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【祈りの先】

全体公開 3 1354文字
2016-08-10 20:22:33

闇の中

Posted by @mugenwars

「これがこのゲームのルール」

彼女がわざわざ人の言葉で書いた紙。

神は駒を選択できる
神は駒を作ることをやめてはならない
神は相手の駒と場には干渉できない

駒は



【祈りの先】



闇の中、
ぽつん、とひとつ光が落ちた。

それは祈りだ。

時折泣くように黄緑色に瞬く祈りを、
その主を、彼は知っている。

銀の川のような髪を揺らして、
赤黒い天を刺す角の生えた頭を下げ、
その祈りを拾い上げた。

その祈りは、
この地では決して届かない相手に向けてのものだった。

……ありがとう」

祈りの主にとっては恨んでもいいはずの彼女へ向けた祈りに、
銀の男は小さく呟いた。

彼女にこの祈りを届けよう。
きっと喜ぶだろう。
産まれたときに、あんなに喜んでいたのだから。

祈りの主の名を記憶から探りながら、
闇の中を銀色が歩きだす。


随分と増えた。
記憶を探りながら、銀の男は思った。

駒が増える分、
絶望と嘆きが増す分、
ここの闇は濃くなる。

いまはもう、元よりあった面影はなくなってしまった。

ここに自分が有ることこそ、
罪の償いだと思った。
それこそが逃げであり、
裏切りなのだとも。

だが、
こうしてこの手には、
ひとつの希望が輝いている。

彼女の幸福を願うものが、一人でもいるのなら、
黒い線を辿らずにすむかもしれない。
彼女がまた笑えるかもしれない。


ひとつの可能性を信じて、
銀の男が闇を進む中、
ぽつり、
とまたひとつ光が落ちた。

灰色の、鈍い光だった。
消え入りそうなその光から溢れるのは、
"皆を許してくれ"
そんな願いだった。

許す、
誰を?

銀の男は足を止めた。

この罪の始まりは何処だっただろう。

彼の者の名前を探していた頭が、
昔の記憶を手繰り寄せた。



「これがこのゲームのルール」

彼女がわざわざ人の言葉で書いた紙。

神は駒を選択できる
神は駒を作ることをやめてはならない

神は相手の駒と場には干渉できない

駒は神に干渉できる

最後の一行は
そのたった一行は

不可侵だった神の"座'"を
誰とも知らない始まりの始まりを作った神の定めたルールを、
根本から変えることを意味していて、

言葉を詰まらせた銀の男に、
金糸の髪の女は笑った。

「さあ、ゲームを始めましょう」



彼女は寂しかったのだ。
だからこそ、ムゲンの命に限りをつけたかったのかもしれない。
ただ、子と共に笑っていたかった。
それだけなのだ。

駒はただ巻き込まれただけなのだ。
ただ、ただ不幸なのは彼らなのだ。


罪を負うべきは、
あの一行を読んだ時点で、
やめようと、
ただ一言言えなかった、
止められなかった私のせい。

銀の男は、灰色の光を眩しそうに眺める。

この世の誰も悪くない。
一体誰を許せと言うのか。


闇の中で、
いつか彼女がいった言葉を
銀色が呟いた。

「私たちは誰に祈ればいい」

灰色の光も、手に持った祈りも、闇の中の絶望も
答えはだれも返さなかった。


頭の中が、
祈りの主の名前を見つけて、
銀の男は目的を思い出して歩き始める。

ゲームの終わりは、
まだ遠いのかもしれない。


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