@muchi2315
「あれ? フリードじゃん。どうしたの?」
「モン!」
オリオが手を止め身を屈める。成人の男にしては小さくて、ぐにゃぐにゃで、素朴な瞳の生き物と視線を合わせて笑顔を向けた。その光景がドアの隙間から見えて、俺は思わず足を止める。
一目見ればわかるが、そのぐにゃぐにゃで目が点のフリードは俺ではなく、俺の姿に変身したメタモンだ。どうやら写真を見て変身したらしい、その姿は少し前の、ゴーグルを頭に乗せジャケットを着ている時のものだった。
「モン〜モン!」
「遊びに来てくれたんだ? 嬉しいよ」
「モン」
なんだよそれ。嬉しいなんて俺にはそんなこと言わないのに。そう思いかけ、そんな自分自身に驚く。別に俺らはそんな関係じゃないだろと軽く首を振る間に、フリードもどきとオリオの会話は続いた。
「火は危ないから一人の時火を使って遊ぶのはダメだからね?」
「モン!」
「あはは、うん。良い子だね」
元気良くメタモンが返事をする。ぐにゃぐにゃで動かしづらそうな身体を曲げて素直に頷くメタモンを、オリオは明るい笑顔で褒めてやった。
ポケモンには甘いよなアイツ。知ってるけど。そう思いながらも、フリードもどきには優しいオリオが俺は妙に面白くない。別に本物にだって優しくても良いじゃねぇか。いや俺の偽物に優しいのではなくポケモンだから優しいのであって…と変にとっ散らかる頭で考えていると、急にオリオのその明るさが揺れて、口を噤んだ。どうかしたのかと身を固くし様子を伺っていると、オリオは懐かしそうに目を細め、小さな身体のフリードもどきへポツリと呟いた。
「……ちっさい時のフリードみたい。可愛い」
……うん?
オリオの言葉に俺が固まる。どういう事だ、どういう意味だ。可愛い、可愛いってなんだ。『小さな頃の俺の姿のようで可愛い』ってなんだ。
身体が熱風に煽られた時のように一気に熱くなる。オリオの真意はわからない。わからないけれど、不快感はなく、お前にならそう思ってくれても構わないと、そう感じている自分に驚いた。
目を瞬かせる俺を置いて、オリオはメタモンと喋り続ける。
「ああ、ごめん。ちょっと懐かしくなっただけ」
「モーン?」
「……寂しくないよ?」
「モン、モン? モン!」
オリオに元気がないと感じたらしいメタモンが変身してきのみの姿になった後、元のメタモンの姿になり首を傾げる仕草をする。どうやらメタモンはお腹が空いているからオリオに元気がないのだと思ったらしい。メタモンは意気込むように鳴き声を上げ踵を返すとドアを開け勇ましく機関室を出て行った。こちらに向かって来るのでドアから一歩下がって道を譲る。開かれたドアから視線を感じたので顔を上げれば、オリオが驚いた顔でこちらを見ていた。
「あ」
「……おう」
「フリード、あんた、いつからそこに……」
「あ、あー。そうだな、そのー……」
どう答えたものか。考えを巡らせるが最適解は見つからない。ならばと俺は開き直る事にした。俺にも『来てくれて嬉しい』の言葉、欲しいから聞かせてくれよと、賭けに出てみる。
「遊びに来たぜ、オリオ。会えて嬉しい」
「はぁ!? なっ、あ! 最初からってことじゃん!?」