@naono_cross
「ごめん、かっちゃん!一生のお願い!」
寮内の爆豪勝己の部屋の前で懸命に手を合わせて、緑谷出久は何懇願していた。
「お願い!今日だけでいいから部屋に泊めて!」
「…なんでテメエを部屋に上げなきゃなんねぇんだよ、クソナード。」
「だって、峰田君が…その…」
「あ?ブドウ頭がどうした?」
「峰田君が、大音量でその…ぇ、えっちなのを見始めちゃって…」
寮の中で、緑谷の部屋は峰田の部屋の隣にあった。
寝ようとした緑谷は、何か物音が部屋の右の方から聞こえた気がしたので、耳を澄ませる。
すると、聞こえてきたのは、明らかに女性の喘ぎ声と思われる声であった。どうやら、部屋で峰田がAVを見ているようなのだ。
高い声でアンアンと喘ぎ続けるその声に緑谷は居た堪れなくなり、部屋着のまま自室を飛び出して、爆豪の部屋に来たのであった。
「…このドーテーヤロー。」
「う、うるさい!とにかく、隣でその、そんな声されてたら寝れないだろ?明日になったら抗議するから、今日だけ泊めてくれない?」
「メガネ野郎と半分野郎はどうした?」
「飯田君はこの時間もう寝てるって前言ってたし、轟君の部屋はもっと遠いから…」
「……」
「ねぇ、駄目、かな…」
爆豪より緑谷の身長が低いせいで、自然と上目遣いになる。
爆豪は諦めたように溜息を吐いた。
「…今日だけだぞ。」
「ありがとう、かっちゃん!」
嬉しそうな出久を部屋に招く。
爆豪の部屋は、必要なトレーニング道具や家具だけがある、シンプルな部屋だった。
「わー、かっちゃんの部屋って感じだ…」
「何じゃその感想は。」
爆豪はそのままベッドに横たわり、隣をポンポンと叩いた。
「…かっちゃん?」
「あ?お前も寝んだろ?早く来いよ。」
「え?」
「あ?」
一瞬、二人の間の時間が止まった。
理解した緑谷の顔がボッと赤くなってザッと青ざめる。
「え、え、いや、その、僕は、ホラ床で大丈夫だから!かっちゃんのと、と、隣で寝るなんてその…」
「デク、テメエ、俺がせっかくベッドで寝かせてやろうってのに断んのか…?部屋借りといていい度胸だなぁ…」
爆豪の機嫌が急降下していくのがわかる。このままじゃ部屋を追い出されるか、最悪死ぬ。
「わ、わかりました…失礼しまーす…」
「ん。」
恐る恐る隣に入り込むと、案外すんなりと機嫌は治って、隣に寝そべらせてくれた。
爆豪が後ろを向いて横向けになったので、緑谷も同じ体勢を取る。お互いベッドの上で背中合わせの状態だ。
「寝相悪かったら叩き落とすからな。」
「はい…おやすみ、かっちゃん。」
「ん。」
緑谷に返事をして、爆豪はリモコンで部屋の電気を消した。
さて、緑谷は横になっても暫く眠れなかった。
ーわー!
本当にかっちゃんの部屋に来ちゃったよ!しかも、同じベッドで一緒に寝るなんて、潔癖症なかっちゃんが許してくれるなんて!幼稚園のお昼寝以来だな…
…かっちゃん、どんな顔して寝るんだろ…ちょっと見てみたいな…って、そんな事したらかっちゃんに殺されるに決まってるだろ!
って、かっちゃんの匂いがする!すっごいする!
うー、どうしよ…眠れるかな、今日…
一方で、爆豪も涼しい顔をしながらその裏では、部屋に招いた時点で悶絶していた。
ーだああああぁ!
クソ、部屋に上げただけでも心臓バクバクしてんのに、同じベッドで寝るなんざ、何やってんだ俺!
一緒に寝んのはまだ早ぇだろ!もっと距離近づいてから…ってそうじゃねぇ!コイツも何ノコノコ俺の部屋に来てんだよ!いや、舐めプ野郎やメガネ野郎ん所行ったら殺すけどよ!
…やべ、足当たっちまった!一瞬だけど触っちまった!…ってコイツは何も言わねえのかよ、寝てんのかクソ、能天気野郎め…一瞬だけどあったけぇな…って何考えた俺!
あぁクソ、眠れねぇ…
思春期真っ只中の少年達を置いて、夜は過ぎていく。
翌朝、二人で寝不足気味で同じ部屋から出てきた事で切島が誤解しかけるが、緑谷の必死な弁明と爆豪の脅しによって何とか誤解は解けた。
峰田への抗議も行われたが、どういう訳だかその後も部屋からAVの声が極たまに漏れる事が緑谷曰くあったらしく、その度に爆豪は部屋に泊めていたという。