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いつかの指が掴むまで(譲テツ/4-⑲)

全体公開 1 1091文字
2026-06-24 00:37:41

『その後の話』

Posted by @12kawa0

 ぽん、という軽い音が俺の手の中で鳴った。音と同時に表示されたのは『起きてるか?』というメッセージ。最初こそ、操作方法がよくわからず、画面上をうろつくばかりだった指も今では迷いなく動かせる。これも、根気よく俺に色々と教えてくれた宮坂さんのおかげだ。
 通話を選択し、あの後の出来事をなんて話そうか、と考える。パッと変わった画面と共に聞こえてきたのは、地の底から響くような友人の声だった。
「僕抜きで、あの人と食べた飯は美味かったか?」
「え、いや、それは」
 少しの間をおいて、聞こえてきたのは愉快そうな笑い声。冗談だ、と続いた言葉に胸を撫で下ろす。
「なんだよ。本気にしたのか? 今更そんなことでとやかく言わないさ。あの人がお前を特別扱いするのなんて、今に始まったことじゃないからな」
 そんなことはないと言いかけてから、これは今、俺が言うことじゃないな、と思う。かわりに、譲介が言うと冗談に聞こえないと伝えれば、今は遠くの地にいる友人は、そうかもな、と相変わらずの食えない態度で答えた。
「でも、まぁ……もう、最悪の事態は起こらないって僕は知ってるからな。お前は宮坂にぞっこんだし」
「おい! 譲介!」
「何だよ。本当のことだろ?」
 くくっという、喉を鳴らすような笑い声は、今日俺に飯を奢った男とよく似ていた。咳払いをひとつしてから、俺は、そんなことよりも、と話しを切り出した。
「何か、俺に聞きたいことがあって連絡をよこしたんじゃないのか?」
「あー、それは、そうだな……
 先ほどまでの軽快さが嘘のように、譲介の口は重くなり、声は小さくなっていき、ついには聴診器が必要な声量へとなってしまった。
…………
「えっ? 何?」
「だから……
「ごめん、よく聞こえないんだけど」
「ッ……だからっ!」
 大きく聞こえた呼吸音の後、意を決したような声色で時介は言った。
「僕が通話を切った後の、あの人の反応はどうだったかって、さっきから聞いてるんだけど……
 言われた言葉を脳内で反芻し、そして思う。こういうところがあるからきっと、俺たちは今日というこの日まで、うまくやれてきたのだろうと。なに笑ってんだよと不機嫌そうな声が聞こえ俺は、自分が無意識のうちに声を出し笑っていたことに気がついた。
「だって、あんなに……ふふっ……かっこよく啖呵を切ってたのに……
「うるさい。もういい。お前に聞いた僕が馬鹿だった、大馬鹿だった」
「ごめん、ごめん。そんなに拗ねるなよ」
 ちゃんと教えるからさ、と機嫌をとるような言葉を口にすれば、最初からそうしろと言う文句が飛んできた。


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