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にほへしワンドロ お題「身支度」

🕊️みえろ🦋
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2016-04-23 21:58:40

公式絵師さまによる髪結い号さんイラストからの思い付きですがあまり身支度してないかも……

 柔らかな日差しの下で小鳥がさえずり始める頃、日本号は目を覚ました。障子越しでも分かるほどに外は明るく、空気もからっと乾いた爽やかな朝だった。
 片手で作った手枕に頭を載せると、日本号は隣で眠る長谷部を見た。長谷部は安らかな寝息を立てており、まだ熟睡している様子だった。
 眉間のしわもない。唇も引き結ばれていない。表情の消えた長谷部の顔は嘘のように整っていて、飽きるほどに目にしているはずの日本号でさえ、思わず見入ってしまうほどだった。
 二人分の体温がこもったぬくい寝具よりも、その寝顔に未練を感じながら、日本号は身を起こした。隣の長谷部を起こさぬよう、大きな身体を慎重に布団から引き出す。追いかけるように寝返りを打った長谷部は、布団でそっとくるんでおいた。
 長谷部は今日は非番で、日本号には畑仕事が当たっていた。
 日本号は裸のままで大きく伸びをした。人の子が見れば誰もが羨むような、あるいは見惚れるような逞しい肉体を惜しげもなく晒しながら、凝った身体を解すようにしばらく動かす。それから下着をつけ、戦闘時に身につけるものよりもゆったりとした寸法にあつらえられたツナギに袖を通すと、気に入りのゴーグルを首にかけた。
 寝乱れて顔にかかる髪を払うように、日本号は首を振った。
(そろそろ、か……)
 髪を結おうと手を掛けたところで、視界の端でもぞもぞと動く気配があった。
「う、ん……、にほんごう?」
 日本号の口元にうっすらと笑みが浮かんだ。どうやら、眠り姫が目を覚ましたようだ。日本号は紐を口にくわえ、癖の強い髪を手櫛で集めながら長谷部を見やった。布団から頭だけをひょっこりと出し、辺りを見回している長谷部は、どうやら日本号の姿を探しているようだった。
 どれだけ慎重に寝具を抜け出しても、隣に日本号がいなくなると、長谷部は必ず目を覚ます。それもちょうど、服を身につけた日本号が髪を結い始める時分に。
 まとめた髪を片手で押さえ、紐を口から外すと、日本号は長谷部に声をかけた。
「まだ寝てろ。後で何か食うものを持ってきてやる」
 長谷部はしばらくぼんやりとまばたきを繰り返していたが、やがて寝ぼけまなこのままうなずくと、どこか嬉しそうな顔で枕に頭を埋めた。
 そんな長谷部を見て、日本号の笑みが深くなる。毎朝同じ時間に自然に目覚め、すぐに活動できる日本号と違い、長谷部は夜遅くまで起きていた時には朝寝をしがちだ。そのため、翌日が非番の日以外は、いつも早めに床についているし、今日のような日――つまり日本号と同衾した次の日は、昼頃まで眠っていることも少なくない。
 顔の半ばまでを寝具に埋めて目を閉じている長谷部を見ながら、日本号はぎゅっと髪を縛る紐を引き締めた。
「しっかし……。いつもいつも測ったように同じ頃合いに目を覚ますよな……」
 おもしれえ、と独り言のように呟くと、眠っているとばかり思っていた長谷部からの答えがあった。
「……隣にお前がいないと、寒い」
 日本号は目を丸くした。長谷部は寝具の中からくぐもった声でそれだけを言うと、今度は頭まで布団をかぶってしまった。
 ぴんと張っていた髪紐が指の間をすり抜けて、髪がぱらぱらと顔に落ちていく。髪を結う途中の姿勢のままで、日本号はしばらく固まっていた。
 長かった冬はすでに遠くに過ぎ去り、今は春。すなわち最も心地良く朝寝が出来る季節だった。
(そんな時に、寒い、だって?)
 わざとなのか、無意識なのかは分からないが、そんなことを言われたら放っておけるわけがないではないか。
 日本号は髪を結うのをやめた。長谷部はおそらく昼頃まで寝ているだろうから、食事は昼食からでいい。日本号自身は腹は減っていたが、眠ってしまえば関係ない。畑仕事は、午後からでも十分こなせる仕事だ。
 それらを素早く決断すると、日本号は身につけたばかりのつなぎを脱ぎ捨てて下着姿になると、再び長谷部の隣に身を横たえた。待っていたかのように胸にすり寄ってきた長谷部が、満足げに喉を鳴らす。そんな姿にかすかに苦笑を浮かべながら、片手で長谷部の背を抱くと、日本号も目を閉じた。
 朝寝をするにはぴったりの、暖かな春の日のことだった。

2016.04.23


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