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【ムゲンWARS】囚われざるもの

全体公開 1919文字
2016-07-11 19:35:46

大牢獄探検

Posted by @mugenwars

いつもより
ずっとずっと低い視界を
ずっとずっと早い速度で駆け抜ける。

彼との鬼ごっこはとてもたのしい。


【囚われざるもの】


ごぽりと音をたてて、体が崩れる。
否、これは崩しているのである。
すべてはスリル溢れる鬼ごっこのため。
溶けきった体は流動する赤黒い液体。
だが機動力だけは全力で高める。

いわゆるあれだ。
はぐれなんとか。

経験値をものすごく稼げそうな形状になったら、
いよいよスタートである。


壁を、天井を、柱を、あらゆる場所を駆け巡る。
至るところにある鉄格子には触れてはならない。
中に入るのも厳禁。
これは彼の仕事場だ。容易に荒らしてはならない。
まあ容易に荒らせはしないのだが。

走っていると人影を見る。

片方の角がない魔族。
なんとどこかの魔王らしい。詳しくは知らない。

金髪の人間。
この姿で走っていてもときどき目が合う。
恐るべし。

翠色。
チェス仲間だ。
とてもつよい。なんの勇者だったか
どうも姿に引っ張られて思考力が鈍るからいかん。

結構走り回ったが、
彼は追いかけてこない。
もうすこし奥へいってみよう。



長く長く続く廊下。
壁はすべて鉄格子だ。
囚われているものの息づかいや、呻き声が時折響く。

知らない姿を見た。
白い羽だ。
まるで天使のような見た目をしている。
でもなぜだろう。
なぜあんなにも壊れそうな顔をしているのだろう。

視線の先には、一人の男が囚われている。

銀色。
あれは勇者だ。
目は閉じている。気を失っているのか、眠っているのか、なんにせよあの白い羽の魔族はあれを眺めてあんな顔をしているらしい。

なぜだろう。

あんな顔を、昔見た気がした。
しかし、やはり姿に引っ張られて思考が鈍る。
溶岩のそこに沈んだ記憶を引き上げる前に、
溶岩の中から疑問の声が沸き上がってわめきたてる。

なぜ。

なぜ何故なぜナゼ何ぜなぜ、なゼ、何故なぜ

なんで。

背後から異様な気配を感じ取って、
疑問の気泡は一斉に弾けて消える。


「こんなところまで侵入するとは良い度胸だな、炎の」

ごごご、という効果音が幻聴で聞こえる。
見る必要は一切ないのだが、目の位置を動かして背後を見た。
大きな両手。
獣の耳。
獰猛な牙。

ああ、彼だ。



見つかってしまった!!!!!

焦りが湧き出てくるが、いまは冷や汗などかかない。
安心して心のなかだけで焦ることができるのだ。
私は言葉を拾い上げて彼に言う。

「おおかみさん、なぜあなたのりょうてはそんなにおおきいの」

おおかみさんは答える。

「お前みたいなやつを捕まえるためだ、よ!!!」

地面を叩き割る勢いで両手が振るわれる。
実際に地面が抉られた。
そんな乱暴にされては、全速力で逃げる他ないではないか。

「まてこの、今日こそ檻のなかにぶちこんでやる」

彼はものすごい早さの私をものすごい早さで追いかけてくる。

これがあるから止められないのだ!



逃げる最中、
驚いた顔の白い羽のやつとすれ違った。

ああ、
そんな顔ができるなら、
まだ大丈夫だろう。


ーーーーーーーーーーーーーーー

「だぁー、つかれたあ」

玉座に腰掛け、炎の魔王は息を吐く。

「おかえりなさいませまおうさま」

地獄鳥が出迎える。
と一緒に厨房のほうの廊下から金色の勇者がお玉片手にやってくる。

「あ!魔王!お前どこいってやがった!!」

炎の魔王は足を投げ出しながら金色の勇者を見ることなくだらけはじめる。

「おまえこそなんだ、料理人の手は足りている」

ぎく、という音がした気がした。
金色の勇者は顔を少し赤くしてお玉を背後に隠した。

「いや、これは、こいつらが人間の料理教えてくれって言うから

金色の勇者の後ろで、白い鳥がわらわらしているのを目でとらえてから、
炎の魔王はゆっくり目を閉じた。

「じゃあ、今日の晩餐は期待しよう」

そのまま寝る体勢に入っていく。

「おま、寝る気か!勇者がきてんのに寝る魔王がいるかよ!そもそも俺はお前を倒しに

「ゆうしゃどの、つづきをおしえてください!」
「なべがこげてしまいます!」
「ゆうしゃどのかざりぎりのしかたを」
「ゆうしゃどのー!」

白い羽の波に連れ去られるように、金色の勇者がつれていかれる。

「わー!わかったわかったからやめろ!押すなって!ぎゃっ」

どこかで転んで踏まれただろう声を聞きながら、炎の魔王は意識の底へと落ちていく。

今日見たものを忘れないために。


今日見た彼らを次にあったときは思い出せるように。


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