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格闘家・十四松×魔導士・一松

くろひつじ@執行済
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2016-07-03 18:47:19

Twitterの「#フォロワーさんの一枚絵を勝手に小説にして怒らないって人はリプください」タグで書きました。
元にしたイラストは、39郎さんのこちらのイラストです

 不思議な詠唱が終わると、かざした杖の先から水色の優しい光が溢れ出て、腕と足の傷がみるみる治っていった。
「わはー。回復魔法ありがてぇ」
「……こっちこそ、助けてくれてありがと」
 好戦的な魔物が多いという森の中。魔導士・一松はなるべく戦闘にならないように気を付けて進んでいたが、魔法攻撃が効かない魔物に追い詰められてしまって絶体絶命のピンチであった。
 そこをたまたま通りかかった格闘家・十四松に助けられた。お礼代わりにと、一松は十四松が魔物との戦闘で負った傷も含め、回復魔法で彼の傷を綺麗に治したのだった。
「魔導士さん、この辺じゃ見ないけど、旅の人?」
「……うん。探し物をしていて」
「探し物?」
「この森を抜けた先の山の上にある薬草が欲しくて。仲間には絶対に里から出るなって言われてたけど……友達が病気だから」
 魔導士として半人前な自覚はあった。だけど、魔法では治せない病気の友達を治してあげたくて、住んでいた魔導士の里をこっそり飛び出した。
「攻撃系の魔法は得意じゃなくて。……だから、本当に助かりました」
 ありがとうございます、とぺこりと頭を下げる一松を、十四松はふむ、と観察する。
 猫のようなシルエットのローブに、大きな杖とカバン。確かに少し頼りなさげだし、攻撃魔法は苦手そうだが、魔法の腕は確かなようだ。
「ふーん。けっこう立派な魔導士さんに見えるし、一人前じゃなくても修行で外に出るのは普通だ思うんだけどなー」
「あーそれは……」
 言いかけたところで、背後から大きな咆哮が聞こえた。
 鋭い牙に、大きな爪。虎のような姿をしていたが、ライオンのようなたてがみと、蛇のようなしっぽをもった魔物がそこにいた。大きく開いた口からは鋭い牙と、赤い舌が見え隠れする。
 自分たちより何十倍も大きい体をした魔物は、ふさふさだが丸太のように太い前足を、爪を光らせながらこちらに向かって振り下ろしてきた。
 十四松は一松をひょいと肩に担ぐように持ち上げて、魔物の攻撃をひらりと躱す。
「確かに魔物の多い森だけど、こんな連続で戦闘になるのは初めてだなぁ」
 そういう十四松の顔に少し嬉しそうな色が見えた。戦うのを楽しむ戦闘狂なのかもしれない。
「……たぶん、僕のせいだ」
「えー?」
 一松を肩に担いだまま、十四松は器用に敵の攻撃をかわし続け、ある程度距離をとると脱兎のごとく走りだす。
「なんでー?」
「俺の血、魔物とかを引き寄せる匂いがするんだって。だからずっと結界を張った里から出ちゃいけないって」
「わーマジかー」
 そこで十四松は、魔物に襲われかけた一松を見かけた時に感じたものの正体を理解する。
「なるほどねぇ。それで魔導士さん、やたら『美味しそう』な匂いがするわけだー」
「……え?」
「いやー俺もさーちょっとだけ魔物の血が入っててねー。魔物気持ちがちょーっとだけ分かるんだよねー」
 わははと笑いながら十四松は地面を駆ける。
 そして、樹木の密生地帯に入っても、その速さは衰えなかった。木の枝と枝を一松を抱えたまま複雑に飛び回り、魔物の追従から逃れ切った。
「ふー、もう大丈夫かな?」
「……ありがとう」
 巨大な樹の枝の上で、十四松はようやく一松をおろす。
「……あんた、魔物の血が入ってんの」
「うん!あ、でもへーきだよ。この身体の模様で魔物のチカラは抑えてるから」
 しっかりとした筋肉で鍛えられ、何も身に着けていない十四松の上半身。その胸元から腹、腕にかけて蔦が這ったような呪いの模様が描かれていた。
「チカラは抑えられてるけどさ……魔導士さんからすごくイイ匂いするのは、分かる」
 そう言って、十四松は一松の耳元に鼻を近づけて、そのまま耳朶をべろりと舐めた。
「いっ……ちょっと!」
 制止する声も聞かず、十四松は一松の耳から首筋に舌を滑らせて来る。ちょっとだけいやらしい動きに、身体が熱くなってきて、顔がだんだんと赤くなる。
「ねぇ、魔導士さん。俺、あんたのこと欲しくなっちゃった」
「……は?」
 耳元でささやかれた言葉にドキリとした。
「魔導士さんの探し物手伝うからさ、一緒にいていい?イイデショ?」
 そう言ってこちらを見つめる目がまっすぐで、逸らせない。見つめあったまま、無言のまま、十四松の唇が自分の口元に近づいてきて、胸がバクバクと相手に聞こえそうなほど鳴っている。魅入られて身動きができない。
 唇が触れるか触れないかまで近づいた辺りで、ゴゴゴゴ……と凄まじい地響きがした。
「うぉ?!」
 その音にお互い我に返り、辺りを見渡す。すぐそばの大木がゆっくりと傾いで、倒れていくのが見えた。先ほど撒いたと思った魔物が、どうやらこちらを再び見つけたらしい。
 凄まじい咆哮がして、魔物の顔がすぐ近くまで迫っている。
 十四松はにやりと笑うと、再び一松をその肩に担ぐ。
「おまえ、しつこいなー」
 魔物に向かって呆れたような言葉をかける。そしてベロリと舌を出し、挑発するように片手で魔物にこいこいと手招きをする。
「残念だけど、こいつはもう俺んだからね。欲しかったら力づくできなよ」
「……いや、僕まだ何も言ってないんだけど」
 おとなしく担がれたまま、一松は十四松の言動に物申したが、十四松は聞く耳などないようだ。
 魔物は十四松の挑発を理解したのか、再び咆哮をあげ、巨大な前足を振り下ろしてくる。十四松はやはりひらりと躱して別の樹の枝へと飛び移る。凄まじい轟音と共に、先ほどまでたっていた枝を伸ばした樹が倒れていく。
「よっしゃー逃げるよー!」
「あ、戦わないんだ」
「あんなでっかいのはちょっと無理かなー」
「マジかー」
 ひらりひらりと木の枝を飛び移りながら、十四松は一松を抱えたまま森の先の方へと向かって移動する。
 なんとも不純な理由ながら、新しい仲間を得た魔導士・一松。
 彼の薬草探しの旅はまだまだ続く。

<おしまい>


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