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レイスと魔剣

@kanafuyu
ふゆしろカナエ
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2016-01-27 13:07:49

メイガスソウル壁打ち。ほぼ一時間で書きました。自分用メモなので、説明なくてすいません。


 *
 
 1日目。
 ひどい悪夢を見た。
 事故の時の怪我をそのまま残した父さんがオレをなじる夢だ。
 入院してからずいぶん経つが、夢を見たのは初めてだ。

 2日目。
 同じ夢を見た。
 父さんはオレに死ねという。
 オレが八百長に加わらなかったから、自分は殺されたと言っている。
 死ぬのは構わないが、それで終わりになって、それで何なんだ?

 3日目。
 また同じ夢だ。
 今度は死んだ母さんまで出てきた。
 全部知っていることだから、辛いがどうにもならない。
 オレのせいだってことは全部わかってる。
 誰も憎いとは思わない。
 
 4日目。
 ようやく気付いた。
 夢を見るようになったのは、ティモシーから古い盾のレプリカをもらってからだ。
 もしかして、そのせいだろうか。
 オレはかなり焦燥しているらしい。
 看護婦から顔色が悪いと言われた。




 これで五日目だ。
 レイス・マクファーソンは、目の前に広がる情景を見ながらため息をついた。
 父が自分をなじっている。死んだはずの父は、事故に遭った時の怪我をそのまま残して、息子の自分を非難している。
 お前のせいだ。
 お前のせいだ。
 お前のせいで、こんなことに。
 ──知ってるよ、父さん。
 レイスはこれが夢だと知っている。どういうわけか、ここ数日こんな夢ばかり見ている。
 父の怪我は凄惨なもので、頭は割れ目鼻は顔半分しか判別できない状態だ。血をしたたらせ、事故直後の様子を忠実に再現している。
 でも、レイスは動じなかった。
 目を背けることなく、それを自分の目で見、それを心の中に焼き付けているからだ。自分のせいで、父がマフィアの報復に遭い、路地裏で轢かれて死んだのは事実であり、逃れようのない自分の罪である。
 父はレイスを殺そうと、パブのカウンターの向こうから包丁を取り出し切りかかってくる。カウンターの上には、応戦しろとばかりに彼の使い慣れたゴルフクラブが置かれているのだが、レイスがそれに手を伸ばすことはない。
 彼は冷静に包丁を叩き落とし、父親を抱きしめ、なだめるのだ。
 ただ、不愉快だった。
 どうしてこんな夢ばかり見るのか。何か奇妙な力が働いているのではないかとすら思ってしまう。
「父さん、ちょっと待っててもらえないか」
 やおらレイスは立ち上がって、大股に歩きだした。
 舞台は父がいつも根城にしていたパブである。レイスはつかつかとドアに向かって歩き出し、それを力強く開いてみた。
 すると一瞬にして、周辺の風景が“溶けた”。
 砂糖菓子のように溶けた中に残ったのは、何か白い靄のようなものだ。宙に浮いたそれは伸縮を繰り返しながらうごめいている。
「お前か」
 レイスは躊躇なくそれに手を伸ばした。





 6日目。
 パブのドアを開けてみた。なんだか白っぽいやつがいた。
 オレを見てビビってるみたいだった。
 聞いたら、そいつは古い剣に棲みついてる悪霊? みたいなやつで。
 オレを乗っ取りたいんだそうだ。
 明日また話すことにした。

 7日目。
 今度はトイレの窓から外に出て、白っぽいやつと話した。
 なんで自分に話しかけてくるのか、ってやつ聞いてきた。
 名前を聞いたら、ようやく教えてくれた。
 ウルファスドルグっていうらしい。
 雪の色をした綺麗な剣だった。

 *
 
「こっち来んなよ。ここはバックヤードなんだよ、劇場の裏側なの! 役者が休むところなんだよ。舞台裏見てどうすんだよ。早く客席に戻れよ」
「嫌だよ、つまんねえし」
「なんでだ? お前、魔法の力も無いくせに、どうして耐えられるんだ」
「全部見てきたことだからだよ。全部知ってるし、別に怖くないし」
「普通は5日で落ちるんだぞ!」
「なあちょっと聞きたいんだけど、どうしてお前はオレの身体を乗っ取りたいわけ?」
「そりゃお前、誰かに扱ってもらわねえと動けないし」
「動いてどうなんの、なんで動きたいの?」
「血を見るのが好きなの! 魔剣ってそういうもんだろ、人を斬りたいの!」
「斬ったらそれで終わりじゃん? つまんなくない?」
「つまんなくねーよ、おれはそういう存在なの!」
「殺さなきゃだめなのか? 血だけでもオッケーにならない?」
「ならねえよ、肉を斬る感覚がいいんじゃねーか。食べもんと一緒なんだよ! お前らだって、毎日メシ食うだろうが。それと一緒なの! おれは人の血と魂が無いと生きていけないの!」
「血と魂か。んー、でもそれだったら他で代用できるんじゃないかな。例えば食肉工場とかでさ……」
「待て、お前。このウルファスドルグを肉切り包丁か何かにする気か」
「いや飢えてるんだったらそれもいいんじゃないかと思ってさ。オレと一緒にくる? そうしたら週に一回、食肉工場に連れてってやるよ」
「うるさい、お前正気か。おれは魔剣ウルファスドルグだぞ、スヴェン王が手にしてたこともある由緒正しい魔法剣なんだよ! 見ろ、この刀身の輝きを。血に飢えたバイキングがおれをつくったんだ。それを肉切り包丁みたいに……」
「昔は昔、今は今だ。残念ながら、今は戦乱の世じゃない。それにデンマークは今すごく平和な国だぜ? オレ、ヒュンメル大好き」
「知るか! 今だって殺し合いはある」
「だけど昔の感覚じゃいられないだろ。あのさ、思ったんだけど。お前が欲しいのって血と魂じゃないんかもよ? オレ、ゴルフやってたから分かるんだよ。勝負に勝ちたいわけじゃないんだ。勝ちそうな時、うまくいきそうな時に自分の中から湧き上がってくる感覚があってさ。それが好きだからゴルフやってた。お前もたぶんそうなんじゃないかな」
「何言ってんだお前。意味わかんねーよ」
「現代の生き方教えてやるよ。乗っ取るとか乗っ取られないとかじゃなくてさ。オレたちたぶんうまくやれる。友達になれる」
「……友達だと? どうやってなるんだよ、おれとお前が」
「馬鹿だな。そんなの、なってから考えるんだよ」


 *


 8日目。
 もらった盾が消えて、オレの左手の甲に紋章が移ってた。
 あと看護婦がオレを見て驚いた。
 一夜にして、髪が銀色に変わってたからだ。それに麻痺して動かなかったはずの左半身がウソみたいに自由に動くようになってた。

 9日目。
 退院した。
 そして、オレには友達が一人増えた。


(fin..)
 
 


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