□撃てるようになった鳩原。こんな再会は嫌だ。
@wtkotaji
スコープから覗くと眉間が見えた。
丁度いいと照準を合わせる。
狙う箇所は目的により様々だが、確実なのは頭部だろう。
左手に軽く乗せた被筒部は握らずに、小指から握把を右手で握り込み、右肩に固定する。
息を浅く吸い、長く細く吐き出し、止める。
あとは心音にさえ注意して引き金を引けば、終わりだ。
わかっているのに、未だに照準が振れたまま定まらない。
こちら側を向く何も知らない人の表情が読み取れ、益々細やかに震える手に、鳩原は諦めたように呼吸を再開した。
ふっと身体が弛む。
どうやっても、人の形をしたものが撃てない。
相手の所持する武器や、攻撃の妨害ならば幾らでも出来るのに。
「………」
唇を噛む。
だから駄目だったのだ。
だから今、自分は此処にいるのに。
「じゃあ、こう考えたらどうだろう」
吐露する鳩原に男は提案をした。
淡々とした無機質な声が、鳩原の鼓膜を揺らす。
「アレは人じゃない、 だって」
まるで、店で料理のメニューを決めかねた時のように簡単に。
それに何と返したのか、鳩原は未だに思い出せない。
ひとにあらず
それを避けられたのはほぼ偶然だった。
威嚇射撃ではなかった。
明確な意図を感じた。本来ならば首が飛んでいただろう。
トリオンが漏れる首筋を押さえる。
(もってあと何分だ。ベイルアウト圏外でこれ以上の戦闘はまずい。絵馬達が来る可能性を鑑みて今すぐ下がるべきか、いやこの距離とリロードの時間を考えれば)
冷静に事態を俯瞰しているようで、二宮は混乱していた。
その抜群の射撃センスと、弛まぬ努力を続ける強い目的意識を気にいり、隊へ勧誘したのは他ならぬ二宮だ。
「…撃てるように、なったのか」
「はい、まぁ」
思ったよりも小さい、呆然とした声が出た。
それに対し、鳩原はふわりと軽やかに笑う。
これは誰だ。
二宮は目の前の立つ者が誰だかわからなくなった。
「だからもう、いいんです。必要ないですから」
なにをとは言わず「二宮さんならわかると思いますけど」と言葉にしなくても伝わると、疑いもせずに言う。
「切り捨てて大丈夫ですよ」
「……」
「鳩原先輩!」
何か言おうとした二宮を遮るように、少年の声が背後から響いた。振り返りざまに二宮が怒鳴る。
「来るな絵馬!」
「…ユズルも来てたんですか」
鳩原が戸惑ったようにしたのは数秒だった。
「そっか、」
申し訳なさそうに。
しかし、躊躇いもなく。
「──ごめんね、ユズル」
謝った後の鳩原の動作は、早かった。
驚愕に眼を見開いたユズルの口が、どうしてと動いたのが見えた。