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あつトド*蝶か花か

くろひつじ@執行済
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2016-07-17 13:04:49

書いてみたかったので。
セックスまではいきませんでした( ˘ω˘)

 ラジオを聞く機会なんて、車に乗るときくらいだ。それも友達の車で。
 カーステレオから流れてくる、愛を無邪気に歌う軽快なJ-POPが鼻につく。
「ご機嫌斜めだね、トド松くん」
 隣でハンドルを握っているのは、車の持ち主である友達のアツシくんだ。
「当たり前じゃん」
 合コンの帰り。僕は助手席に座って、むすっとふくれ面。
「今日の合コンも、みーんなアツシくんしか見てなかったじゃん」
「……僕を呼ばなきゃいいのに」
「だって、他に合コン出てくれそうな人、いないんだもん」
 アツシくんを呼ぶと言うと、やっぱり女の子たちの反応が違う。勝ちに行きたいなら、本人のいう通り呼ばなきゃいいんだけど、花がなければ蝶は寄り付かない。
 いつものようにお洒落なシャツにピンクのネクタイ、ハーフパンツとそれなりにウケのいい格好で行ったけど、無職童貞ニートの僕を気に入ってくれるような子なんていなかった。
 流れ去っていく街並みはどこもキラキラとして綺麗で、自分の惨めさを余計に際立たせているようで、憎らしく思える。
「ははっ。それは光栄だなぁ」
 アツシくんはカッコいい。
 切れ長の目に、鼻筋も通ってて、お金持ってるし、車持ってるし。
 なにより、優しい。
 今日だって、2次会の流れになったのに、つまんなそうな僕を見て、辞めちゃった。
 そして「車で送ってあげる」なんて言って、僕を車に連れ込んじゃってさ。
 ーーそりゃ女の子も落ちるよね。
 はぁ、とため息を吐く。
 自分とは身分が違いすぎる。
 なのに、高校の頃仲が良かったってだけで、20歳超えても付き合っているのだから、不思議なものだ。
「アツシくん、なんで僕なんかの誘いにのるの?」
「えー?」
「アツシくんなら、まだもっとレベルの高い女の子たちと合コンとか、できるでしょ?」
「んーそうだなぁ」
 アツシくんがちょっと考えるような顔をした。
 アツシくんは上場企業に就職してるし、親もお金持ち。それだけステータスのある一軍様なら引く手数多で、こんな大学生みたいな合コンなんか来なくても良さそうなものなのに。
「トド松くんが、面白いから、かな」
「……なにそれ」
 にっこり笑って答える彼に、なんだかバカにされたような気がして、ムッとしてそっぽを向いた。
「……あれ?」
 窓の外を見ると、いつもと違う、見慣れない風景が流れている。
「アツシくん、こっち、家の方向と違うんだけど」
「行きたいところがあるんだ」
 そう言ってアツシくんはハンドルをきった。



 車はどんどん市街地を離れ、周囲は自然の多い風景に変わっていく。
 いったいどこに行く気なんだろう?と少し緊張してしまったが、着いた場所は街を見渡せる展望台だった。
 車から降りて柵のそばまで行くと、煌びやかな街灯りで光り輝く光景が広がっていて、なかなかの絶景だった。
「こんな夜景の綺麗なところ……男二人でくるもんじゃなくない?」
「そう?」
 そう言って、アツシくんがタバコを咥えて火をつけた。
 ーーあ、タバコ。
 アツシくん、吸ってったけ?
 合コンの時とか、食事のときとか、そういう場で吸っているのを見かけたことがなかったから、意外だった。
 煙草の香りと細い煙がじわりと漂う。
 ーー似合うのが、困る。
 思わず見つめていたら、アツシくんが気付いてニコリと笑ったので、ぷいっと横を向いてやった。
 夜とはいえ、やっぱりこの季節は少し暑くて、クーラーをきかせた車に戻る。
 つけっぱなしのカーステレオからは、優しいクラシック曲を流れていた。そろそろ日付も変わってしまいそうな時間だ。
「……トド松くん」
 車の中に戻ると、アツシくんがいつになく静かな声で僕を呼んだ。
「なに?」
「さっきの質問の答え」
「さっき?」
「なんでボクを合コンに呼ぶのかって話」
「あぁーー」
 真面目そうな声に反した内容に、ちょっとだけ声がうわずってしまった。
 ここまでくる道中、そんな話をしたなぁと思い出す。
「僕が面白いからって?」
「それだけじゃないよ」
「え?」
 アツシくんは僕の方を向いて、静かににっこり笑っていた。だけど雰囲気はいつもと違っていて。
「トド松くんに悪い虫がつかないように、だよ」
「へ?」
 座っていた助手席の背もたれがいきなりがくん、と後ろに倒れた。
「いったー!もー、なに?」
 たぶん、運転席側でリクライニングの操作をしたのだろう。いきなりの衝撃に、頭がくらりとする。
「アツシくん?」
「見た目だけの、トド松くんの魅力なんて分からないような女の子に、取られたくないからね」
 そう言って、アツシくんがサイドブレーキを乗り越えて、助手席のほうへやってきた。僕にまたがるようにして覆いかぶさってくる。
「あ、つし、くん?……ねぇ、酔ってる?」
「……酔ってたら、車なんて運転するわけないでしょ」
 ちょうどよい温度だったはずの車内は、1~2℃くらい上昇してしまったのだろうか、異様に暑く感じられる。
 展望台の側の外灯の明かりが少しだけ入り込んで、車内は薄暗い。
 覆いかぶさってきたアツシくんを押しのけようにも、律儀につけていたシートベルトが邪魔で身動きが取れない。
「アツシくん……?」
 僕に覆いかぶさって、見下ろすように、アツシくんが見つめてくる。
「トド松くん……松野、オレはずっとお前がほしかったんだよ」
「は?なに?」
 言ってる言葉の意味が分からない。
「昔から女の子にはやたらモテてさ、同性から妬まれることが多くて。でも、松野はそんなこと気にせずオレと一緒にいてくれたじゃん」
「そ、それは……アツシくんが、ふつーにいいヤツだからで……」
 高校の時から、確かにアツシくんはモテモテで、同性の友達は少なかった。だからというわけではないけど、普通にアツシくんは話が合ったし、面白くて優しかったから一緒にいた。それこそ、この齢まで『友達』でいられるほどに、気が合ったから。
「ふふ……それが松野のいいところなんだよ」
 頭の中でぐるぐると考える僕に構わず、アツシくんは顔を近づけて、
「そういうとこが、好きなんだ」
 耳元でそう囁やかれた。
 言葉の意味を図りかねていると、熱いぬるりとしたものが耳朶を這った。
「ん……」
 思わず声が漏れた。アツシくんの舌が触れたのだと気付いて、ハッとする。
「まっ……アツシく、ん、やだ!」
 自分の顔の真横にアツシくんの顔があるせいで、表情は見えない。でも耳まで赤く染まっているのが分かった。
 ーー本気、なんだ。
 胸元でドキドキと心臓が忙しない。これはどちらの音なのか。
「……松野は?」
「え?」
「オレのこと、どう思ってる?」
 ギュッと抱きしめるように覆い被さるアツシくんに問われて、もう、よく分からない。
 突然言われて、考えが整理できない。
「……わ、わかんないよ。いきなり、言われて、こんな……」
 心臓が苦しい。
 友達だと、ずっと思っていたから。
「……じゃあ、オレが松野を落とせばいいんだね?」
「は…?」
 アツシくんが身体を起こして、僕を見下ろす。そして、にっこりと妖艶な色をした笑顔で、
「……覚悟しててね?トド松くん」
 宣戦布告のようにそう言うと、僕の手を取り、その手にチュッと口づけた。


 君は、蝶か、花か、それとも…?


<了>


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