ads by microad

Jセク*フォロワーさんの一枚絵から書く

くろひつじ@執行済
Publish to anyone
2017-05-06 01:43:54

まりもちゃんの、JUICYがセクニャンをおんぶしてるイラストから~。

 ーー迂闊だった。
 足首がじんじんと痺れて痛い。ブーツで見えないけど、腫れてるんじゃないだろうか。
 今日もイベントのために会場まで来て、セクシーニャンコのコスプレに着替えるのまでは良かった。でも、今日のイベント会場は初めて来た上にすっごく広い。別の会場では即売会以外のイベントもやってて色んな人がいるから、更衣室から即売会の会場まで一般の人に見られないよう隠れて移動してたら、どうやら違う通路に入ったらしくて、すっかり迷子になってしまった。
 ーーここ何処なんだよ。
 周りは灰色の壁だらけで、防音がしっかりしてるせいか音も聞こえない。人に見られないように、人の居ない場所に向かって歩いたせいか人の気配はまったくなくて、なんだか寂しい。
 そんな場所で迷子になった挙句、段差に気付かず躓いて、見事に足を捻ったのだ。絶望的すぎる。
 そろそろイベントも始まる頃だろうか。
 誰かがこの辺鄙な場所を通ってくれることを願うしかない状況だが、薄紫の下着みたいな格好で、猫耳に尻尾と猫の手足みたいな手袋にブーツの成人男性を見ても、逃げていくだけで助けてもらえる自信がない。
 ーーもうダメだ。おれはここで死ぬしか……。
 今回は会場の都合で外に更衣室を設ける形になってしまったらしいが、やっぱり一般人が見える通路を通るのは抵抗ある。イベント主催に文句言いたいところだけど、コスプレ恥ずかしいとか思ってる自分もどうなの?って話だし。もっと堂々と出来る自信がおれにあったらなぁ、なんて打ちひしがれている時だった。
「なにしてんのー?」
 どこかのんびりとした、でもなんだか聞いたことのあるような声がした。
 顔を上げると、黒い猫帽子に金髪、口元が隠れるような黒いジャケットの男の人。帽子と襟のせいで顔はよく見えないけど、シルバーのアクセと外にハネた金髪のせいか、ちょっとチャラくてロックバンドとかやってそうな感じだ。
「どうしたのー?」
 そんな見た目の雰囲気の割に、頭ごと大きく首をかしげる様はなんだか幼い子どものようだった。
「あ、の……。迷子になっちゃって。それなのに、足くじいちゃって、その……」
 シドロモドロになりながら答えると、金髪の彼は近くまでやってきた。
「そっかー!それは大変だね。ぼく、おぶっていってあげよっか?」
「え、で、でも」
「いいから、ほら!」
 彼はそう言うと、おれの前で屈んで背中を向けた。明らかにおれより細い見た目だし、絶対重いのに。
 しかし、迷ってる場合じゃない。こんな場所でこんな格好のおれに声を掛けてくる人がこの後もやってくるとは思えない。おれは思い切って彼の好意に甘えることにした。
「……し、失礼しま、す」
 恐る恐る肩に腕を乗せ、背中にしがみつくと、
「よいしょー!」
 金髪の彼はすんなり立ち上がった。え、なにこれ。重さ無視できる人なの?
 彼はそのまま自分の腕でおれの脚を抱え、しっかりとおんぶしてくれた。
「お、重いでしょ?」
「え、全然!寧ろ軽いよ!」
 重さを無視出来る人らしい。
「それで、ニャンコさんはどこに行きたいのー?」
「え、えと、B会場の方に」
「オッケー!」
 そう言うと、彼はえっほえっほと駆け足で狭い通路を走り出す。
「B会場って、ドージンシ?えっちな本とか売ってるヤツだっけ?」
「そ、そうです、ね」
 明らかにそっち方面とは縁の無さそうな人に聞かれると、心が抉れる。ツライ。
 そう思っていたのだけど、彼はチラリとおれの方を見て、
「ぼくねー、ちょっと興味あるんだ。今度案内してくれる?」
「は、はい……」
 おんぶされてようやく彼の顔が見えたのだが、無邪気な言葉そのままのような優しい瞳をしてて、不覚にもドキッとしてしまった。
「それにしても、なんであんな所にいたのー?」
「う……それは、その、なんだか恥ずかしくて……似合ってないし……」
 人に見られるの恥ずかしいくせに、コスプレやるとかドMかよって引かれそう。でも、会場の中でなら平気だから、自分でもよく分からない。
「えーそう?ぼくはニャンコさん、すっごく可愛いと思うよ!」
「え……」
「自信持ってよ!」
 そう言って、あははーと笑う彼の声に余計にドキドキしてしまった。
 ーーなに考えてんだ、おれは。
 でも、そんな風に言われて、すごく嬉しかったのだ。
「あ、あったあった、B会場」
 彼が言うので顔をあげると、大きくB会場と書かれた看板の入り口が見えてきた。金髪の彼はえっほえっほとおれを背負ったままドアの近くまで行ってくれて、そこで降ろしてくれた。
 ここまでくれば、壁や手すりに掴まって中に入れるし、中に入れればスタッフや友人に助けてもらえるはずだ。
「足は平気?気をつけてね」
 おれを降ろす時も、そう言いながら慎重に降ろしてくれた。どこまでも紳士で、気遣いが出来て、すごくいい人。
 ーーそうだ、お礼と、名前!名前、聞かなきゃ。
「あ、ありがとうございました。……あの!」
 思い切って聞こうとした時だった。
「おーい、JUICYー!リハ始まるぞー!」
 通路の奥の方から、紫色の長い髪をした長身の男が、彼に向かってそう言ったのだ。
「あ、壱にーさん!」
 おれはその紫色の髪をした男に、見覚えがあった。
 ーーロックバンド《MATSUNO》の”壱”じゃねーかっ!!
 最近巷で人気を集めているロックバンドで、おれもアニメの主題歌がきっかけで好きになって、CDとかDVDとかふつーに持ってる。
 ーーということは?
 おれの脳みそはソレ以上考えるのを拒否し始めていた。
「じゃ、またね!セクシーなニャンコさん!」
 猫耳帽子に金髪の彼は、口元を隠していた襟を指でおさえ、口元がしっかり見える状態でおれに向かってニッコリ笑う。
 キラキラと光のエフェクトと、背景にお花が舞ってるような錯覚がした。
 ーーやっぱり、ドラムのJUICYだあああああ!!!!
 見覚えが、聞き覚えがあるはずだ。DVDで見た時と、おんなじ笑顔だったから。
 JUICYがじゃーねー!とブンブン手を振って、二人並んで別の会場へ入って見えなくなるまで見送った後、おれはその場にへたり込んで、しばらく動けなかった。


ads by microad

You have to sign in to post a comment or to favorites.

Sign in with Twitter


Send Message

Profile
くろひつじ@執行済 @Bsheep43
Share this page

ads by microad


Theme change : 夜間モード
© 2019 Privatter All Rights Reserved.