@satomi8429
時間軸は放棄。
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人は言う。
たとえ死んでも、生きている者が憶えている限りその人は生き続けると。
では生きている者が忘れてしまったら。
俺が忘れてしまったら、彼らはどうなるのか。
彼らの生きていた証は。俺の生まれ育った村が存在した証は。
消えゆく思い出の欠片を必死でかき集めた。
なにか手がかりになるものを。
なんでもいい。布切れ一枚でもいい。
忘れてしまうことが怖かった。
忘れても生きている自分が怖かった。
「そうやって過去にしがみついてどうする気だ、芳准」
師はあえて俺の過去の―もう死んだ俺の名前を呼んだ。
人間は忘れる生き物だ。
目にすること、耳にすることがなくなれば、時間が経てばやがて忘れてしまう。
忘れたくないのならば、そこへしがみつくしかないではないか。
「そんなことを続けていると、いつか背負ったものの重さで身動きが取れなくなるぞ」
俺は背を向けたまま耳を貸さなかった。
師もそれ以上何も言わなかった。
昔の話だ。
忘れてくれ。
俯いて仮面を貼り付けると、俺は君にも背を向けた。