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絶てぬ思い

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2017-02-27 14:27:51

#さくやこのはな 百人一首アンソロジー参加作品
 083 世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる
 藤原俊成の百人一首収録作品の世界を新羅末期で表現しました。
sakuyakonohana.nomaki.jp

孤雲は歩みを止め、空を仰いだ。木々よりも高きそこは雲一つ無く真青である。足許から聴こえるのは川のせせらぎ。時々、鳥の声もする。在職中は空を仰ぐことも耳を澄ますことも無かった。そうした余裕がなかったのだろう。
最近まで、彼は朝廷に出仕していた。留学先の唐から祖国新羅に戻った彼は、請われるまま朝廷に出仕した。
女王の臣下として、国のため、人々のための政事に努めたが思うようにいかなかった。彼が願うことと他の朝臣たちの望むことが正反対だったためである。朝臣たちはただ権力を維持することにのみ夢中でその他のことには関心がなかった。そんな朝廷内の空気に嫌気がさした彼は、女王が亡くなったのを機に辞職した。
政界を去っても朝廷内の事柄については自然に彼のもとに伝わってくる。そのたびに自身の無力さを痛感した彼は、俗世との関わりを絶ち、ここ伽倻山に入った。
入山後、彼は毎日のように散策をするようになった。自然の中に身を置くことで心身を解放しようとしたのだった。
突然、馴染みの無い音が耳に入ってきた。
「鹿の声か?」
いや、違う、人の声のようだ。
「孤雲先生」
自身の名を呼ばれ、振り返ってみると遠くに人影が見えた。
こんな山奥まで訪ねてくるとは何者だろうか。
「孤雲先生、教えを請いに参りました」
体格の良い青年が彼の前に姿を見せ頭を下げた。
「世は乱れ、人々は苦しんでいます。私はこうした状況を何とかしたいと思いつつも、どうしてよいのか見当が付きません」
若者の真摯な言葉に孤雲は心を動かされた。
「取り敢えず、我が草庵に参ろうか。話はそれからにしよう」
孤雲は青年を棲家に案内した。
今の時代は、山中に隠棲しても俗世とは離れられないのだろう。青年と歩きながら孤雲は思うのだった


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鶏林書笈(계림서급)@高麗楼
@keirin_syokyu
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