※個人の感想でしかも(実際に感じたことを可能な限り書き起こした結果)ポエミーです※
※博物館自体の感想は無く、へし切長谷部の感想に終始します※
※役には立たない上に長いです※
よろしければ次へどうぞ。
1月8日は平日の昼ということで、さほど混雑しておらず、一番に博物館へ入ることが出来ました。
ガラスケース越しに目の前に立った瞬間息が止まりました。
長谷部だけが輝いているように明るいんです。
細かく見る前に、この刀、存在全てに、心も体も撃たれたようでした。
ずっと好きだったへし切長谷部ですが、
今までこの刀を好きでいたことは間違いじゃ無かったと確信しました。
衝撃も冷めやらぬまま、まず目を引かれたのは、肌の色味です。
※写真は、本物の100分の1くらいの綺麗さです
目に心地よい、深く沈むような黒色が、艶をたたえています。
光の反射すら滑らかなのに、それでいて鉄らしい固さを持ち合わせている絶妙な地鉄です。
このように深い色の刀は他に見たことがなくて、息を呑むほど驚きました。
研ぎもいいんでしょうね。
【肌について】
解説では鍛えが板目流れとの事。
実物は、よくつんでいること、ガラスケース越しであることから、見え辛く感じました。
ただ、刀身の真ん中に立って、少し角度を調節すると、何とか板目が見えます。
一部、柾目? と思いましたが、あとで調べたところ板目流れと表現する場合、
板目が伸びて柾目に見えるということらしいので見方は合っていそうです。多分。
いずれにしてもきめが細かいので、ガラスケース越しではかなり頑張らないと見えません。
地景も見たくて、色々と角度を変えましたが、私にはガラスケース越しでは、
確認することが出来ず残念でした。
(学芸員の方に聞いたら、やはりガラスケース越しでは確認が難しいとのことです)
直接手に取って光をあてて見れれば、どんなに美しいのでしょう。
【姿について】
姿は、反りが浅く元幅、先幅があまり変わらないので、先細ったり、
反りの強い刀と比べ強い安定感があります。
切っ先の延びたよく切れそうな姿なのに、南北朝の刀剣にありがちな荒々しさは、
私は実物から感じませんでした。
重ねが薄いからか、悠然としているんですけれど、
それは一太刀で命を刈り取る力に裏打ちされた余裕、そんな印象です。
※重ねやや薄い
磨り上げ前の姿は違ったかも知れません。
それはそれで、若い頃ヤンチャしたイケイケの兄ちゃんが歳を経て貫禄を持ったかのようで素敵です。
【刃紋について】
刃紋は、のたれを主調として、上半が小乱れ混じり下半大きく乱れています。
これはかなり特徴的で、ポスターや写真で見てよく知っているものと相違無いのですが、
光の加減で様々変わって面白く見ることが出来ました。
皆焼のため、鎬地まで飛び焼きが入っているのですが、特に下半の飛び焼きが激しくて、
鎺下から物打ち側に向かって、雨が地面に散ったような形で一面に広がっています。
これも光の加減によって姿を現すために、角度でチラチラと見えるのが面白い。
地沸つくと解説にあったので探しましたが、よく判別出来ず。
学芸員の方にしつこく聞いたところ(すみませんでした)、
飛び焼きの周囲にポツポツと散っているのがそれと言われました。
地沸の定義って二つあるらしいのですが、学芸員さんが言っているのは
刃紋の沸が地まで散った方の意味での地沸ですね。
金筋、砂流しなんかもあるらしいのですが見えなかったですね…
やはり自分で持って、角度を変えて見ないと難しそうです。残念。
【帽子について】
帽子は乱れ込んで丸く返る。んー、解説は大丸とありましたが、中丸かなあと思いました。
※写真で帽子の様子を取るのは難しかった…
この乱れ込み方も波が荒れるような形で、凄く好きです。(スケッチした)
【彫り物】
彫り物は掻き通しの棒樋。力強い印象を受けます。
余談ですが樋もあるし、重ねは薄いし、なので刀身自体は持っても割と軽いのではないかと想像します。
【茎】
茎は、刃上がり栗尻、鑢目はすごく見えづらかったのですが、
目をこらして見たところ上の方に傾かない線が見えたので
どうやら切です(後で本を見たら切で合ってた)。
磨り上げの影響で上の方だけ見えるのかしら。
目釘穴が4つ空いていますが、うち3つは埋めてあります。
埋めてある…埋め鉄?は、磨き上げられた銅の色で刀身と良いコントラストでした。
茎尻に近いところに目釘穴が空いていることから、磨り上げてあることが分かります。
銘は、こちら向きに黒田筑前守と金象嵌。思っていたよりも渋い金色で、経てきた年月が偲ばれます。
【拵え】
拵えも、見事でした。
この拵えは有名だしゲームの長谷部も持っているので、親しみがあるのですが、
状態が大変良くて、まるで昨日作ったかのように美しいですね。
金色の部分は一粒一粒が強い黄金色の光を放っていて、刀身と並び、
色のコントラストから相互に引き立て合うかのようでした。
それから鐔が思ったよりも厚く重そうで、切り下ろしたら、
豆腐でも切るように人が切れるんだろうなと推測できます。
柄糸の色味も良かったです。少しあせたようなえんじ色なのですが、
キツイ色では無いので、刀身の印象と比べ、品が良く控え目に見え可愛らしい。
ハバキの展示もあったのですが、これもまた金ピカの二重ハバキです。
紋が彫られており、随分豪華ですね。
やはり、美術品として大事に大事に大事にされてきた経緯が偲ばれます。
長谷部は、毎日等身大のポスターを見ていて、これも美しいけれど、
本物はもっと美しいんだろうなと思って期待に胸を膨らませて来ました。
ただ、どこかで、もし期待しているほどの美しさで無かったら…目の前にしても何も感じなかったら…
今までの長谷部への思いが消えてしまうかも知れないと思って、怖くもありました。
でも、そうではなかった。私が好きになって、追いかけて来たものは確かに価値がある。
長谷部があんなに艶やかな黒さを持っているとは、
あんなに見ごたえのある皆焼を持っているとは、思いもしなかったです。
結局、目にすることで満足するどころか、さらに長谷部の魅力に取りつかれてしまいました。
初めて本物の長谷部と出会った、この日のことは忘れません。
行く機会がある方は、良い物だと見ただけでわかると思うので、ぜひ楽しんでらしてください。