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松野家五男、その理由につき

くろひつじ@執行済
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2016-07-17 22:39:09

雄松野家深夜の一本勝負*お題「喧嘩」
白ランイッチが書きたかったんや( ˘ω˘)

 体育館裏の、ベタに人の寄り付かないような場所で、八つ当たりともいえる暴力は振るわれていた。
「風紀委員だからって、いい気になんなよな!」
 6~7人の人だかりの中、真っ白な学ラン姿の彼ーー松野一松は、人の輪の中心に尻もちをついたような恰好で居た。
 彼を取り囲む学生たちは、黒い学ランを思い思いに改造していて、見るからに校則違反を犯していた。
 その高校では、朝、正門で風紀委員が服装チェックをすることがあって、校則違反者の彼らは放課後の指導を受けることになっている。しかし、それが気に入らない彼らは、貴重な昼休みにこうして風紀委員の中で一番弱そうだと判断した一松をおびき寄せ、服装チェックの結果を覆そうとしたのだ。
「こいつ、松野の一人だろ?大丈夫なのか?」
 松野家の六つ子は学校では悪い意味で有名だった。
 長男次男はケンカが強く、三男は弁が立つうえ風紀委員長。五男はいつもへらへらして気味が悪く、末弟は情報収集とその操作に長けていた。 六つ子で突出したものがないのが四男で、風紀委員ではあるが、学力と記憶力に長けているだけ。
 いつもは風紀委員長の三男と一緒だが、もしも狙うのであれば、四男だ。
「大丈夫だって。こいつがバラさなきゃ、な!」
 そう言いながら黒い学ランの生徒が足の裏で一松の頬を蹴りつける。
「ぐっ……」
 小さく呻いてよろける。少し湿った土の上に腕をついた。
 先ほどから腹も背中も、身体中のありとあらゆる場所を蹴られ殴られ、白かった学ランは土にまみれて酷い有様になっていた。
 --チョロ松兄さんに怒られるなぁ。
 殴られてクラクラした頭では思考が鈍る、ぼんやりと思いついたことはそんなことだった。
「で、どうするんだ?」
「あーそうだなぁ」
「これでいいんじゃね?」
 そう言いだした生徒が薄汚れた白い学ランの詰襟辺りをぐっと掴んだかと思うと、前合わせを力任せにブチリと開いた。そして、中に着ていたカッターシャツもボタンなど構わずに破り開ける。
 そして、何を思ったのか、ズボンのベルトに手をかけた。
「な、なにを……!」
 さすがに自分のされていることに気付いて、一松は慌てた声をあげ、ベルトに伸びた腕を掴む。しかし容赦なく手は振り切られ、感の良い別の生徒が一松の両手を捕まえて動きを封じた。
「風紀委員様のあられもない姿、はなかなか良いと思うんだよねぇ」
 抵抗むなしくベルトは引き抜かれ、ズボンは降ろされてしまう。
「おい!離せ!」
 一松の抗議などよそに、彼らはこの後どうするかの算段をはじめてしまった。
「どうする?マワす?」
「ハメ撮りのほうがいいんじゃない?」
「ああ、いいね」
 清純な白を下卑た白で汚してしまおう。
 そんな話がまとまったあたりで、集団の向こう側からのんびりとした声が聞こえてきた。
「ねー、なにしてんのー?」
 周囲がザワつく。逆光でよく見えなかったが、隙間から見えただらりとしたシルエットで誰か分かってしまう。
「……十、四松」
 もともと弱虫で泣き虫で、高校に入ってからはどこかでネジを落としてきたのか、へらへらとバカっぽい印象があって、六つ子の中でも四男の次に狙うなら五男と言われていた。
「あれー?一松兄さん、何してんの?」
「な、なにって……」
 のんびりとした口調で、相変わらず間抜けそうに口を開いて、物怖じもせず集団に近寄ってくる。
 それを見た生徒の一人が慌てて肩を掴んで引き留める。
「お、おい!」
 一松の様子が見える場所まで近づいた十四松が、肩を掴まれピタリと足を止めた。
 白い学ランを無様に汚され開かれた一松の姿に、十四松が目を見開いた。
「……一松兄さんに、何したの?」
 十四松の声に、周囲にびりっと電気の走ったような緊張が生まれる。
 静かに、だけどいつもと違う色を帯びた声音に、一松もドキリとした。
「う、うるせぇよ!お前はさっさとどっかに……!」
 十四松の肩を掴んでいた生徒が、全部言い終わらないうちに吹っ飛んでいった。
「……え?」
 十四松の腕が伸びて、その生徒の顔があった辺りに拳を突き出していた。
 突然のことにほかの生徒たちがざわつき始める。
「ねぇ……ボクの一松に、何したの?」
 そういう十四松の表情は、一松も見たことのないすごみを帯びていた。いつも開いている口は閉じられ、普段焦点の合っていない目は眼光鋭く細められて、まるで獲物を狩る獣のような印象だった。
「く、くそ!やっちまえ!」
 他の生徒たちが一斉に十四松に向かっていったが、十四松はものともせず、見事な立ち回りで、次々と返り討ちにしていく。
「じゅ、十四、松……?」
 少し離れた場所で、一松はその様子をあっけにとられながら見ていた。
「あちゃー、十四松に見つかったかぁ」
 背後からのんびりとした長男の声が降ってきた。
「おそ松兄さん……」
「だいじょぶ?一松」
「う、うん……」
 兄の手を借りて立ち上がり、身だしなみを整える。おそ松は一松の背中の土をパンパンと払っていた。
「おそ松兄さん、あれは……」
「え?ああ、十四松のことぉ?」
「うん…」
 すると長男は意地の悪い顔でほほ笑んだ。
「まったく、みんな勘違いしてるよなぁ。俺らの中で一番強いのは、十四松だってのに」
「そう、なの?……だって、アイツはいつもケンカとか参加しないし……」
「しないんじゃないよ、させてないの」
「は?」
「アイツはさ、手加減できないのよ。やりすぎちゃうの。だからケンカをさせないんだよ」
「そん、な……」
「はは、アイツらも運が悪かったよな。十四松に見つかるなんて」
 長男のニヤリと笑う表情が心から楽しんでいるような雰囲気をしていて、一松は背筋にぞくりと走るものを感じた。
「ほんと、ご愁傷さま」
 十四松の方を見ると、折り重なって倒れる生徒達の中、一人の襟首を掴んでたたずんでいた。倒れている生徒たちは、それぞれ足や腕があり得ない方向に曲がっている者もいて、長男の言葉が本当だと確信する。
「次はないからね?」
 十四松がにっこりと笑って、そう言った。


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