。

医務室預かりの薬研藤四郎と来たら、日頃からどんな刀がどんな手で脅そうが懐柔しようが決して主人の健康面の情報に一切口を割らないので、分厚い医務室の扉をピシャリと閉められてしまうと中のことは本当にどうしようもないのだ。
薬研曰く、日頃からそうでなければ女人の大将は安心してこちらに相談してくれないだろう、ただでさえ己のことに口が重くて後回しにしがちなのだから、と。そりゃあ理屈は理解できるが、その外側で気を揉む他ない身としてはたまったものではない。
だからこうしてこっそり忍んで、薬研と彼女に隠されてしまう前に情報を盗み見たわけだが、どうやら幸いにして杞憂らしい。

しかし、胸を撫で下ろした鶴丸に引き換え、彼女は執拗に「鶴るん!鶴るんてば!返して!かーえーしーて!」と跳ね続ける。
首を傾げた鶴丸は、もう一度目を通して「ああ」と納得した。
ここ数年に比べて体重がだいぶ増えている。

とは言っても、元々あまり多く食事を胃が受け付けない性質たちであるらしき彼女は、出会った頃からいささかほっそりとし過ぎていたし
あくまで現代的な健康体重の範囲内の増加でしかなかったが、彼女の中では大問題だったらしい。
鶴丸の表情に素早く広がった納得の色に、察されたことを察したらしき彼女が、ぴょんぴょん跳んで取り返すことをついに諦めて、ぶわっと恥ずかしげに「だ、だって」と言い淀んだ。

「み、みっちゃんのご飯も、歌仙のお料理もおいしくて……

光坊辺りが聞いたら泣いて喜びそうなセリフだが、彼女にとっては恥じらいの対象だったらしい。
鶴丸を浴室に招いて髪を触らすような女子として頭のネジがいささか外れた主人にも、なんとそういう機微は存在したらしい。驚きである。光坊と歌仙の食育の成果だろうか。

とはいえ、現代的な主にはどうやら想像がつきにくいようだが
今日十二分に食べられても明日突然食べられなくなるのが戦の常というものだ。
少ない兵糧の中から工夫して食べさせ、山に出ては猪を狩り野鳥を狩り魚を捕り木の実や山菜やキノコを取ってきては彼女にせっせと食べさせた時代も過ごした初鍛刀の身としては
突然の兵糧攻めにも耐えられる程度の肉付きはあって欲しい、と考えるのは至って自然なことである。

とはいえ、迂闊にそのようなことを口を滑らせて無理に食事を口に運ぶようにさせてしまえば、食事全般を預かる歌仙辺りに空まで吹っ飛ぶほどぶん殴られることは確実であったため
鶴丸は一つ首を捻って、代わりにもう一つの方の本音をぽろりとこぼしてしまった。

「ぷくぷくになっても可愛いけどなあ」
「〜〜〜〜〜っ!!!」

ぽかぽかぽかと可愛い拳でめちゃくちゃに叩かれまくった鶴丸が一切反省する気配が無いので、さすがにしばらく口をきいてくれなくなった。
まあさすがに自業自得である。
後から事情を聞いた初期刀殿に「てめえはデリカシーを玉鋼から学び直しやがれ!!!」とアッパーカットを食らい目一杯しばき回された。当然オレが悪いが、だって可愛いだろう、餅のように膨れた彼女のほっぺがぷくぷくしてたら。


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