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侑に勝手に告白を断られる

全体公開 HQ 13 1432文字
2026-07-04 22:54:39
Posted by @tirichann

 それは、男子の体育が行われているグラウンドのそばを通りかかった時のことだった。
「苗字さんってかわいない? 侑幼馴染なんやろ? メアド教えてや」
 私が褒められている。自然に足を止め、私は静かに胸を踊らせた。こういうことは直接言われるよりも陰で言われていた方が嬉しい。より本気であると感じられる。
 対して、私の幼馴染である侑は嬉しそうではなかった。自分の幼馴染を褒められて鼻高々になると思っていたのだが(それもそれで腹が立つが)案外仏頂面だ。つまらなさそうな顔をして、視線を遠くにやる。
「あいつ彼氏おんで」
「そうなん? あー結構ショック」
 私を可愛いと言った男子はがくりと項垂れた。侑は平然と嘘をつき、その後も飄々としている。侑のせいで私の彼氏ができる可能性はまた減ったわけだ。例の男子と付き合いたいわけではなかったが、勝手に恋愛の機会を失わされるのでは困る。というか、今までにもこういうことがあったのだろうか。
「侑」
 隣の男子には聞こえない声で侑を呼ぶと、侑は大袈裟に肩を跳ねさせた。私にも言えることだが、喋っていないで真面目に体育の授業を受けるべきだと思う。だがもう女子の体育館に戻る気が失せた私は、侑を人気のない方へ連れ出した。
「彼氏いるって何や」
 侑を詰めれば、案の定きまりが悪い顔をしている。私に嫌がらせをしているつもりだったのだろう。侑は例の男子を結構気に入っていて、私が彼と結ばれるのが癪だった、というところだろうか。何も言わない侑にさらに畳み掛ける。
「私の彼氏って誰なん?」
 私が把握していないのだから、当然存在するはずがない。追い詰められた侑は、急に自分を指差した。
「今から俺と付き合うとかどや? それなら嘘にならんやろ」
 あまりに呆れて、ため息が出る。窮地に追われて、正常な判断ができなくなっているのだろう。私は子供に説教をするような気持ちで言った。
「あんな、私に嫌がらせしたいのはわかるけどもっと直接的にやれや」
「『嫌がらせ』か」
 侑は揚げ足をとるように言葉を繰り返す。その表情は先ほどのようにふざけているものではない。侑が私のことで真面目に考え込むなんて珍しい。
「あんな、俺がバカやってる間に気付けや。本気になってから知らなかったって言われても容赦せんからな」
「はあ?」
 侑は何を言っているのだろう。バカをやっているのはいつものことだ。本気になるとしたらバレーか、たまにテストくらいである。その侑が今静かに怒っているような表情をしていることが、ものすごく怖い。
「ま、ええわ。体育頑張り」
 侑は私を残してグラウンドに去ってしまった。意味がわからず立ち尽くした私は、その数ヶ月後に知ることになる。侑が茶化した口調で付き合わないかと言っていたのは序章に過ぎなかったのだ。本気を出して私に迫る侑は、すごい。
「だから言ったやろ。バカやってる間に気付けやって」
 侑は机の上に私を押し倒して言った。仰向けになって横に流れた乳の上を、侑の手が這う。気付くはずがないだろう。今まで幼馴染としてしか見てこなかった侑が私から男を遠ざけていたところで、悪戯としか思えない。「今から俺と付き合うとかどや?」と言われたところで、それが本気だとわかるわけがない。でも侑はその間中ずっと私が好きで、フラストレーションを溜め続けていたのだ。だから、ここで私の処女が散らされそうになっていることも、仕方ないことなのだ。


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