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OPとEDに分けて差し込む予定のVDで、配信と同時にこちらのSSも配布予定でした。
結局ラジオ共々出すことはありませんでしたので当時のまま掲載致します。
パートは『*』で分けております。
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「ふっ! はああっ!」
刃を交える音と共に何者かが奴と己の間に割って入ってきた。
誰なんだと疑問符を浮かべつつ敵と日を遮るように立ったそいつを見遣ると、奴は俺を一瞥し、不敵に笑むと俺に向かってこう口を開く。
「遅参したかと思ったが杞憂だったようだな」
遅刻なんてとんでもない、まさしく今来ないでどうするよって位美味しい瞬間にやって来た奴にイラッとして、地に足、もとい、尻を付けた状態で格好付けの足を蹴ってやった。
*
「これで……終いだ!」
「ぐあっ!」
ドサッ、と最後の一人が奴の剣撃によって地に伏す。
たった一人加わっただけで先程までの劣勢は悪夢だったのかと思う程呆気無く形勢逆転、俺達が戦った意味はあったのか、無駄ではなかったのかとなんとも卑屈になってしまうほど鮮やかな戦い振りにため息が出る。
「どうしたのだ、此度の戦は片付いた、勝鬨の声を上げるまで行かずとも喜ぶ位あっても良いのでは無いか?」
戦いの功労者殿は俺の溜息が心底不思議だと目を丸くしそして次の瞬間には眉を寄せ、怪訝な表情でそう宣いやがったので、俺は先程とは違い文字通り地に足付けて立っているのを良い事に奴の太ももに軽く蹴りを入れてやった。
すると予想以上に威力があったのかパシンと言う気持ちの良い音と共に「痛っ」と声が上がる。
「最初から最後まで良い格好させてられっかよ、八つ当たりの蹴りくらい大人しく受けとけ!」
「はぁ!? そんな事で私は蹴られたのか! 皆で勝ち取った勝利だろうに……」
「お前が来てからはずっと独壇場だったじゃねーか、何が皆の勝利だ」
「そんな訳無かろう! 今までお前は何を見て何と戦っていたのだ、大体――」
俺の馬鹿が切欠で始まった口論、最後の最後で締まらないなと思いつつもこちらの方が今日の功労者に合っているなと思った。
END
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