注意、あるルートに関する続きです。公式ルートがそうなったわけではありません。
そういうルートもあるんだなあ みつを ぐらいの気持ちで見てください
@mugenwars
白い、白い部屋に、黒い淀みが浮かぶ。
淀みは滲むように広がって行き、
やがてその淀みの中から銀色の髪の男が表れた。
赤黒い角を頭に生やし、肌は青白く、白目であるはずの場所は真っ黒に染まっている。
不吉の象徴のような男は、夜明けの色をした目をゆっくり開いた。
この白い部屋の主、金糸の長い髪と、質素だが美しい純白の服を纏った、清浄の象徴のような女が来訪者を夕焼け色の瞳で捉えて、
「いらっしゃい」
とても嬉しそうに微笑んだ。
【祈りの先の先】
「祈りを、届けに来た」
銀の男の言葉に、金糸の聖女は首をかしげる。
彼の管轄で、彼女に祈るものに心当たりが見つからなかったからである。
男が差し出したのは、泣くように黄緑に輝く祈り。
「たしか、うぃり……ウィル…」
道中で思い出したはずの名前をまた取り落としたのだろう、彼の者の名前が出てこなくて、銀の男は難しそうな顔をした。
しかし女はまるで太陽のように嬉しそうに笑って、手をぽんと叩く。
「あの子なのね!私のことを忘れてなかったのね!」
そうして、祈りを抱く男の手をとって、そっと胸にあてた。
「よかった…元気でいるのね…大事なものができたのね…」
喜びの言葉と一緒に、まるで泣きそうな声色で、聖女は彼の者を祝福する。
「……」
その様子を男は黙って見つめている。
言うべきか、言わざるべきかを迷って、何度か口を開きかけては口を閉じた。
そうしているうち、聖女は満足したのか手を離す。
「届けてくれてありがとう。でも長く居てはいけないわ。ばれたらきっと驚かれてしまうもの」
くす、と悪戯っぽく笑う彼女を見て、銀色はそっと目を閉じる。
誰もを許してやってくれ。
誰かの祈りが銀色の魂の水面を打った。
目を開き、宵闇色の瞳が、真っ直ぐに黄昏色の瞳を映す。
「もう、止めにしないか」
時が止まったような一瞬を迎えたあと、金糸の聖女は笑顔を固めたまま、え?と聞き返すように声を吐いた。
「お前を愛しているものを、お前が愛した世界を、これ以上苦しめる必要は無いんじゃないか」
黄昏は曇り、
段々と、彼女の顔から笑顔が消えていく。
「もう十分だ。これから数千の時はお前を忘れたりしない」
泣きそうな、怒りそうな顔から目を背けたくなる。
それでは変わらないと、己の魂を縛り付ける。
「私の敗けでいい、だから」
「何を言っているの」
震える声が、男の言葉を遮った。
「何を止めるっていうの、馬鹿な事を言わないで」
泣きそうな黄昏もまた、夜の色を真っ直ぐに見つめている。
「もう終われないの。終わりを告げて終われるゲームではないの、わかっているでしょう」
責めるような言葉を受け止めて、銀色は悲しそうに目を細める。
「誰かが終わらせなければいけないの。駒の誰かが条件を満たさなきゃいけないの。終わってはだめ、だめなのよ!」
言葉を強くして、聖女は叫ぶ。
暫くの静寂の後、銀色は口を開く。
「……すまない」
そうして、再び逃げ出すことを選んだ。
銀色が闇に帰る途中、
絶望が最悪のエンディングを書き換える。
ざりざりと耳障りな音と一緒に見える光景に、
銀色は口の端をつり上げた。