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ひとにあらず

全体公開 鳩原未来関連 1165文字
2026-07-05 20:09:58

□撃てるようになった鳩原。こんな再会は嫌だ。

Posted by @wtkotaji

 スコープから覗くと眉間が見えた。
 丁度いいと照準を合わせる。
 狙う箇所は目的により様々だが、確実なのは頭部だろう。
 左手に軽く乗せた被筒部は握らずに、小指から握把を右手で握り込み、右肩に固定する。
 息を浅く吸い、長く細く吐き出し、止める。
 あとは心音にさえ注意して引き金を引けば、終わりだ。
 わかっているのに、未だに照準が振れたまま定まらない。
 こちら側を向く何も知らない人の表情が読み取れ、益々細やかに震える手に、鳩原は諦めたように呼吸を再開した。
 ふっと身体が弛む。
 どうやっても、人の形をしたものが撃てない。
 相手の所持する武器や、攻撃の妨害ならば幾らでも出来るのに。
………
 唇を噛む。
 だから駄目だったのだ。
 だから今、自分は此処にいるのに。
「じゃあ、こう考えたらどうだろう」
 吐露する鳩原に男は提案をした。
 淡々とした無機質な声が、鳩原の鼓膜を揺らす。
「アレは人じゃない、 だって」
 まるで、店で料理のメニューを決めかねた時のように簡単に。
 それに何と返したのか、鳩原は未だに思い出せない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ひとにあらず
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 それを避けられたのはほぼ偶然だった。
 威嚇射撃ではなかった。
 明確な意図を感じた。本来ならば首が飛んでいただろう。
 トリオンが漏れる首筋を押さえる。
(もってあと何分だ。ベイルアウト圏外でこれ以上の戦闘はまずい。絵馬達が来る可能性を鑑みて今すぐ下がるべきか、いやこの距離とリロードの時間を考えれば)
 冷静に事態を俯瞰しているようで、二宮は混乱していた。
 その抜群の射撃センスと、弛まぬ努力を続ける強い目的意識を気にいり、隊へ勧誘したのは他ならぬ二宮だ。
撃てるように、なったのか」
「はい、まぁ」
 思ったよりも小さい、呆然とした声が出た。
 それに対し、鳩原はふわりと軽やかに笑う。
 これは誰だ。
 二宮は目の前の立つ者が誰だかわからなくなった。
「だからもう、いいんです。必要ないですから」
 なにをとは言わず「二宮さんならわかると思いますけど」と言葉にしなくても伝わると、疑いもせずに言う。
「切り捨てて大丈夫ですよ」
……
「鳩原先輩!」
 何か言おうとした二宮を遮るように、少年の声が背後から響いた。振り返りざまに二宮が怒鳴る。
「来るな絵馬!」
ユズルも来てたんですか」
 鳩原が戸惑ったようにしたのは数秒だった。
「そっか、」
 申し訳なさそうに。
 しかし、躊躇いもなく。
「──ごめんね、ユズル」
 謝った後の鳩原の動作は、早かった。
 驚愕に眼を見開いたユズルの口が、どうしてと動いたのが見えた。
 
 


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