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両想い以上恋人未満

くろひつじ@執行済
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2016-07-05 17:38:07

Twitterの「#フォロワーさんの一枚絵を勝手に小説にして怒らないって人はリプください」タグで書きました。
元にしたやまださんのイラストはこちら。

 ――あぁ、またか。
 昼下がりのうたた寝。
 そこから目覚めたはずなのに、見慣れた部屋の風景は真っ白な空間になり果てていた。
 天も地も分からない。
 ただ、自分が松野一松で、世界が弟の手によって壊れてしまっている状態だというのは分かった。
 自分の手に視線を落とし、ぐーぱーさせてみる。ちゃんと人の形をして、うたた寝する前と変わらない様子に、ふむ、と少し考える。
 ――今回はこんな感じか。
 弟は神様でもなんでもないのだけど、時々考えすぎて、世界を壊してしまうことがある。
 何故そんなことができるかはわからないけど、弟の十四松は、そういうヤツなのだ。
「十四松?」
 世界が壊れる前、うたた寝をする前の僕は、部屋のソファに座っていて、同じ室内には他の兄弟全員が揃っていたはず。それが跡形もなく消え失せて、なんかカラフルでキラキラした破片が舞う、真っ白な世界になったのだから、十四松はそう遠くにはいないだろう。
 それが形として見えないということは、きっとまた、自分自身すらもその形を壊してしまったに違いない。
 ――やれやれ、手のかかる弟だ。
「十四松?いるの?」
 頭をかいて、キラキラが光るだけの何もない虚空に呼びかける。うたた寝するときと変わらない、ソファに座った体制のままで。こう何もないんじゃ、立ってようが座ってようが関係ないしね。
「十四松ー?」
 探すような声に、部屋の隅だったはずの場所で、キラキラとした破片が妙に煌いているのに気付いた。ああ、そこにいるんだな。
「……いるなら返事してよ、十四松」
 そちらを見やりながら言うと、妙に煌いていた破片がゆっくりと人の形を成すようにうごめいていく。
「……にいさん」
 頭に響くような、空間に響くような、ぐわんぐわんと空鳴りのような声が返事を返した。
「今日は、何を考えてたの?」
 姿はまだ見えないけれど、きっとそこにいるらしい、十四松に向かって、なるべくなんでもない風に話しかける。
「……兄さんのこと」
「そっか……」
 ここ最近の十四松の『悩み事』。
 その原因は、僕だ。
「兄さん」
「んー?」
「兄さんは僕のこと、好き?」
 少し震えるような声で聞かれる。もう何度目だろうか。
 僕は決まってこう答える。
「好きだよ」
 当たり前だ。
 兄弟じゃないか。
 おんなじような顔ばかり6人もいるけれど、どうしたって離れようもない、血を分けた兄弟だ。
「僕はいろんなことをむつかしく考えて、世界を壊したりさ、変なことをするでしょう?」
「うん」
「それでも好き?」
「好きだよ」
 たしかに、いろいろと変なことをしでかすし、最初は吃驚したけれど、それはこいつが十四松という存在だからと思えば、まぁいいか、という気持ちでいられた。
 だから、そんなことで嫌いにはならない。
「……僕が兄さんのこと、兄弟以上に好きだとしても?」
「……うん」
 少し前の話。
 泣きながら、十四松に好きだと言われた。
 兄弟以上に好きなのだと。愛しているのだと。
「でも、兄さんは僕を兄弟以上に好きにはなってくれないでしょう?」
「うん……」
 自分で言った言葉を思い出す。
『お前のことは好きだけど、そういう風には見れないよ』
 そう答えてから、十四松は時々、こうやって物思いに耽るようになった。
「それでも、僕のこと、好き?」
「うん。それでもお前が好きだよ」
「……僕は、どうにもあきらめきれなくて、うだうだとこうやって兄さんのことを考えるあまりに兄さん以外のものを壊してしまうんだよ」
 バリンバリンとガラスが割れるような、何かが壊れる音が響く。真っ白で綺麗なのに、なんだか儚くて切ない気持ちにさせる世界。
「そうだね」
「それでも好き?」
「うん。好きだよ」
 色んなことを考えて、嘘だって見抜けてしまう十四松が、考え込んでしまう原因は、僕が嘘を吐いていることにある。
「……どうして?」
「それが、お前だから」
 だから、嘘を吐く。
「どうして?」
「誰かを好きってわけじゃないけど、やっぱり十四松は十四松だから。それ以上には見れないよ」
 ごめんね。
 僕も、お前と同じ気持ちで好きだよ。
 好きだけど、ダメなんだ。
 好きだから、ダメなんだ。
「それでも、僕は兄さんが好きなんだよ……」
 鼻をすする音が聞こえる。ああ、また泣いてるの?
 ごめんね。
 僕は臆病者だから、兄弟以上にはなれないんだ。
 両想い以上に、なれないんだ。
「うん。それでいいよ。それがお前なら、そんなお前を好きでいるよ」
 とりあえず、手を差し出した。
 パリンパリン。
 先ほどより軽い、何かが割れる音がする。
「……ごめんなさい」
 目の前にある、十四松の意識の塊がゆらりと揺れて、僕の手を握る。
「いいよ、べつに」
 その手をぎゅっと握り返すと、意識だけの存在がゆっくりと十四松の姿を作り始める。
 すると世界のてっぺんに穴が開いた。卵の殻みたいなものが割れて剥がれ落ちてきて、そこから鮮やかな青空が覗いた。
 それを合図にするように、世界のひび割れは辺り一面に広がって、ガラガラと音を立てるように崩れていって、真っ白な空間の向こう側から、青い空、灰色の道路、緑の街路樹……思考によって壊された世界が姿を現す。
 辺りをキラキラ光って漂っていた破片たちも、それぞれが少しずつ集まって、人の形を成していく。
 僕に抱き着いて、肩でぐすんと涙と鼻水を吹いている十四松の頭をそっとなでる。
 好きになってくれてありがとう。
 ごめんね。
 それでも、僕はお前が好きだよ。


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