X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

よく晴れた日の昼下がり(赤白アリス)

全体公開 3280文字
2016-08-24 23:29:11

交流企画 #愛と雪のWonderland より
@tasuku_alice さんのヨウくんと@mm39_Mocha さんのミーアちゃんをお借りしています。

追記
@mm39_Mocha さんから絵をいただきました!
次ページに貼ってます。

バガモールが昼休憩にしようと薔薇園内を移動していると、前方に白い塊が落ちていた。
いつの間にかタオルでも落としたのかと近づいてみると、どうやら違う。更に近づくと、それが白い獣だと気付いた。
「白狐ん!?まさかヨウか?」
んあ?」
彼が声をかけると、ここ最近で聞き慣れた声が返事をする。間延びした返事と毛並みに乱れがないことを確認してから、思わず口から低音が漏れた。
「こんなとこで何をしてるんだ『白狐様』!」
そうは言いつつ放置するという選択肢はないので、長躯を折り曲げそっと抱え上げると管理小屋へと急いだのだった。

「狐姿なら水は皿か」
「コップにストローで頼むよ」
空調の効いた部屋で水枕に寄りかかっていたヨウは力なく言葉を返す。そして出された水を一口飲んで、驚きの声をあげた。
「これ美味しい!薔薇の香りとんん、微かにブドウの味?さっぱりしてて飲みやすいね」
「作業中の必需品だ。大量作成して常備してるものだから遠慮なく飲め」
バガモールはヨウのコップに水を注ぎ足しながら自分の弁当を広げる。ヨウはもうそんな時間か、と鼻をひくつかせた。
「2人分はないぞ」
「さすがによこせなんて言わないよ!でも美味しそうだから一口ちょうだい?」
あざとく小首を傾げるヨウにサンドイッチをかじっていたバガモールは眉間に皺を寄せる。
そしてサンドイッチには触れず、そもそもなんであそこで行き倒れてたんだと問いただした。
サンドイッチから話が外れた事に一瞬キョトンとしたヨウは、いやぁと頭をかいてみせる。
「大したことじゃないよ。たまたま近くに用があったから見に来ただけ。お国柄で植え込みの並びが違うなーって思ってたら夢中になっちゃって
「ご自慢の冷気はどうした」
「そんな涼しい程度に微調整、とかできないよ。それに薔薇園で使ったら、周りの薔薇がみんな凍っちゃうよ?」
世話ないな」
えへへ、と笑うヨウに深くため息をつくと、バガモールはハムサンドをヨウの前に差し出した。ヨウは顔を輝かせ、ありがとー!とかじりつく、その瞬間にぼふんと元の姿に戻る。
「ん、やっぱり美味しいね!君はホントいろんなお店を知ってるよねぇあれ、いつまで固まってるんだい?」
ヨウがハムサンドを堪能している間中、顔を引きつらせて静止していたバガモールは蚊の鳴くような声で絵面がキショい、とだけ言った。
そうかなぁ僕はよかったと思うけど、とヨウが笑いかけると、バガモールは苦い顔を隠しもしない。
「アンタは見栄えがするだろうがなんで相手が俺なんだ。もっとよく考えろよ
そう言われると、ヨウはすっと目を細めた。
「だってさっき君、僕のことを『白狐様』って呼んだだろう。名前で呼んでくれって言ったのに」
「い、や、が、ら、せ、だ、よ。知らん仲でもない奴がそこらへんでくたばってて心底驚かせたのは誰だ」
バガモールも負けず睨み返す。そうしている間も器用に昼食をたいらげ、片付けていった。
それを見届けてからヨウは軽く肩をすくめる。
「介抱についてはありがとう。助かったよ。でも誰か目撃者がいたわけじゃなし、そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか」
もっと可愛い反応を期待したんだけどな?と笑ってみせると、バガモールは心底呆れた顔をした。
不穏なことを言う奴はとっとと涼しい自国へ帰れ」
「これ系のネタにはノってこないよねぇ、君」
「回復したんなら帰れ。今日は思いの外仕事が詰まってるんだ」
「おや、そうなんだ?」
と2人が雑談していると、外からぱたぱたと足音が近づいてくる。
「来客かな?」
「あの足音は裁縫師様か」
「裁縫師もしかしてミーアちゃん?」
ヨウの問いかけにバガモールが首肯すると、ヨウは慌てて狐の姿に戻った。元の姿で出くわした時に威嚇されちゃったんだよねぇ、としょげるヨウを見て、バガモールは眉を跳ね上げる。
そういえばアンタは白の国の住人だったな」
「今更!?さっき自分で白の国に帰れって言ったよねえ!?」
声をひそめながらもわりあい全力でツッコんだヨウからバガモールは視線をそらした。つられて小声で改めて実感しただけだ、と言い訳する。ヨウはそれをジト目で見やったが、足音が扉の前まで来たため最後にこそっと囁いた。
「僕、ミーアちゃんの前でこの姿の時はまだ喋ったことないから」
驚いたバガモールが反応する前に、元気な挨拶と共に扉が開く。
予想通り、そこに立っていたのはミーアだった。
「こんにちはーっ。お仕事お疲れ様ですっ」
「っ、こんにちは。薔薇を見て回るだけならわざわざ挨拶に来なくても構わないんだが」
毎度薔薇を見に来るたびに声をかけてくるミーアに首を傾げると、ミーアはにっこり笑って手にしていたバスケットを掲げた。
「挨拶はとっても大事なことだと親から言われていますので!今日はですね、うちの常連さんから大量にリンゴを貰ったのでタルトをたくさん焼いたんです。いつも薔薇茶をいただいてるんで、お礼も兼ねてお裾分けに来ました!」
バガモールさんはリンゴお好きですか?とキラキラした目で見上げられた本人は気押されるように頷くしかない。
よかったー本当にいっぱいあるんですよー、と差し出されたバスケットを見ると、大きめのワンホールタルトが出てきた。
本当ださすがに多いと途方にくれかけていると、今度は別の方面からキラキラした視線が飛んでくる。そちらを見やると、ヨウの視線がバスケットに釘付けになっていた。
「ん?バガモールさんどうしたんですか、きゃあ、白狐さん!」
バガモールの視線を追ったミーアはヨウを見つけて、久しぶりーと飛びかからん勢いで抱き上げる。バスケットを持っていたら投げ出していたに違いない。ヨウも満更ではないのか、スリスリとそれに応えた。
「お知り合いだったんですね!いつも遊びにくるんですか?」
「ああいや、今日はそこで行き倒れてたから拾っただけで。そっちこそ知り合いだったんだな」
そう言いながらバガモールはバスケットをもう一つ用意する。一通りヨウの毛並みを堪能したミーアはヨウと一緒に首を傾げた。
「この間から何度かがっつりもふらせてもらった仲です!バガモールさん、それは?」
「この量はさすがに俺1人じゃ食い切らないから、そいつに分けてやってくれ。腹ぺこらしいから」
彼が用意していたのは3分の1減ったリンゴのタルトが入ったバスケットと、冷えた紅茶と食器の入ったバスケットだった。
「東屋でお茶会でもしていくといい。あそこなら風も通るし薔薇もよく見える」
「えっ、あの、でも、いいんですか?」
「何が?」
「何がってこういろいろと。お言葉に甘えちゃっても」
ミーアは腕の中のヨウとバガモールを見比べる。ヨウは全身でバガモールの意見に賛成である!と示していた。
バガモールも何を気にしているのかわからない、という顔をする。
「俺はこの後仕事に戻るからお茶会は参加しないけど。何も問題はないんじゃないか。自分の分は既に確保したし、何かあったらそこら辺にいるし」
「あの、じゃあお言葉に甘えます。うぅ、毎回何かしらするたびにそれより多く返してもらっちゃってる気がする!」
ミーアがヨウの毛並みに顔を埋めると、ヨウは慰めるように身をすり寄せた。バガモールは話がまとまったならとバスケットを持つ。
「倍以上年が離れてるんだ。そんなもんだろ。気になるならアンタが俺くらいの歳になったら、下に同じようにしてやればいい」
「そんなものでしょうかあっ、運ぶくらいやらせてください!」
「そいつを運んでやって。自分で歩かせると多分また倒れるから」
「えっ、それは大変ですっあ、待ってくださいー!」
バガモールは軽くミーアの手をかわすとそれだけ言ってスタスタと東屋へ向かってしまう。ミーアは身長も倍近く違う彼を慌てて追いかけることになったのだった。






投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.