@fu_re_re_ra
【イリスの裏設定】
・イリスは孤児。戸籍なし。家族や誰かの肉体に転生したのではなく、バリアン世界に囚われていた魂が解放されて存在している。肉体は遥か昔の生きていた当時の復元なので、致命傷になった傷がそのまま残っている。ガリガリで小さく精神も幼いので6〜7歳程度と周囲も認識しており、のちに作った戸籍でもそのようになっているが、実際は8〜9歳ぐらいでハルトと同い年だったりする。ヌメロンコードで復活後、数日素足で雨の中を彷徨って、孤児院に保護された。
・この時の飢えの記憶と、昔の戦の記憶が混同、以降も良く熱を出してぐすぐす泣く。寒いのとお腹すいたのがちょっと怖くて苦手です。けど胃がちっこいのであんま食べれない。(甘くて高カロリーな菓子は子供らしく口に入りやすいのもあって、細っこかった昔を知ってる凌牙がつい与えたがるのもある。)
この件があって、孤児院では周囲の子にあまり心を開かず、孤立気味だった。あの日裏路地に一人でいたのは、すぐ近くの公園で、いつもひとりぼっちでブランコを漕いでいたから。
・おーさまと出会ってからは怖い夢は遠退いた。けれど、熱を出すとぶり返す。やがて成長と共に前世の記憶はどんどん遠退いて、やがて忘れて淡い夢になっていく。それが自然な事なのだ。
・イリスは天真爛漫で明るい少女。に見えるが、Ⅳの傷に寄り添う事ができたほど、幼い年で孤独を知っている子供でもあるのだ。Ⅳたち以外の前では、戦の記憶の影響でとても人見知りで怖がり。特に大きい屈強な大人や若い男性を怖がる。アークライト一家や天城一家との初顔合わせの時はぐずって本当に大変だった。
・イリスを引き取ると決めてから、Ⅳは、アークライト家の家長の兄クリスを伴って何度も孤児院に挨拶に行っている。Ⅳの所在がある意味いつもテレビでハッキリしてる事は、イリスを引き取る際にプラスに働いた。
・イリスのお部屋はぬいぐるみがいっぱい。小さめのベッドと、一面を覆う絨毯。床にふかふかのラグが敷いてあり、壁を覆うほどのぬいぐるみの山でふっかふかになっている。
これは主にⅣが事ある毎に買ってくるのだが、Ⅳが笑ってイリスの頭を撫でて「寂しい子供には人形、って相場が決まってるんだよ」と告げる言葉にその真意が現れている。そしてⅣが人形使いである事実を重ねると…
・Ⅳが見つけてきた折りたたみ式の小さな木製のローテーブル(バイオリン型)がイリスの部屋には置いてあり、そこでクレヨンでお絵描きするのが最近のイリスの楽しみ。もちろんそこには四人、自分とおーさまとりおおねえちゃんとトーマスお兄ちゃんが笑っていて、上には虹が。きんろーかんしゃの日は働いてる人にプレゼントをするひなんだって。トーマスお兄ちゃんの似顔絵と一緒にプレゼントしたその絵に、Ⅳはとりあえずめっちゃ泣いた。オレ、こんな優しいツラしてたかな。ありがとう、イリス。四人の絵はリビングに、写真と一緒に額縁で飾ってある。似顔絵はⅣがどこかに大事に大事にしまいこんでいて見つからない。
【Ⅳの施設時代について】
・我が家のⅣは、とにかく自分の孤児院時代の事は決して話したがらない。悪い意味での黒歴史で、自分の中で完全に抹殺している記憶であり、Ⅳが歪んだ最悪の場所であった事だけは疑いようがない。凌牙はⅣが施設時代の事を話したがらない暗黙の了解に気付いていて、同時にⅣはイリスと生きる選択をした時点で事ある毎にその過去に引っ張られまくるということでもある。戦友次元の友情地獄鮫に比べて、家族次元のⅣのメンタルは落ち気味で穏やかに幸福を抱く傾向があるが、それはこの過去との向き合いも尾を引いてる。
・Ⅳの施設時代の過去は設定済みだが、非公開。
一旦だけ明かすが、実はこの時代にトーマスは一度首吊り自殺に失敗している。
【異文化交流】
・Ⅳと暮らし始めて凌牙が一番最初にやったのは、風呂上がりバスローブから裸で寝る習慣のⅣに腹パンキメることだった。イリスの教育に悪い!!今は白のシルクのパジャマ。ただし素っ裸にバスローブの習慣はそのまま。せめて下を履け。
とりあえず大問題は去ったが、シルクのパジャマのⅣは何となく色素が薄く、それはもうガリッガリなので、夜にリビングで本を読む姿などは普段の存在感が薄らいで、消え入りそうでこちらが落ち着かない。着てても着てなくても迷惑とかどういう了見だ。と凌牙は本気で思ってる。
・Ⅳは家の中では時々眼鏡。細いシンプルな銀縁の眼鏡で、それはⅣの金と赤の髪によく似合い、落ち着いた印象を与える。手紙を書く時と、縫い物をする時だけしているのだが、Ⅳが視力が落ちたのは火事からなので気兼ねして、最初の頃はわざわざ家の中で早朝にひっそり起きてコンタクトを入れたりしていた。後に見つかって凌牙に物凄い顔される事になる。リビングで気にせず眼鏡をするようになるまでは、凌牙と璃緒の根気が非常に必要だった。
・凌牙の寝坊癖はⅣと暮らすようになってちょっとひどくなった。家族の気配が増えたことで安心して眠りが深くなった、要するにもっともっと油断するようになったということ。良きかな。起こすのは今はⅣの一仕事。
・食事の支度は交代制。元々璃緒と凌牙は交代で作っていたが、Ⅳは基本作る習慣は無かったのでレパートリーは少ない。ごくごく簡単なブレイクファストや、シチューやカレーやスープの様な大鍋で作るものなら美味しく作れる。
凌牙がピーマンタマネギがダメなのは周知だが、Ⅳの場合は生卵が駄目。初めて卵かけ御飯が出てきた時、信じられない顔をした。
「正気か?生だぞ、生だろ?」
すき焼きなどで生卵が食べられない外人は多いらしい。Ⅳ曰く、こっちの衛生観念は異常だ。だそうな。
・神代家には午後のティーブレイクなんつー高貴な習慣は無い訳だが、Ⅳと暮らすようになって紅茶が常備されて、段々習慣付いてきた。同じように、Ⅳも朝に味噌汁を飲む習慣と湯船に浸かる習慣が付いた。璃緒とイリスが一緒にお風呂に入って、その前に時間がない時は凌牙とⅣが纏めて風呂場に放り込まれるので最初の頃Ⅳはガチ抵抗した。今は慣れた。というか諦めた。
※go to a bath room=トイレに行く という表現。裸の付き合いの習慣が無い文化だと共風呂はトイレの個室に一緒に入る様な感覚だとか。
・最初の頃、Ⅳの「bless you」の習慣を凌牙も璃緒も知らなかったので、「?」という顔をしていた。Ⅳはうっかり言うたびに「何でもない」と言ってちょっとしょんぼりしてた。今は二人とも、璃緒は「ありがとう」っていうし凌牙も必ず「おう」っていう。そのたびちょっとだけⅣが嬉しそうな顔をするものだから、神代家ではちょっとの間わざとくしゃみする遊びが流行った。かわいい。
※god bless you=くしゃみに対して言う「祝福を(お大事に)」の意のフレーズ。
・神代家の四人のいただきます、はちょっぴり多様。凌牙と璃緒は合掌、Ⅳは十字を切る。なのでイリスはきょろきょろ両方を見たあと、どーしよう、と迷って、結果、両手をぎゅーっと握ってお祈りのポーズに落ち着いた。四人揃っていただきます。
ちなみに、かつてのアークライト家では、食前の祈りがあった。トロンになってからは無くなった習慣だが、Ⅳはどちらかというと、今でも食前の祈りが無いと落ち着かない。祈りを教えてくれた亡き母に不義理をしているような気分になるのだった。トロンの元を離れてから、気兼ねが無くなったので、唱えはしないが十字は切るようになった。
・多分この凌牙は、大学入ったら第二外国語にドイツ語取る。後でⅣに知られて赤面して大騒ぎして誤魔化す。お前の故郷の言葉が知りたかったんだよ。
四人でドイツにお墓まいりに行く話はいずれ。
・地獄鮫が喧嘩した時は、凌牙がちょっと、ほんのちょっと、ちょぉぉぉっとだけ、悪かったような気がしない事も無いこともない時は、凌牙が棒読みでⅣの髪色を褒める事がある。特に赤い方を褒めると、Ⅳも毎回同じパターンと分かっちゃいるのだが嬉しいので、機嫌を直す事が多い。赤い方は母から貰った色、金色は父から貰った色で、兄弟の中で一番両親の容姿を分かり易く受け継いだ事はⅣにとってとても嬉しいことで存在証明なのだ。
・Ⅳは元々ヨーロッパの出身だけあってそちらのツテもあった。アジアでのツテはトロンと兄が復讐の為に培った物も多いのだが、ヨーロッパの方のツテは純粋に自分の力で得ていった割合が大きい。イリスと出会う前後、海外でのメディア露出の仕事や、向こうで腰を据えたデュエル活動の誘いもあったのだが、Ⅳはイリスと出会い、新しい家族と共に居たいことを理由に断っている。Ⅳにとって大切なものの、優先順位は決まっている。
ちなみに、イリス話以外のルートだと、イリスと出会っていないため、この誘いは断っておらず、プロとして盤石な地位を固めている。「凌牙今度こそお前と」でツテを多く持っていたⅣの基盤はココにも絡んでいる。ココも一つの分岐点。
仮にお互いの人生を問えば、イリス話のⅣはイリスと出会わなかった人生など考えもつかず、プロルートのⅣは培って来た人脈の全てが凌牙の助けになった事とその先の決勝戦を誇りに思っているので、どちらも悔いは無いのだろう。パラレルなようで、どのルートも表裏一体なのだ。
◇ ◇ ◇
【Ⅳ&神代双子のイリス育児奮闘記】
・璃緒が不在でどうしてもイリスと一緒に風呂に入れない時は、イリスに水着着せて自分も水着でⅣが頭洗ってやってる。イリス頼むから小学校で言ってくれるな、オレの社会的地位が死ぬ…!
ちなみに二年生に上がる頃には風呂の横でⅣが洗濯しててイリスが一人で入れるようになる。育児は大変である。
・イリスは最初好き嫌いなかったのに、いつの間にか卵とピーマンとタマネギを嫌いになった。親が好き嫌いするともれなく子供は好き嫌いするようになる。ということを実感した凌牙とⅣは現在璃緒に椅子に視線で縛り付けられたまま箸片手に撃沈している。無理だマジほんと勘弁してくれ。克服は遠い。
・神代家の玄関脇の柱には、イリスがやって来た日に付けた背丈の横傷がある。一緒に璃緒も凌牙もⅣも測った。毎年、イリスが神代家にやって来た日には、ケーキを用意してろうそくを吹き消したあと、コレで全員分の背丈の傷を更新するのが慣例なのだ。この家に歓迎されている事を繰り返し伝えることなのだが、だから四人揃って必ず測る璃緒の笑顔の意味を、Ⅳがようやく気付いたのはずいぶん後になってからだった。ちなみに、Ⅳはほとんど伸びていないが凌牙はまだすくすく成長期なので、毎年この頃になるとⅣの牛乳消費量が増えたり当日悔しがったりする光景が見られる。
ちなみに、毎年ケーキは二個だ。
お腹いっぱいでも、次の日の朝食がもれなくケーキになっても、必ず二個だ。
いりすちゃん とーますくん おめでとう。
・ある三月の末。年度替わりの頃。随分機嫌良く鼻歌など歌いながら、やたら10個も20個も茹で卵を茹でているⅣが目撃される。
凌牙は、余りにも生卵が嫌い過ぎて全部茹でるというトチ狂った暴挙に出たのかと真剣にⅣの頭を案じたが、Ⅳは「馬っ鹿」と笑って相手にしない。機嫌良く茹で上げたⅣは、イリスを呼んで『工作』を始める。
色とりどりのマーカーペン。茹でた卵の殻に書き込まれていくカラフルな模様。
「おい、凌牙もこっち来て手伝え。
今年はイースターエッグパーティやるぞ」
「イースター?パーティ?」
されるままマジックペンを持たされた凌牙疑問符を浮かべる。
Ⅳが凌牙に突き付けたつるりとした卵の殻には、水色でまるで凌牙の前髪の様にマークを書き込んで、線と線で妙に間の抜けた顔が描かれていた。イリスが横で、Ⅳの手元を覗き込んでパァッと笑っておーさま!と声を上げた。
「宝探しだ」
笑った顔は、幼いガキのようだった。
キラキラした色とりどりに透けるセロハンの包み紙。
紫に金色のモール、水色に緑のモール、ピンクのモールに深紅のセロハン。
どれもこれも、照明を受けては煌めいて、明るい照明の下、テーブルのろうそくの火を反射してゆらゆら煌めいた。
※この後ハートの塔で、カイトとハルトと遊馬プラス小鳥を交えて、
天城、アークライト、九十九家の三親父と新生神代一家凌牙りおⅣイリスで楽しい楽しいイースターエッグ探しだよ。
「イリスちゃん、行こっ」
「うんっ」
手を繋いで駆け出すハルトとイリスに、見守る大人組。
「懐かしいな、イースターなんて、何年ぶりだろう」
微笑むトロンに、紅茶の合いの手を入れた九十九一馬が応じた。
「こっちは余り習慣が無いんじゃなかったかな?一馬のところでは?」
「いや、海外を回っていると自然と復活祭の時期に重なる事も多かったからな。街の規模の物に何度も参加させてもらった。」
「そうか、冒険家に愚問だったようだ」
「だが、うちではやった事無かったな。明里が小さい内に、一度くらい連れて行ってやれば良かった。今日は土産に幾つか持って帰らせて貰うとするか」
「もちろん」
トロンは微笑んで穏やかに紅茶を攪拌する。
「どこに行っても教会の人は親切だったな。良く寝床に困ると中に入れて貰ったよ」
「一馬らしいね」
こちらはカイトとクリス。
「悪いねカイト。場所を借りてしまって」
「構わない。ハルトが楽しみにしていた」
「そうか。カイトはイースターは?」
「祖母と住んでいた頃には良く。本当に久しぶりだ」
「そうか、それは良かった」
「あんたからこんな提案が出るとは、意外だったな」
「いや、実はうちの捻くれ者の方なんだ」
「Ⅳが?」
目を見開いてぱちくりと瞬いたカイトは、ますます意外そうな顔をした。
「ますます意外だ。」
「おやおや、酷い言いようだな」
苦笑したクリスに、カイトが首を横に振る。
「そうじゃない。アレは内々の性質(たち)だろう。
こんなふうに大勢を巻き込んだ騒ぎを好む方には思えなかったと言ったんだ」
そういうのは、どちらかといえば今そこで小鳥と一緒にはしゃいでいる遊馬の方が、ずっとずっとらしいように思う。
◇ ◇ ◇
【いつか独りになったら】
「そん時は、こーやって直しモン繕いながら、細々食ってくさ」
静かに柔らかく、ポツンと幸せそうに零された失言は
凌牙の眉間に深い皺を刻ませて、ぐっと胸の内を険しくさせた。
Ⅳはふと気付いた様に凌牙の顔を見て、視線を上げて苦く笑んで言い添えた。
「もしもの、話だよ」
嘘を付け。と思った。
Ⅳの腕の中に情け深く抱かれた人形は、すっかり繕われて幸せそうだった。
瞼の裏に白むのは、未練もなく離れていく白い背中
小さな暖炉のそば
木の椅子に揺られて、華々しい世界を離れて
誰も知らない田舎で、細々と糸と針の音だけさせて、人形相手に穏やかに繕い仕事を熟す、見慣れない、別人の様に穏やかで静かなーー
ーーーー捕まえといてくれないかな。あの子を。フラッとどこかへ行ってしまわないように。
希薄な空気に耳朶を打つ奴の父親の懇願を、凌牙は記憶の中に空耳して追いやって首を振った。
あったかもしれないほんの少しずれた未来の姿に、奴はいつも指先だけ触れたままだった。
◇◇◇
【裏話:未来の話】
ゲーム版のⅣ失踪ルートで、あったかもしれないお話。
Ⅳの話したがらない施設時代、多くは語りませんが必要以上にボロボロにされた服を施設のミシンで直して僅かばかりの小金を稼いでいた時期がありました。裁縫の類いはそれで覚えて、性に合ったトーマスはやがて人形や捨てられた小物を直す様になるのです。施設を出て豪華な服を着るようになっても、時々疲れた日ほどボロボロの人形を何処かから拾って来ては繕うのは、疲れて擦り切れた自分を繕う事なのかもしれません。そうして継ぎ接ぎされた人形が、Ⅳの寝室にはたくさんあります。
ところで、凌牙璃緒同居話には、Ⅳの部屋が空っぽの描写が散見します。そんな時、物を買わないⅣが、半年ほど経ってやっと一番初めに自分で買い求めて部屋に置いた品物は、実は、ミシンでした。実は以前からそういう設定でした。Ⅳの中では、どん底で乏しい自分の、空っぽの生活から、何かを立て直す時、一番最初の基盤になるのがミシンなのでした。イリス話では、イリスの服を時折繕っている様子が見られます。
やがて、イリス話ではイリスは学校に通い始め、ハルトと縁深くなるにつれて、ハルトと手を繋いで小学校から帰って来たイリスをハルトと一緒に送ってきたカイトと、凌牙と璃緒の不在の神代の家を預かるⅣがばったりブッキングする話があります。
学校に余り通っていないカイトは(※カイトの祖母の話参照)、同じくあまり通っていないⅣに、珍しく零します。自分には勝手が良く分からない、と。ハルトには、通わせてやりたい、と。
Ⅳも、イリスに同じ気持ちでした。そして、羨むような気持ちも、ありました。
そんなⅣを見て、カイトは、言います。通いたければ、通えばいいだろう、と。Ⅳは、今年18歳になっていました。
Ⅳは、目を見開いて、そして曖昧に苦く笑って俯くのでした。
ハートランド大学に、行きたいんだ。
Ⅳは、誰にも零したことのない、本音を、明かします。
造形学部に行きたいんだ。柄じゃねえって、判ってるさ、仕事だってあるし、もう、今更、
けど
やがて。Ⅳは、夜中に部屋で願書を広げている所を凌牙に見つかります。
夜のコーヒーと、苦い香り。
「芸大?お前が?」
今はまだ、来ない。
花咲く春の、
水産学部一年の凌牙と、造形学部四年のトーマスの
いつか来るかもしれない、もしもの話。