お花畑がテーマのやつから浮かんだ🦅☀。シンパパもいいけど義理の兄妹で🦅+🙏、☀+🐺が義理の兄妹。…って言ってたけど、と🦅と🙏は血の繋がらない父と娘になりました。これ☀と🐺の関係は書いてないけど、こっちは義理の兄妹になるはず。そして🐺🙏が6歳なので🦅30歳☀21歳になる年の話。🙏を🦅が引き取ったのは昨年の冬で、今の時間軸は次の年の夏。
格好はあのままだけど☀の体型は細く痩せてた頃のイメージ。何年か後になんやかんやあって🦅☀成立するやつです
@kitunebana
僕に娘ができた。とはいえ義理だけど。僕と義娘に血縁関係は一切ない。義娘……いのりは僕と血の繋がらない義妹の娘だ。義妹と血が繋がっていないのは父親が子連れ同士での再婚をした結果であり、そこに僕の意思は介在していなかった。正直に言えばどうでもよかった、っていうのが本音。僕は幼い頃からフィギュアスケートの選手をしていて父親が再婚したときには既に家を出ていたから。
義妹と直接会ったのも両家顔合わせの一回だけ。義母もだけど、どうにも印象に残らない人間っていうのが義妹への感想。よそよそしいというか、他人の顔色を窺う人間。義母とも、実の親子でありながらそれ程仲が良さそうにも見えなかったな。
そんな義妹もいつの間にか成人し、結婚し、二児の母になっていた……らしい。元々交流はなかったけど、僕は二十歳で競技者を引退してから疎遠どころか絶縁していたようなものだから全部後から聞いた話だ。
そんな義妹の娘を僕の義娘として引き取ることになったのには、理由がある。……義妹が亡くなったからだ。交通事故だったらしい。夫と娘二人の四人で車に乗っていたとき、飲酒運転の車が猛スピードで赤信号で停止していた義妹たちが乗る車に突っ込んできた。運転していた夫は咄嗟にハンドルをきったけど、どうにもならなかったみたいだ。運転席の夫、助手席の義妹、助手席側の後部座席に座っていた上の娘は助からなかった。後部座席でチャイルドシートに座っていた下の娘だけが助かったらしい。
……というのを僕は、僕への公式な連絡への対応などを依頼している人間から聞いた。よくもまあ僕まで連絡が来たものだと思ったよ。そのくらい縁が薄いんだ。だから僕はその連絡に対してそうなんだ、くらいの感想しかなかった。ただ連絡を一応聞いて、お葬式の日に予定がなかったから。それだけの理由で足を運んだだけ。
そんなだったから、最初は義妹の娘を引き取ることなんて考えてなかった。だけど義妹一家のお葬式会場に蔓延る醜悪な人間たちを見て、どうにも我慢ならなかったんだ。
悲しむ素振りなど上っ面だけというのがよくわかる態度。口々に残された下の娘を可哀想と言うくせに、次に出てくるのは事故で降りる保険金と慰謝料のことばかり。誰が引き取る、自分の家は無理、養護施設は、でも完全に相手側が悪いから下の娘が受け継ぐ遺産はそれなりの金額になる。そんな会話から受け取れるのは下の娘の面倒は見たくないが、お金だけは手に入れたいという考え。そんな薄汚い欲を撒き散らしていた。しかも残された娘の前でだ。
残された下の娘は何も映していないような伽藍洞の瞳で独り、父と母と姉の遺影の前に座っていた。涙は枯れたのか流していない。見える範囲に傷も無かった。何も感じていないのか、感じることができなくなっていたのか、僕にはわからない。ただそこに存在しているだけといった風情の少女。……似ているな、と思ったのはどうしてだろうね。気づいたときには僕は声をかけていた。
「ねえ、君、僕のところに来る?」
何も映していなかった瞳が僕を見る。やっぱり僕も写ってなかったけど、かまわない。声をかけられたから機械的に反応しただけだろう。でも僕が今まで周囲で悪意を囀っていた人間たちとは違うって気づいたのかな。
「……誰、ですか」
消えるような小さな声で少女が言うから「君のお母さんの義理のお兄さんだよ」って答えたけど、幼いからか義理の兄というのが理解できなかったみたいだ。だから「君のお母さんの義理の兄が僕。わかった?」って言えば頷いたから、理解したんだろう。
その後暫く考える様子を見せた後、少女は再び頷いた。
「……私、お兄さんのとこ行きます」
伽藍洞の瞳に少しだけ光が射した気がした。よくよく考えれば僕は少女の母の義理の兄としか言ってなくて、名前も、住んでいる場所も、仕事も、何も伝えてないのによく決めたものだと思う。少女を連れ帰って慎一郎くんに初めて会わせたときに凄く驚かれたな。
「そう。僕は純。お兄さんじゃなくて夜鷹純。憶えて」
「よだか、じゅん……さん。私は結束いのりです」
「わかった。いのり、行くよ」
火葬を終えて会場に戻っていたところだから、別にこのまま|義妹の娘を連れて行っても問題ないと僕は判断した。僕たちを止めようとする人間は居たけど、僕が視線を向けたら黙った。会場のスタッフに後で費用の請求とか含めての連絡先として、僕に義妹の事故について伝えて来た連絡窓口の人間の連絡先を伝えて、僕はいのりと葬式場から出た。
◇◆◇
義妹の娘は夜鷹いのりと名前を変えて僕と一緒に暮らしてる。養子縁組をして僕の義娘になったから。最初は後見人とかでいいと思ってたんだけど、いのりが受け取る遺産に目が眩んだ人間たちが後から騒いだから、ちゃんと親権を持った方が良さそうだったんだよね。
いのりは僕の住んでるマンションで所在が無さ気にしてる。僕は氷の上以外じゃ碌に呼吸もできないような人間だから、つまらないんだろうな。でもどうしていいかはわからないままだった。いのりと同い年の息子が居る慎一郎くんは時間が経てば慣れるんじゃないかなって言ってたけど、どうだろうね。葬式上で似ているって思ったことが不思議なくらい、僕といのりは合わない。そんな風に感じてしまう。だからといって手放すことはしないけど、何か僕に慣れる切欠でもないのかな。そう思わなくも無いけど、特にこれといった行動には移さなかった。
一応義理とはいえ親の義務としていのりは幼稚園に通わせてたんだけど、そこで仲良くなった女の子が居るらしいって聞いたのは一緒に住むようになってどのくらい経った頃だったかな。基本的に家のことは業者任せで僕が何かしていることは特にないし、食事も僕は食べないからいのりは一人で食べてた。慎一郎くんが食べなくても同じテーブルに着くようにと言われてたからそうしてたけど、これといって会話も無かったんだよね。そんないのりが興奮して喋ったのが光という少女のことだった。
今度公園で一緒に遊びたい。そんな願いを僕に伝えて来たいのりは酷く緊張していた。僕が駄目って言うと思ってるのかな。僕は別に何もかも駄目と言ってはいないんだけど。……いのりは日常生活が下手だ。そこは僕と同じ。だからできないのに家のことをしようとしたりはしなくていいとは言ってたけど。いのりに任せると幼稚園からの連絡用紙も失くすからね。トークアプリで連絡が来るから僕がスマホを壊す頻度が少しだけ減ったことを慎一郎くんが喜んでたな。
「いいよ」
「!?」
編み込んだ前髪の先端が喜びを表すようにピョコッと跳ねたように思うのは気のせいだよね。義妹が毎日編んでいたと言うから僕も習得したんだよ。初めて編み込みをしたときはあちこち跳ねたり飛び出したりで不格好な仕上がりだったのに、いのりは初めて笑ったのを憶えてる。
「じゃ、じゃあ明日光ちゃんにいいよって言いますね!」
「うん」
幼い子ども同士で決めれるのかとも思うけど、いのりの話しぶりから光という少女は利発そうだったから大丈夫だろう。そんな僕の予想通りいのりは公園に行く予定の日時や集合場所を書いたメモを持って帰ってきた。どうやら光という少女の保護者が先に用意しておいて、僕からの了承があれば渡すようにと言い含めていたらしい。お迎えに行く時間が違うみたいで僕は光という少女も、その保護者も、一度も会ったことがないんだけどね。この行動からそつのない人間なんだろうと予想した。
次の日いのりに書かれていた条件で大丈夫だと光という少女に伝えるように言って、僕は週末にいのりと公園に行く予定ができた。
待ち合わせたのは済んでいる場所からは少し離れた大きな公園。朝から行動するのには、いのりを引き取ってからそれなりに慣れた。いのりたちがお昼も一緒に食べたいと言ったからお弁当も持参したよ。といってもこれも家に出入りしている普段の食事を頼んでいる業者に頼んだものだけどね。
梅雨が明けて本格的に夏になる前。少しの蒸し暑さを感じるこの季節は僕はあまり得意じゃない。もっと凍るような寒い季節が好き。いのりには「……毎日黒ばっかりですね」と言われたけど、今日も全身黒い服を着てきた。半袖にしたし、大丈夫でしょ。いのりは半袖のブラウスにデニム生地のオールインワン。足元はスニーカー。革靴の僕に「……公園ですよ?」と言ってきたけど何か問題があるのかな。僕は公園遊びなんてした記憶が無いからよくわからない。
待ち合わせ相手は先に僕といのりを見つけたようで、少し先から「いのりちゃーん!」という軽やかな少女声が聞こえた。
黒くて長い髪にチェックのワンピース。どこかお嬢様風の服装をした少女がいのりの友人という光だろう。ならその横に立つ背の高い青年が保護者か。
小麦色の髪に、蜂蜜を煮詰めたみたいな濃い金色の瞳。ベージュのスラックスに白いスニーカー。白いTシャツかな?その上に薄いブルーのシャツを腕まくりして着てる。ああ、右目の下に黒子があるな。……想像以上に若かった。そもそも僕はてっきり女性が来るものだと思い込んでいた。こういう子どもの付き添いって日本だと殆どが母親であることが多いらしいから。いのりの保護者が男って聞いて、お父さんが来たのかな。でも父親にしては若すぎない?二十歳くらいに見えるんだけど、童顔なだけなのかな。
「……よだか、じゅん……?」
光という少女の保護者が僕の名前を呟くように呼んだ。……僕のことを知ってる、のかな。これまで誰かに気づかれたことはなかったのに。氷の上からおりて、衣装も着ず髪も上げてない僕に気づく人間なんて居るんだね。僕が引退したのは十年近く前なのに。
でも、なんだろうな。僕を見る光という少女の保護者が、僕のことを限りなく眩しそうに、けれどどこか悲しみと諦めを秘めた瞳で見るから。どうしようもなく僕は、彼に手を伸ばしたいっていう衝動を持ってしまった。なんだか薄い色をしていた世界が鮮やかになったような気もする。心臓が一瞬強く脈打ったのも不思議だ。この衝動は何?僕はどうしてしまったの。
「……君は」
「!?はっ、初めまして!あけっ、明浦路っ、司です!!」
夢から覚めたみたいにハッとした青年──明浦路司は勢いよく頭を下げた。そうして頭を上げて気づく。そうか、彼は僕より背が高いのか。日本人の平均身長より背が高い僕は、あまり他人を見上げるという経験は少ない。慎一郎くんと同じくらいかな。
「……僕は夜鷹純」
知ってるみたいだけど名乗るの礼儀だから。
「は、はひっ!ぞんじております!!」
……声の大きい子だな。このテンションで今日一日、大丈夫なの?うるさいのは得意じゃないのに不快感を覚えないことが不思議だった。