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庭師は薔薇の世話を焼く(赤白アリス)

全体公開 2787文字
2016-08-31 22:50:37

@6RS_cさんに
快晴の下の会話 privatter.net/p/1775042
を書いていただいたので桜樹怜さんをお借りしてアンサーSSを書いてみました。
3ページ目に作者の解釈した世界観が多分に含まれる文を載せていますので、そこはなんでも許せる方のみお読みください。

「こんにちは〜」
バガモールが薔薇の根元に屈んでいると後ろから声がする。
ただの見学者だろうと思っていたが、なんとなく聞き覚えのある声だったので振り返るとそこにいたのは白のアリスだった。
ああ。アンタ、また来たのか」
「な!来ていいって言ったのはそっちじゃないですか!」
白のアリスーー桜樹怜は抗議の声を上げる。バガモールは肩をすくめ、薔薇を見るのにいちいち挨拶は要らない、とだけ返した。
桜樹はそうじゃなくて!と背を向けて作業を再会しようとするバガモールに慌てて手元の籠を掲げてみせた。
「もちろん薔薇も見に来たんですけど、この間の薔薇茶のお礼を持ってきたんです!休憩の時にご一緒できたらと思って」
彼女が一息でそこまで言うのを彼はうろんげに見返す。それは彼女の思った反応ではなく、あれ?となった所で相手が口を開いた。
「それはアンタが用意した水筒と中身か?」
「そ、そうですけど」
「誰かに持っていくよう勧められたりとかは」
「してません!私の純真たるお礼の気持ちです」
そこまで言っても変わらぬ視線にさすがに桜樹がムッとすると、彼は思案げに視線を逸らした。
なら大丈夫か。疑って悪かったな。そこの木陰のベンチに座っていろ」
つ、と指し示された先を見ると確かにベンチがある。がさがさと周りを片付けるバガモールを一瞥してから、桜樹は彼の言う通りそこで待つことにした。



桜樹がお茶の準備をしているとバガモールが小瓶を手に隣へ座る。差し出したお茶と引き換えに渡された小瓶の中を見ると、薔薇の砂糖漬けが入っていた。
「薔薇の花びらの砂糖漬け?初めて見ました。いただきます」
一枚を取り出して口に放り込みつつ紅茶を飲む彼女を見て、彼はため息をつきながら自分の分をすすった。
「対立国の相手に出されたものを平気で口に入れるとはね
甘さと香りの良さにムッとしていたことも忘れてテンションの上がっていた桜樹は、バガモールの言い様に出会い頭からの失礼千万を思い出す。
私がバガモールさんに毒を盛るとでも?」
「食い物屋でもあるまいし、庭師なら警戒するのが常識だろうが。アリス様はそんなことも知らないのか」
砂糖漬けを摘みながら呆れた口調を隠しもしない彼に、桜樹は今自分ものうのうと飲んでるくせしやがって、と小声で悪態をつく。それから小さく咳払いをすると、姿勢を正して彼に向き直った。
言いたいことがいくつかあります。ひとつめ、前回名前で呼んでくださいって言いました」
「言ってたな」
ふたつめ、庭師がやたら他人を警戒するとかわけが判りません。みっつめ、ふたつめに繋がりますがそんな常識はない!」
彼女がそう言い切ると、ちょうど紅茶を飲み干したバガモールが器を置きながら薄く笑った。
「この世界では常識なんだよ、アリス様。俺は別にお人好しじゃないし教える義理もないんだが、お茶のお礼に教えてやろう」



※作者が解釈した世界観を多く含んだ長文です。
※興味がない、自分と異なる解釈が許せない方は
※次ページまで飛んでください。



ちゃんと説明するから長くなるぞ、と前置きした上でバガモールは話し出した。
「まず、庭師についてだ。これは両国共通の常識だがな、庭師は害虫駆除も仕事の内だ。特に薔薇の世話を任されている奴は駆除する量も増える。だから怨みを買いやすいし、狙われる」
害虫、から?そんなに知能が高いんですか」
桜樹は目をみはって薔薇の葉を眺める。
「いや、むしろ悪い方ん?そこから知らないのか。薔薇の中でも赤と白は各国の象徴だ。薔薇を害する奴は反逆の徒。王に刃を向けたも同じだな」
「あ。あぁーなるほど。庭師は読んで字のごとく庭の番人、なんですね」
薔薇イコール王なら、王の敵イコール害虫。
それで狙われるし警戒もするのか、と彼女は頷くが、ふと疑問がよぎる。しかし声を出すより先に彼が説明を続けた。
「名前も似たようなもんだ。相手の名前を使って呪う悪魔みたいな能力を持つ奴が敵だったらどうする。『アリス』は俺でいう庭師にあたる役職名だ。女王様からアリスも守れとは言われているが、白のアリスはその限りじゃない。自分の身が可愛いなら自衛しろ。
ついでに言うと能力もほいほいバラすな。対策を取られたら終わりだぞ」
そう言い終えたバガモールは、桜樹の死角にあった自前らしき水筒から直飲みで喉を潤す。
上下する喉仏を見ながら、彼女はようやく声を出す機会を得た。
じゃあ、なんでバガモールさんは私の問いかけに答えたり、ブルーベリーを食べてくれたりしたんですか」
「アンタが隙だらけで警戒心も裏もない能天気なアリス様だったからだ」
警戒する気も失せる、と心底呆れた目を向けられる。そんなに能天気だったかな、と頬をかいていると、彼がす、と表情を消した。
「最後にひとつこれは大きな世話かもしれないがな。もう自分の体から樹を生やすのはやめとけ」
桜樹が急な変化に驚いていると、バガモールは更に急な事を言い始める。
「俺が能力によって薔薇に嫌われてるように、能力だって万能じゃない。一時的とはいえ体内に張らせた根が何を吸収していないとも限らないだろうが。アリス様だからという理由でそこの制限もないかもしれないが削られてるのが生命力だったりしてみろ。後になって判った所で冗談じゃ済まないからな」
彼はそこまで早口で言い終えると、そのまま黙り込んでしまった。



一度に大量の情報を与えられて少しの間一緒に黙り込んでいた桜樹だったが、くすりと笑みを零してバガモールに向き直った。
「心配してくださってありがとうございます」
何も知らないアリス様に常識をほんの少し教えただけだ」
嫌そうに口元を歪める彼だが、視線は彼女のそれと合わない。
理由を聞いてしまえばアリス様呼びもそんなに悪くない、と彼女が笑みを深めて見ていると、彼はふと立ち上がった。
「礼は受け取った。俺は仕事に戻る。アンタは好きにしろ。見て回るならご自由に薔薇に悪戯さえしなければな」
それだけを言うと、振り向きもせずに先ほどまとめていた道具類の所まで歩いて行ってしまう。
呼び止める暇もなかったので、桜樹はその背中に慌てて呼びかけた。
「あ、待ってください。いくつか聞こうと思ってたことが!」
「休憩時間は終わりだ」
「手と目は薔薇に向けてていいので口だけでもお相手してください」
「仕事の邪魔をするな。次にしろ」
「次じゃあまた来ていいんですね!」
なんとか食い下がってみると、既に薔薇に意識を移していた彼はあっさり引っかかる。
にこにこしながら返事を待つと、観念したのだろう、好きにしろ、というため息が聞こえてきたのだった。



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